グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の動向(2026年4月3日時点)
2026年4月3日現在、グローバルサウス諸国が保有する重要鉱物資源を巡る地政学的・経済的競争が激化の一途を辿っている。米国、欧州連合(EU)、日本といった主要国・地域は、サプライチェーンの安定化と中国への依存度低減を目指し、新たな枠組みの構築や既存の連携強化を加速させている。一方で、グローバルサウス諸国自身も、単なる資源供給国に留まらず、加工・精製能力の獲得を通じて価値連鎖における地位向上を図る動きを見せており、多角的な国家間連携が進展している。
米国主導による重要鉱物サプライチェーン再編の動き
米国は、重要鉱物サプライチェーンの再編において主導的な役割を果たしている。2026年2月4日には「2026年重要鉱物閣僚会合」を初開催し、54か国および欧州委員会代表を招集した。この会合では、重要鉱物特恵貿易圏の創設が提案され、米国はアルゼンチン、クック諸島、エクアドルなど11か国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結したことを発表した。さらに、資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)を創設し、民間部門との連携を強化する「パックス・シリカ(Pax Silica)」構想も打ち出された。これらの動きは、重要鉱物サプライチェーンの多様化と強靭化に向けた米国の強い意志を示すものと言える。
経済面では、米国は4月2日にホワイトハウスがアルミニウム、鉄鋼、銅に対するセクション232関税制度を再調整する布告を発出し、これが4月6日から発効する予定である。 この措置は、国内産業の保護と重要鉱物関連製品のサプライチェーンにおける競争環境の変化を促すものとみられている。
欧州連合とメルコスール、日本と米国の連携強化
欧州連合(EU)もまた、重要鉱物資源の確保に向けて戦略的な動きを見せている。EUと南米経済圏メルコスールは、2024年12月に貿易協定を政治的に締結し、2026年5月から暫定適用される予定である。 この協定は、中国への依存度を低減し、南米での重要鉱物加工を促進することを目的としており、EUのサプライチェーン多角化戦略の一環として注目されている。
アジア太平洋地域では、日本と米国の連携が強化されている。2026年3月19日、日米両国は「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を含む3つの文書に合意した。 この合意に基づき、日本企業は米国におけるレアアース、銅、リチウムの採掘・加工プロジェクトへの投資を計画しており、両国間の経済安全保障協力が一段と深まることが期待されている。
グローバルサウス諸国における連携と課題
グローバルサウス諸国自身も、重要鉱物資源を巡る国際競争の中で、自らの地位向上と持続可能な発展を目指している。2026年3月26日に開催された「2026年グローバルサウス金融フォーラム」では、30以上の国・地域の政府関係者、銀行関係者、ビジネスリーダー、国際機関の代表が一堂に会し、より包摂的で持続可能な金融協力の強化に向けた連携を図った。
特にアフリカ諸国は、重要鉱物資源の価値連鎖において、単なる資源供給国から加工・精製能力を持つ国へと移行しようとする動きを強めている。これは、資源の付加価値を高め、経済的利益を最大化するための戦略であり、南南協力の重要性が高まっていることを示唆している。 国連は2026年3月5日、重要鉱物の世界的な競争において公正な競争を呼びかけており、グローバルサウス諸国の権利と利益の保護が国際社会の課題となっている。
重要鉱物市場の地政学的リスクと今後の展望
重要鉱物市場は、地政学的要因に大きく左右されるという認識が強まっている。2026年3月19日のレポートでは、特定の国への加工・精製能力の集中がもたらすリスクと、各国政府および企業が戦略的取引を優先する傾向が指摘された。 この集中は、サプライチェーンの脆弱性を生み出し、国際的な安定を脅かす可能性がある。
2026年4月5日に発表された「Critical Minerals Report」は、重要鉱物市場を、戦争リスク、チョークポイント、政策主導の市場設計など、複数の圧力点に反応する単一のシステムとして捉えている。 これは、重要鉱物資源の確保が単なる経済問題に留まらず、国家安全保障や国際関係の安定に直結する複雑な地政学的課題であることを浮き彫りにしている。今後、各国はサプライチェーンの多様化と強靭化に向けた取り組みを一層強化するとともに、グローバルサウス諸国との公平で持続可能なパートナーシップの構築が求められるだろう。
Reference / エビデンス
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS
- Critical Minerals Report (04.05.2026): Section 232 Reset Begins, Tungsten Capital Accelerates & Rare Earth Supply Chains Face Execution Test - InvestorNews
- Critical Minerals Ministerial Introduces New International Cooperation Strategy - CSIS
- 米国務省、重要鉱物閣僚会合を初開催、バンス副大統領が重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案
- What does the US pursuit of critical minerals mean for the Global South? | Dialogue Earth
- Critical minerals and Japan–US engagement
- The EU-Mercosur agreement could tap a new source of critical minerals for the West | PIIE
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省
- Xinhua Silk Road:コンセンサスから行動へ、グローバル・サウスが国際的なグリーン資本の流れを牽引
- AFRICA REDEFINING CRITICAL MINERALS FOR A SHARED FUTURE - United Nations University
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News
- Critical Minerals Report (04.05.2026): Section 232 Reset Begins, Tungsten Capital Accelerates & Rare Earth Supply Chains Face Execution Test - InvestorNews
- Mining: Critical minerals, geopolitics and regulation - Herbert Smith Freehills