グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の最新動向(2026年4月12日)

世界的な脱炭素化とデジタル化の波が加速する中、電気自動車(EV)バッテリーや再生可能エネルギー技術に不可欠なリチウム、コバルト、レアアースといった重要鉱物資源の戦略的価値が飛躍的に高まっている。これにより、資源を巡る主要国間の権益争奪戦が激化する一方で、グローバルサウス諸国は資源ナショナリズムの動きを強め、新たな国家間連携を模索している。2026年4月12日現在、この複雑な国際情勢は、世界のサプライチェーンの多様化とレジリエンス強化に大きな影響を与えている。

重要鉱物資源を巡る主要国の権益争奪戦略

主要各国は、重要鉱物資源の安定供給確保に向け、グローバルサウス諸国への投資、技術協力、外交的アプローチを活発化させている。

米国と欧州連合(EU)は、中国の支配に対抗するため、重要鉱物の生産と確保に関する合意に近づいていると、4月10日に報じられた。この合意には、採掘、精製、加工、リサイクル分野のプロジェクトを特定し支援するための覚書を30日以内に締結するコミットメントが含まれる見込みだ。 米国は2月4日には「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、アルゼンチン、クック諸島、エクアドルを含む11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結した。 また、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設を発表し、政策・事業両面での連携強化を図っている。

日本もまた、重要鉱物サプライチェーンの強靱化に注力している。3月18日には、米国との間で「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を策定し、国境調整されるプライスフロアなどの協調的な貿易政策の実現可能性を議論している。 3月23日の日米首脳会談では、深海の重要鉱物資源、特に南鳥島近海のレアアース泥の商業開発に向けた共同研究開発および産業協力の加速が合意された。 さらに、3月20日には、日米両政府がレアアースのリサイクル事業(三菱マテリアルが協力検討)やアリゾナ州の銅鉱山事業(三菱商事が30%出資)など、13の共同プロジェクト候補を発表した。 経済産業省は3月30日、「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」を更新し、三菱マテリアルによるリチウムイオンバッテリーのリサイクル実証(約12億円の助成)や、住友金属鉱山と三菱商事による豪州でのニッケル・コバルト探鉱事業(約49億円の助成)など、具体的な供給確保計画を認定している。 日本とフランスの間では、重要鉱物連携合意が4月1日に発効し、両国間の協力関係が強化されている。

中国は、「一帯一路」構想を通じてアフリカの重要鉱物セクターへの投資を継続し、広範な上流権益を確保している。 しかし、2023年のガリウム、ゲルマニウム、黒鉛に続き、2025年4月にはサマリウム、ガドリニウムなど7種のレアアースに対する輸出管理措置を実施するなど、輸出規制を強化しており、これが国際的なサプライチェーンに大きな影響を与えている。

グローバルサウス諸国間の連携と資源ナショナリズムの台頭

グローバルサウス諸国は、自国が保有する重要鉱物資源の価値向上とサプライチェーンにおける発言力強化を目指し、連携を模索するとともに、資源ナショナリズムの動きを顕在化させている。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、資源豊富な途上国が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増やせる可能性を指摘している。その具体例として、コンゴ民主共和国がコバルト加工により2022年に輸出額を約3倍の60億ドルに増加させた事例を挙げている。 これは、グローバルサウス諸国が単なる資源供給基地から脱却し、自国の経済発展に資する形で資源管理を強化しようとする資源ナショナリズムの台頭を示唆している。

3月26日に開催された「2026年グローバルサウス金融フォーラム」では、30以上の国・地域の政府関係者やビジネスリーダーが集結し、より包摂的で持続可能な金融協力の強化に向けた連携が議論された。 これは、グローバルサウス諸国が、重要鉱物資源を巡る国際競争において、自らの立場を強化するための多国間連携を重視していることを示している。アフリカ連合(AU)も2025年2月に「アフリカ・グリーン鉱物戦略」を発表しており、域内での資源管理と開発における自律性向上を目指す動きが活発化している。

サプライチェーンの多様化とレジリエンス強化への影響

グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の動きは、世界の重要鉱物サプライチェーンの多様化とレジリエンス強化に多大な影響を与えている。

米国、EU、日本は、重要鉱物サプライチェーンの強靱性に関する戦略的パートナーシップを形成し、供給源の多様化と安定供給の確保を目指している。 米国は、同盟国との間で「重要鉱物に関する特恵貿易圏」の創設を提唱しており、非市場経済国からの不当廉売を防ぐための最低価格(プライスフロア)設定を含む貿易政策の導入を検討している。

新たな供給源の開拓も進められている。日本と米国は、南鳥島近海のレアアース泥といった深海鉱物資源の商業開発に向けた共同研究開発を加速することで合意した。 また、オーストラリアは、豊富な資源と日本の技術力を組み合わせることで、重要鉱物の生産・加工・精製能力を国内で強化し、2030年までに重要鉱物超大国となることを目指している。

リサイクル技術の進展もサプライチェーンのレジリエンス強化に貢献している。三菱マテリアルは、米国のリエレメント・テクノロジーズ社とレアアースリサイクルプロジェクトでの協力、さらには日本国内でのリサイクル・精製能力の共同発展を検討している。 経済産業省も、リチウムイオンバッテリーのリサイクル工程からニッケル、コバルト、リチウムを回収・精製するパイロットプラント実証事業に対し、企業への助成を通じて支援を強化している。 米国で開催された「2026年重要鉱物閣僚会合」でも、採掘、精錬・加工、最終用途分野に加え、リサイクルおよび再処理への投資が強調された。

国際的な枠組みにおける議論も活発化している。G7は、2023年4月に「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」を採択し、2025年には「G7重要鉱物行動計画」を発出するなど、重要鉱物サプライチェーンの問題を最重要課題の一つとして取り組んでいる。 これらの動きは、重要鉱物資源を巡る国際情勢が、単なる経済的競争に留まらず、地政学的安定、経済安全保障、そして持続可能な開発といった多岐にわたる側面から捉えられていることを示している。

Reference / エビデンス