北米:連邦選挙に伴う経済・通商政策の変遷と2026年3月末時点の動向

2026年3月30日、北米主要国(米国、カナダ、メキシコ)は、それぞれの連邦選挙を経て新たな経済・通商政策の局面を迎えています。特に、2026年7月1日に初回レビューが予定されているUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を前に、各国は独自の戦略を展開し、企業はサプライチェーンの再編を迫られています。本稿では、各国の最新動向とUSMCAレビューに向けた焦点について詳細に分析します。

米国:トランプ政権下の「アメリカ・ファースト」貿易政策の継続と経済指標

2024年11月5日の大統領選挙で勝利し再選を果たしたドナルド・トランプ氏は、「アメリカ・ファースト」貿易政策を継続しています。2026年3月2日に米国通商代表部(USTR)が議会に提出した「2026年通商政策アジェンダ」と「2025年年次報告書」では、国内製造業の強化、互恵的貿易協定の追求、貿易協定および貿易法の厳格な執行、貿易赤字の削減、重要産業の国内回帰が強調されています。

貿易政策においては、2026年2月20日に米国最高裁判所がメキシコからの輸入品に対する25%のIEEPA関税を無効とし、代わりに10%のSection 122追加課徴金が適用される政策変更がありました。 最新の経済指標を見ると、2026年2月の米国の月間国際貿易赤字は1月の547億ドルから573億ドルに拡大しました。 一方、2026年1月には個人所得が0.4%、可処分個人所得が0.9%、個人消費支出が0.4%それぞれ増加し、堅調な個人消費が示されています。

政治情勢に目を向けると、2026年11月に予定されている中間選挙に向け、トランプ政権の支持率は2025年1月の52%から2026年1月には42%に低下しており、物価高対策への国民の関心が高まっています。

カナダ:カーニー政権下の経済政策と2026年3月末の経済回復の兆し

カナダでは、2025年4月28日に実施された連邦選挙でマーク・カーニー氏率いる自由党が少数与党政権を樹立しました。 彼の掲げる「カナダ・ストロング」というスローガンは、高まる世界的緊張と米国の関税政策に対抗し、カナダの独立性を強調するものです。

経済面では、2026年1月のカナダの実質国内総生産(GDP)が0.1%増加し、2025年第4四半期の緩やかな縮小から回復の兆しを見せています。 米国との貿易関係においては、2025年3月にカーニー氏がトランプ氏と電話会談を行い、総選挙後に交渉を開始することで合意しています。

メキシコ:シェインバウム政権下の貿易政策とUSMCAレビューへの対応

メキシコでは、2024年6月2日の大統領選挙でクラウディア・シェインバウム氏がメキシコ初の女性大統領に就任しました。 与党モレナ党連合は議会の両院で3分の2のスーパーマジョリティを獲得する可能性があり、政権基盤を強化しています。

貿易政策では、2026年1月1日にメキシコが1,463の関税コード(メキシコの関税スケジュールの約12%)に対する関税引き上げと強化された税関管理を導入しました。 シェインバウム大統領は2026年3月25日、ヌエボレオン州製造業会議所(CAINTRA)の年次総会で「USMCAの見直しが順調に進んでいる」と発言しました。 同総会では、マルセロ・エブラル経済相が3カ国での生産拡大と重要分野におけるアジアへの依存度低減について議論したほか、米国の1962年通商拡大法232条の追加関税(鉄鋼に課された50%の関税など)に言及し、USMCA圏内での不確実性低減の必要性を強調しました。

USMCAレビュー:2026年7月に向けての焦点と企業への影響

2026年7月1日に予定されているUSMCAの初回レビューは、北米の貿易環境における重要な転換点となります。このレビューは、協定に組み込まれた「サンセット条項」(第34.7条2項)に基づくもので、16年の有効期間と6年ごとの見直しメカニズムを有しています。

特に米国は、メキシコを経由した中国資本や部材の流入を警戒しており、原産地規則の厳格化を通じてこれらを排除しようとしています。 自動車・部品の原産地規則(ROO)と域内含有率(RVC)の見直しが主要な論点となる見込みです。 企業には、サプライチェーンの完全な可視化と中国依存からの脱却、いわゆる「純粋北米化」のシミュレーションなど、迅速な対応が求められています。

2026年3月31日にEY Japanが発表した「USMCAレビューに企業はどう備えるべきか」というレポートや、2026年3月20日にMEXI TOWNが報じた「北米経済秩序の再設計」といった最新の分析は、企業がこの重要なレビューに備えるための指針を提供しています。

Reference / エビデンス