グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の最新動向
2026年4月11日、世界のエネルギー転換とデジタル化を支える重要鉱物資源を巡るグローバルサウス諸国の動向は、国際社会の注目を集めている。リチウム、コバルト、ニッケルといった鉱物資源は、電気自動車(EV)バッテリーや再生可能エネルギー貯蔵システムに不可欠であり、その戦略的価値は高まる一方だ。特に、過去48時間以内に報じられた最新のデータは、この権益争奪の激化と、それに対応する国家間連携の重要性を浮き彫りにしている。
グローバルサウスにおける重要鉱物資源の戦略的価値の高まり
グローバルサウス諸国が豊富に保有するリチウム、コバルト、ニッケルなどの重要鉱物資源は、世界のエネルギー転換とデジタル化の推進において、その戦略的価値を飛躍的に高めている。2026年4月9日に発表された市場予測によると、コバルト酸リチウム市場は2026年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR)で成長すると見込まれており、特にリチウムイオンバッテリーの需要増加が市場を牽引する主要因となっている。また、同日には世界の電気自動車用バッテリーリサイクル市場が2025年から2030年にかけて64億1,090万米ドルの成長が見込まれ、予測期間中のCAGRは44.8%と予測されていることが報じられた。これは、資源の循環利用が環境負荷低減に貢献する可能性を示唆している。
2026年のリチウム市場は、価格上昇の兆しを見せている。チリ銅委員会(COCHILCO)が2025年9月4日に発表したレポートによると、2026年のアジアCIF価格は炭酸リチウムで1トン当たり1万327ドル、水酸化リチウムで1万920ドルと、2025年8月27日までの最高値を上回る予測だ。これは、EV産業がリチウム市場の主要な牽引役であり続けるとの予測に基づいている。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物需要の急増が地政学および産業構造の再編を促していると指摘しており、グローバルサウス諸国がその中心的な役割を担うことが予想される。
権益争奪の現状と主要アクター
グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益を巡る国家間競争は激しさを増している。特に、中国、米国、EU、日本といった主要アクターが、それぞれの戦略的意図に基づき、投資案件や外交交渉を活発化させている。
2026年4月8日、ジェトロはザンビア、コンゴ民主共和国(DRC)、ジンバブエにおける米中対立の表面化を報じた。アフリカの重要鉱物を巡る競争は、上流権益の獲得から、どこで付加価値を生み出し、誰がサプライチェーン全体を押さえるかという段階へと移行している。中国企業は「一帯一路」を通じてアフリカの金属・鉱山セクターに継続的に投資しており、2025年には鉱山開発向けに154億ドル、製錬など処理施設向けに200億ドルを投資したとされている。また、2026年2月には中国政府が国交のあるアフリカ53カ国に対し、同年5月1日から100%の品目でゼロ関税措置を実施すると表明し、アフリカから中国への重要鉱物の供給網強化を後押ししている。
一方、米国も中国の支配に対抗すべく動いている。2026年2月25日のJOGMEC JOURNALによると、米国はオフテイク契約や政府支援資金を活用し、アフリカ鉱物を巡る競争で中国に挑戦している。特にDRCは世界コバルト供給の70%超を占め、2024年には銅生産330万トンを記録しており、米国はDRCの国営鉱山会社Gécamines社からの割当銅約10万トンを米国向けに出荷する予定だ。
日本もまた、重要鉱物サプライチェーンの強靱化に向けた取り組みを強化している。2026年4月1日には、高市早苗首相とエマニュエル・マクロン仏大統領が首脳会談を行い、レアアースの共同調達を軸とする「日仏重要鉱物協力ロードマップ」の策定で合意した。共同声明では、中国を念頭に「重要鉱物に対する輸出規制は重大な悪影響を及ぼす可能性がある」との懸念が明記された。これに先立つ2026年3月18日には、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」が策定され、日米両国が選定された重要鉱物に係るプライス・フロア等の貿易政策・メカニズムについて関係国と共に協議を行うことなどが盛り込まれた。
グローバルサウス諸国間の連携と新たな動き
