グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の動向
2026年3月29日、世界はグローバルサウス諸国を巻き込んだ重要鉱物資源の権益争奪戦の渦中にあり、これに対応する国家間の連携と戦略構築が喫緊の課題として浮上している。米国主導のサプライチェーン再編の動きが加速する一方、中国はグリーン投資を通じて影響力を拡大。グローバルサウス諸国自身も、資源開発における公平性確保と付加価値化を強く求めている。本稿では、3月27日から3月31日までの最新の動向を基に、各国・地域の視点からこの複雑な国際関係を分析する。
米国主導の重要鉱物サプライチェーン再編とグローバルサウスへの影響
米国は、重要鉱物資源のサプライチェーンにおける中国への過度な依存を解消するため、グローバルサウス諸国との連携を強化し、供給網の再編を主導している。その象徴的な動きとして、2月4日に開催された「2026年重要鉱物閣僚会合」が挙げられる。この会合では、米国、欧州委員会、日本政府が共同プレスステートメントを発出し、重要鉱物サプライチェーンの多様化と強靭化に向けた国際協力の推進を強調した。
会合では、重要鉱物サプライチェーンの透明性、持続可能性、多様性を促進するための新たな国際協力戦略が導入された。米国は、この戦略を通じて、グローバルサウス諸国が資源開発から得られる利益を最大化できるよう支援し、中国が提供する「一帯一路」のようなインフラ投資とは異なる、より公平なパートナーシップを構築しようとしている。
さらに、米国は「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」を設立し、重要鉱物資源の供給源を多様化するための多国間協定の枠組みを推進している。このフォーラムは、グローバルサウス諸国が、環境・社会・ガバナンス(ESG)基準に準拠した形で資源開発を進めることを奨励し、持続可能な開発を支援することを目的としている。これにより、米国は、重要鉱物資源の採掘から加工、リサイクルに至るまでのサプライチェーン全体において、信頼できるパートナーシップを構築し、中国の支配に対抗しようとしている。
グローバルサウス諸国の資源開発と中国の役割
グローバルサウス諸国は、世界の重要鉱物資源の大部分を保有しており、その開発は経済成長の鍵を握っている。しかし、これらの国々は、資源の採掘にとどまらず、国内での付加価値化を目指す動きを強めている。例えば、インドネシアはニッケルの輸出を制限し、国内での加工を義務付けることで、バッテリー産業の育成を図っている。
中国は、長年にわたりグローバルサウス諸国への投資を通じて、重要鉱物資源のサプライチェーンにおいて圧倒的な影響力を確立してきた。特に、電気自動車(EV)バッテリーや再生可能エネルギー技術に必要な鉱物資源の加工において、中国は世界市場の大部分を占めている。中国は、「一帯一路」構想やグリーン投資を通じて、アフリカやラテンアメリカ諸国との関係を強化し、鉱山開発プロジェクトへの資金提供や技術支援を行っている。
3月27日に開催された「グローバルサウス金融フォーラム」では、グローバルサウス諸国が国際的なグリーン資本の流れを牽引し、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けたコンセンサスから行動への移行を強調した。これは、グローバルサウス諸国が、単なる資源供給国としてではなく、グリーン経済の主要な担い手として、国際社会における発言力を高めようとしている表れである。
日本およびその他の国の連携戦略と課題
日本もまた、重要鉱物資源の安定供給確保とサプライチェーン強靭化のため、多角的な連携戦略を推進している。特に、オーストラリアとの連携は重要であり、両国は重要鉱物に関する協力覚書を締結し、サプライチェーンの多様化と強靭化に向けた共同プロジェクトを進めている。オーストラリアは、リチウム、ニッケル、コバルトなどの重要鉱物資源の主要な生産国であり、日本企業はこれらの資源の安定的な調達を目指している。
経済産業省は、3月30日に「グローバルサウス未来志向型共創等事業」の公募を開始した。これは、グローバルサウス諸国との間で、重要鉱物資源のサプライチェーン構築だけでなく、技術協力や人材育成を含む幅広い分野での共創関係を築くことを目的としている。日本は、単なる資源調達に留まらず、グローバルサウス諸国の経済発展に貢献することで、長期的な信頼関係を構築しようとしている。
欧州連合(EU)もまた、重要鉱物資源戦略を強化しており、アフリカ諸国とのパートナーシップを通じて、持続可能な資源開発とサプライチェーンの多様化を目指している。各国は、重要鉱物資源を巡る地政学的リスクが高まる中、単独での対応には限界があることを認識し、多国間での連携を模索している。
グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪は、今後も国際関係の主要なテーマであり続けるだろう。米国、中国、日本、そしてグローバルサウス諸国それぞれの戦略が交錯する中で、持続可能で公平な資源開発とサプライチェーンの構築に向けた国際的な協力が、これまで以上に求められている。
Reference / エビデンス
- What does the US pursuit of critical minerals mean for the Global South? | Dialogue Earth
- America needs partners to challenge China's critical mineral chokehold - Chatham House
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- Critical Minerals Ministerial Introduces New International Cooperation Strategy - CSIS
- 2026 Critical Minerals Ministerial - U.S. Mission to ASEAN
- 米国主導の「重要鉱物・複数国間貿易協定」が意味するもの覇権を巡る資源ルールの激変と日本企業への影響 - 株式会社ロジスティック
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS
- 「2月4日重要鉱物閣僚会合に続く、米国政府、欧州委員会及び日本政府との間の共同プレスステートメント」を発出しました - 財務省
- What does the US pursuit of critical minerals mean for the Global South? | Dialogue Earth
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- Xinhua Silk Road:コンセンサスから行動へ、グローバル・サウスが国際的なグリーン資本の流れを牽引
- 日豪連携で強める重要鉱物供給網(2)豪州重要鉱物産業の現在地 | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
- 経済産業省の経済協力
- Mining: Critical minerals, geopolitics and regulation - Herbert Smith Freehills