主要国による重要鉱物サプライチェーン再編の動き
重要鉱物資源の安定供給確保は、主要国にとって喫緊の課題となっている。2026年4月1日には、高市早苗首相とフランスのマクロン大統領が東京で首脳会談を行い、中国への依存度が高いレアアースを含む重要鉱物の調達多角化に向けた協力を深化させることで一致した。両国は官民による共同プロジェクトを通じ、第三国での鉱山開発やフランス国内の精錬能力拡充を協議している。
また、米国と欧州連合(EU)は、重要鉱物の生産と確保で連携する合意が間近に迫っていると、4月10日の報道で伝えられた。米EU間の「行動計画」案は、中国の支配に対抗するための多国間協力の進展を示すものとみられる。
これに先立つ2月4日には、ワシントンD.C.で「2026年重要鉱物閣僚会合」が開催され、米国、欧州連合、日本を含む55カ国が参加した。この会合で、米国は同盟国による重要鉱物に関する「貿易圏」の構築を提案し、市場のゆがみを防ぐための協調的な価格下限設定の意向を表明した。 日米欧は共同声明で、重要鉱物サプライチェーンの強靭化に向けた戦略的パートナーシップを発表し、行動計画を策定し、他のパートナーとの多国間貿易イニシアチブを模索する方針を示している。
グローバルサウスにおける重要鉱物資源の戦略的価値と権益争奪
グローバルサウス諸国は、クリーンエネルギー革命を支える重要鉱物資源を豊富に有しており、その潜在的価値は極めて高い。 国連は2026年3月5日、重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけ、安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」について議論した。 国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物資源の需要急増が地政学および産業構造を再編し、資源豊富な途上国が新たなバリューチェーンの中心になりつつあると指摘している。
具体的な動きとして、2025年10月1日には、阪和興業がアンゴラ共和国での永久磁石用原料となるレアアース分離・精製調査事業が経済産業省の補助金制度に採択されたと発表した。これは、レアアース原料である混合希土類炭酸塩(MREC)の中国依存からの脱却を目指すもので、アンゴラでの採掘から分離・精製までを一貫して行う事業の実現可能性を検討している。
一方、中国は重要鉱物資源を戦略的物資と位置付け、輸出管理を強化している。2025年4月には、サマリウム、ジスプロシウムなど7種のレアアースに対する輸出規制が実施され、国際市場に大きな影響を与えた。 この規制は、レアアースを使用する自動車部品の調達を滞らせ、日本の自動車メーカーが一時生産停止に追い込まれる事態も発生した。 中国は世界のレアアース生産量の約7割、精製量の約9割を占めており、その支配力は依然として大きい。
国家間の連携と新たな資源外交の展開
日本を含む主要国は、グローバルサウス諸国との連携強化を外交戦略の柱に据えている。経団連は2026年1月8日、「グローバルサウスとの連携強化に向けて」と題する提言を高市総理に手交した。この提言では、資源に乏しい日本にとって、食料・資源・エネルギーが豊富で高い成長力を持つグローバルサウスとの連携強化が不可欠であるとし、外交・安全保障の強化、経済安全保障の確保などを重視すべき事項として挙げている。
また、日本と米国は、南鳥島周辺のレアアース泥開発で協力する方向で合意に至った。3月14日の報道によると、日米首脳会談に合わせ覚書を結ぶ方向で調整が進められており、米国が資金面での協力を担い、日本が採掘や加工の技術的優位性を活かして開発を主導する案が浮上している。 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2026年2月、地球深部探査船「ちきゅう」を用いて水深約6000メートルの海底からレアアースを含む泥の引き揚げに成功しており、この技術が日米協力の基盤となる。
資源国側の動きとしては、オーストラリアが2026年3月23日に最新版の「Australian Critical Minerals Prospectus」を公開し、国内の重要鉱物関連プロジェクトや企業情報をまとめている。 オーストラリアは、豊富な鉱物資源を有する一方で、精製・加工工程では海外依存が残る分野も多く、国内での付加価値創出や産業基盤の強化を目指している。 国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は3月24日、オーストラリアが将来の鉱物供給危機回避において重要な役割を果たすとの見方を示した。 これらの動きは、グローバルサウス諸国が国際的なパワーバランスの中で影響力を高め、新たな資源外交の舞台となっている現状を明確に示している。
Reference / エビデンス
- 高市総理がマクロン仏大統領と会談、日仏のさらなる連携深化を確認、日仏共同声明に署名(4月1日)
- 米EU 、 重要鉱物確保で合意間近と報道 中国支配に対抗 - ニューズウィーク
- 「2月4日重要鉱物閣僚会合に続く、米国政府、欧州委員会及び日本政府との間の共同プレスステートメント」を発出しました - 財務省
- 米国務省、重要鉱物閣僚会合を初開催、バンス副大統領が重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案
- 米国主導の「重要鉱物・複数国間貿易協定」が意味するもの覇権を巡る資源ルールの激変と日本企業への影響 - 株式会社ロジスティック
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- 阪和興業、アンゴラ共和国/永久磁石用原料となるレアアース 分離・精製調査事業が、経済産業省の令和6年度補正グローバルサウス 未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)に採択 - Digital PR Platform
- コラム 海外経済の潮流157 - 財務省
- 経済の武器化の時代に各国の政策は何を目指しているのか(世界) | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
- 2026年1月号2026年、米国のレアアース戦略転換とスタートアップの台頭 - きらぼしコンサルティング
- 提言「グローバルサウスとの連携強化に向けて」を公表 (2026年1月8日 No.3712) - 経団連
- 南鳥島周辺のレアアース泥の開発、アメリカと協力で合意へ…日米首脳会談に合わせ覚書結ぶ方向 - 読売新聞
- 日豪連携で強める重要鉱物供給網(2)豪州重要鉱物産業の現在地 | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
- 地域大国であるグローバルサウス諸国:ブラジル、南アフリカ - アジア経済研究所