グローバル:国際法人税ルールの策定と多国籍企業の動向

2026年3月28日、国際法人税の分野では、OECDが主導するグローバル・ミニマム課税(Pillar Two、GloBEルール)の進展と、これに対応する各国の法制化動向が、多国籍企業の税務戦略に直接的な影響を与える極めて重要な局面を迎えています。特に、今年1月に合意された「Side-by-Side Package」や、3月下旬に発表された日本およびオーストラリアの税制改正は、今後の国際課税の方向性を示すものとして注目されています。

OECD Pillar Twoの最新動向と「Side-by-Side Package」の合意

OECD/G20の「包摂的枠組み」は、2026年1月5日に、グローバル・ミニマム課税ルール(GloBEルール)の運用に関する新たな行政ガイダンスとして「Side-by-Side Package」に合意しました。このパッケージは、米国のグローバル無形資産低課税所得(GILTI)制度とGloBEルールとの共存を促進することを目的としています。これにより、多国籍企業が直面する二重課税のリスクやコンプライアンス負担の軽減が期待されています。米国がGloBEルールを直接採用していない現状において、このパッケージは、異なる国内税制を持つ国々との間で、より円滑なグローバル・ミニマム課税の導入を可能にする重要な一歩となります。2026年3月3日付けのForbesの記事でも、OECDがPillar Twoプロジェクトの進捗を継続的に発表し、新たな行政ガイダンスを通じて導入における課題に対処していることが強調されています。

各国の法制化動向と多国籍企業への影響

各国では、グローバル・ミニマム課税の導入に向けた具体的な法制化の動きが加速しています。日本では、2026年3月31日に2026年税制改正パッケージが成立しました。この改正には、グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置が盛り込まれており、多国籍企業の税務戦略に大きな影響を与えることになります。具体的には、所得合算ルール(IIR)が2024年4月1日以降開始する事業年度から適用され、軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)は2026年4月1日以降開始する事業年度から適用される予定です。

オーストラリアでは、2026年3月25日にPillar Two関連の規則改正が発表され、グローバル・ミニマム課税の導入に向けた国内法制の整備が進められています。これにより、オーストラリアで事業を展開する多国籍企業は、新たなコンプライアンス要件への対応が求められます。

また、ナイジェリアでは、2026年3月31日に公開された2025年税法改正が外国企業に与える影響が注目されています。この改正は、特定のデジタルサービスや通信サービスを提供する外国企業に対する課税強化を含んでおり、ナイジェリアで事業を展開する多国籍企業は、新たな税負担や申告義務に直面する可能性があります。

これらの各国の法制化動向は、多国籍企業にとって税務コンプライアンスの複雑性を増大させ、既存の税務戦略の見直しを迫るものです。KPMGおよびDeloitteが2026年3月2日付けで発表した決算留意事項に関する記事では、グローバル・ミニマム課税の導入に伴う会計処理や情報開示の重要性が強調されており、企業は早期の準備と対応が不可欠であると指摘されています。

グローバルミニマム課税の遵守と今後の課題

多国籍企業がグローバル・ミニマム課税ルールを遵守する上で直面する実務上の課題は多岐にわたります。日本においては、所得合算ルール(IIR)が2024年4月1日以降開始する事業年度から既に適用されており、企業はこれに対応するための準備を進めてきました。さらに、軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)は、2026年4月1日以降開始する事業年度から適用が開始される予定であり、企業はこれらの新たなルールへの対応を急ぐ必要があります。

主な課題としては、GloBEルールに基づく複雑な計算要件、膨大なデータ収集と管理、既存の会計システムやITインフラの改修、そして各国税務当局への報告義務の履行が挙げられます。PwC Japanグループの実務対応ガイドでは、企業がこれらの課題に対応するための具体的なステップが示されています。例えば、GloBEルール適用に必要な財務データの特定と収集、計算ツールの導入、税務部門と会計部門の連携強化、そして専門家によるアドバイスの活用などが推奨されています。

国税庁もグローバル・ミニマム課税に関する情報提供を行っており、企業はこれらの情報を活用して正確な税務申告を行う必要があります。今後、企業は、GloBEルールに準拠した情報収集体制の確立、税務申告プロセスの見直し、そして潜在的な税務リスクの評価と管理を継続的に行うことが不可欠です。2026年3月期の四半期および中間決算においても、グローバル・ミニマム課税の影響を適切に評価し、財務諸表に反映させることが求められています。

Reference / エビデンス