グローバル:国際海洋法を巡る領有権主張と政治的対立(2026年3月29日時点)

2026年3月29日、国際海洋法を巡る領有権主張と政治的対立は、世界各地で依然として緊張の種となっている。特に南シナ海、東シナ海、ホルムズ海峡といった主要な海洋紛争地域では、関係国の外交的駆け引きや一方的な行動が活発化しており、国際社会は法の支配に基づく海洋秩序の維持に腐心している。

南シナ海における領有権主張と外交的進展

南シナ海では、2026年3月28日に中国とフィリピンが重要な合意に達したことが注目される。両国は南シナ海問題に関する対話を強化し、情勢を適切に管理することで合意した。また、南シナ海行動規範(COC)に関する協議を加速させ、早期の合意を目指すことでも一致した。この合意は、中国南東部の福建省泉州市で開催された南シナ海に関する二国間協議メカニズムの第11回会合で発表されたものだ。会談では、中国の孫衛東外務次官とフィリピンのレオ・ヘレラ=リム外務次官が共同議長を務め、海上法執行や海洋科学技術などの分野での協力についても前向きな進展があったとされる。

一方で、フィリピンは国際法に基づく対抗姿勢を維持している。フィリピン外務省は2月11日、中国駐マニラ大使館に対し、海上の主権を巡る紛争を扱う際には「建設的で専門的な対話」を行い、「戦狼」式の感情的な発言を控えるよう求めた。フィリピンは、国連海洋法条約(UNCLOS)違反だと訴え、2016年の仲裁裁判で中国の「九段線」主張に法的根拠はないと判断されたにもかかわらず、中国が力による現状変更を続けていると非難している。また、フィリピンは南シナ海問題において多国間協力を模索しており、米国議会はフィリピンへの新たな安全保障支援として25億ドルを承認し、日本からも政府安全保障能力強化支援(OSA)による沿岸監視レーダー(約6億円相当)が供与されるなど、対中抑止力の強化が進んでいる。

東シナ海における境界画定問題と資源開発

東シナ海では、日本が中国の一方的な資源開発に対し、継続的に抗議している状況が続いている。日本政府は、東シナ海の日中間の地理的等距離線の西側で、中国がこれまでに計22基の構造物を設置していることを確認しており、新たな構造物の設置も確認されたと発表した。日本政府は、東シナ海の排他的経済水域(EEZ)および大陸棚の境界が未画定である中で、中国側が一方的に開発を進めていることは極めて遺憾であるとの意向を示している。

外務省の金井正彰アジア大洋州局長は、駐日中国大使館の施泳次席公使に対し、電話などで強く抗議を行った。金井局長は、中国による一方的な現状変更の試みを批判するとともに、東シナ海の資源開発における日中の協力を定めた「2008年6月合意」の実施に関する交渉を早期に再開するよう、改めて強く求めた。日本は、日中中間線を排他的経済水域(EEZ)の境界線とすべきだと主張しているが、中国は大陸棚が沖縄トラフまで自然延長しているとの立場を示し、EEZの境界線を中間線よりも日本側に設定すべきだと主張している。

ホルムズ海峡の安全保障と国際法の解釈

ホルムズ海峡の情勢は、国際社会の安全保障にとって極めて重要である。2026年3月19日、日本、英国、ドイツ、フランス、イタリア、オランダの6カ国の首脳は共同声明を発表し、イランによる商船や石油・ガス施設を含む民間インフラへの攻撃、そしてホルムズ海峡の事実上の封鎖を「最も強い言葉」で非難した。声明では、イランに対し、攻撃の即時停止と国際法の順守などを求め、航行の自由が国連海洋法条約を含む国際法の下で確立された基本原則であることを強調した。

米・イスラエルとイランの紛争により、ホルムズ海峡の通行状況は一時停止した後、イランの許可を得た国の船舶が通行を再開している。しかし、日本政府はホルムズ海峡が「事実上の封鎖」の状態にあるとみなし、イランとの交渉を行っていないため、日本国籍の船舶は通行が困難な状況にある。一方、イランはホルムズ海峡を封鎖していないと主張し、敵国である米国とイスラエルの船舶の通行を認めていないだけだとしている。イランは「通過通航権」の理解にあたって、「無害通航」のみを認める立場を強調しており、軍艦の通航には事前許可が必要という主張をしている。

国際海洋法秩序の現状と課題

国際海洋法秩序は、国連海洋法条約(UNCLOS)を基盤として維持されているが、大国による一方的行動がその秩序に課題を突きつけている。2026年1月17日には、公海および深海底の生物多様性を守る国際条約である「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」が発効した。この協定は、世界の海の3分の2を占める国家管轄権外の海域における生物多様性の保全と持続可能な利用のための国際ルールを定めるものであり、UNCLOSを補完する重要な協定と位置付けられている。BBNJ協定の第3回会議は、2026年3月23日から4月2日まで開催される予定である。

しかし、「国際法は無力だ」という言説も存在する。これは、国際法に違反した国に法の遵守を強制したり、処罰したりする存在がないため、国際法は各国が固く遵守することにより実効性が確保されるという認識に基づくものだ。大国による国際法違反は、国際法の権威性を大きく失墜させ、国際社会における法の支配を破壊し、ひいては国際社会の平和と安定を崩壊させる恐れがあるため、断じて許されないと指摘されている。

その他の地域における領有権問題と国際的緊張

国際海洋法に関連する領有権問題や政治的対立は、他の地域でも見られる。米国は、デンマーク自治領グリーンランドの領有に強い意欲を示しており、トランプ大統領はグリーンランドがロシアや中国に領有されることは許容できないとし、米国が行動を起こす必要があると繰り返し強調している。ホワイトハウスは、グリーンランド領有に向け「アメリカ軍の活用も選択肢にある」と表明した。これに対し、グリーンランドやデンマークをはじめとした欧州諸国は牽制を強め、北極圏の安全保障は米国を含むNATO加盟国と連携して協力して実施されるべきとした上で、デンマークとグリーンランドの問題は当事者のみが決定するものだと米国を牽制している。

また、2026年1月には、米国によるベネズエラへの軍事介入が発生した。米国トランプ政権は、ベネズエラの首都カラカスを含む複数の地点を爆撃し、ニコラス・マドゥロ大統領とその妻を拘束・拉致したと発表した。この軍事攻撃は、国連憲章第2条第4項の武力使用禁止原則に正面から違反しており、国際法上、法的根拠は一切ないと強く非難されている。国連安全保障理事会の緊急会合では、アントニオ・グテーレス事務総長が「国際法の規則が尊重されなかった」と懸念を示し、コロンビアの国連大使は「(アメリカの行動は)ベネズエラの主権や政治的独立、領土保全の明白な侵害であり、武力行使を正当化する根拠は存在しない」と批判した。

Reference / エビデンス