重要鉱物資源のサプライチェーンにおける自律性を高めるため、グローバルサウス諸国間での連携も活発化している。インドネシアは、ニッケル産業の下流化を国家戦略として強力に推進し、EVサプライチェーンの主役へと変貌を遂げている。インドネシア政府は、未加工鉱石の輸出禁止と国内での精錬・加工の義務化を段階的に導入し、国内に数多くの製錬所や精錬工場が建設された結果、ニッケル関連製品は主要な輸出品目に躍進し、外資からの巨額投資も相次いでいる。中国のCATLはインドネシアでニッケル採掘から電池製造、リサイクルまで一貫して手掛けるサプライチェーンを構築する大規模プロジェクトに着工しており、総投資額は約8600億円に上る。
アフリカ諸国もまた、未加工の資源を輸出するだけの経済構造からの脱却を図り、国内での付加価値を高めることで新たな産業を創出しようとしている。ナミビアは未加工のレアアースやリチウムの輸出を禁止し、国内に精錬施設を誘致することで、雇用の創出と産業の高度化を目指している。
さらに、リチウム産出国が「リチウムのOPEC」設立を検討している可能性も浮上しており、資源国が連携して市場への影響力を高めようとする新たな動きとして注目される。
持続可能な資源開発と環境・社会への影響
重要鉱物資源の開発は、グローバルサウス諸国の環境や社会に多大な影響を与える可能性がある。持続可能な開発目標(SDGs)との関連性、環境規制の強化、地域住民への影響、そして公正な利益配分に関する議論は不可欠だ。
2026年4月7日に発表されたバッテリーリサイクル技術市場の成長予測は、資源の循環利用が環境負荷低減に貢献する可能性を示している。世界のバッテリーリサイクル技術市場は2026年に279億米ドル規模となり、2034年までに627億米ドルに達すると予測されており、予測期間中はCAGR10.6%で成長すると見込まれている。バッテリーリサイクルは、廃棄物の削減と原材料の採掘ニーズの最小化を通じて、資源の保全と環境保護に貢献する。
国連は2025年6月に発表した「エネルギー転換重要鉱物に関する行動指針」において、人権、環境保護、公平な開発を推進する措置を提案している。これは、鉱物資源開発が地域社会に与える負の影響を最小限に抑え、持続可能な開発を促進するための国際的な枠組みの重要性を示している。また、鉱物資源確保におけるリサイクル推進の重要性も高まっており、日本でも都市鉱山の活用や産業廃棄物からの金属資源回収が推進されている。中国も2026年4月1日より、電気自動車の退役パワーバッテリーのリサイクルおよび総合利用の管理に関する暫定措置を施行し、サプライチェーン全体を包括する「完全なライフサイクル追跡」を構築している。
Reference / エビデンス
- コバルト酸リチウム 市場の成長、予測 2026 に 2033
- 2025~2026年の世界のリチウム市場、価格上昇の予測(世界、チリ) | ビジネス短信
- 価格は再び上昇へ、2026年にリチウムに注目すべき理由
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- バッテリーリサイクル技術市場の2034年までの予測
- ザンビア、DRC、ジンバブエ重要鉱物(1)表面化する米中対立 | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - ジェトロ
- 米:アフリカ鉱物を巡る競争で中国の支配に挑戦 - JOGMEC JOURNAL
- アフリカの鉱物資源を巡る競争において、中国は米国をリードしている。 - Vietnam.vn
- グローバルサウス、重要鉱物資源を巡る権益争奪と国家間連携の最前線 - Vantage Politics
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省
- 時事ニュース - OASIS
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- 加速する「重要鉱物の囲い込み」と3つのシナリオ――日本はどう動くべきか | Strategy Institute | FA Portal | デロイト トーマツ グループ
- インドネシア(3)政府が注力する鉱物資源・ニッケル産業の下流化 | ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応 - ジェトロ
- 【第137弾】インドネシア:ニッケル資源とEVサプライチェーンの主役|beebird - note
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