グローバル法人税改革の進展と多国籍企業の対応:2026年3月期の動向

2026年3月27日、国際的な法人税改革、特にOECDが主導する「2本の柱」解決策、とりわけグローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の導入が、多国籍企業にとって喫緊の課題として浮上しています。各国での法制化が加速する中、企業は複雑なコンプライアンス要件への対応を迫られています。

グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の最新動向と各国の法制化

グローバル・ミニマム課税は、多国籍企業に対し各国で最低15%以上の法人税を確保する仕組みであり、税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトの一環として、約140カ国・地域が参加するOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で合意されました。日本でも2023年度税制改正で所得合算ルール(IIR)が法制化され、2024年4月1日以降に開始する対象会計年度から適用が開始されています。

2026年3月27日現在、多国籍企業は、このグローバル・ミニマム課税への対応を急いでいます。特に、2026年1月5日には、グローバル・ミニマム課税と独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について国際合意が成立し、これを受けて1月23日には「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定されました。

各国の法制化状況を見ると、ドイツでは2023年12月31日以降に開始する事業年度からグローバル・ミニマム課税が適用されており、2024年末には申告書が公開される見込みです。 日本の3月期決算企業の場合、2025年3月期を対象とする最初の申告期限は2026年9月末とされています。 ベルギーやブラジルでは、4月上旬に申告期限の延長や新たなガイダンスが発表される可能性があり、多国籍企業はこれらの動向を注視しています。

多国籍企業が直面するコンプライアンス上の課題は多岐にわたります。複雑な制度内容の理解に加え、データ収集、システム対応、財務開示の圧力などが挙げられます。特に、連結総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループに適用されるため、多くの企業が影響を受けます。

日本の2026年度税制改正と多国籍企業への影響

日本の2026年度税制改正大綱は、2025年12月19日に与党より公表され、国際課税分野においてグローバル・ミニマム課税への対応と外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しが盛り込まれています。

グローバル・ミニマム課税に関しては、2026年1月5日の国際合意を踏まえ、日本においても法制化が行われる見込みです。 具体的には、軽課税所得ルール(UTPR)が「国際最低課税残余額に対する法人税」として、また国内ミニマム課税(QDMTT)が「国内最低課税額に対する法人税」として、2026年4月1日以降に開始する対象会計年度から適用されることになります。

CFC税制の見直しでは、受動的所得の合算課税の対象となる「部分対象外国関係会社」が解散した場合の計算方法の改正や、外国金融子会社等に関する特例の創設などが含まれています。これらのCFC税制の改正は、外国関係会社の2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。

これらの改正は、日本企業を含む多国籍企業に大きな影響を与えます。特に、2026年3月期決算においては、グローバル・ミニマム課税の適用開始に伴う税務上の留意事項がKPMGやデロイトトーマツなどのレポートで3月2日、3月9日に発行されており、企業はこれらの情報を基に準備を進める必要があります。 2026年4月1日以降に開始する事業年度からは、UTPRやQDMTTの適用が開始されるため、企業は新たな税制への対応を急ぐ必要があります。

多国籍企業のコンプライアンスと実務上の課題

グローバル・ミニマム課税の導入は、多国籍企業に新たなコンプライアンス上の課題をもたらしています。最も顕著なのは、GloBE情報申告書作成のための膨大なデータ収集と、それに伴うシステム対応の必要性です。 申告期限は対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月以内(初年度は1年6か月以内)とされており、3月決算法人にとっては2025年3月期のGloBE情報申告書の提出期限が2026年9月30日となるため、決算業務と並行しての対応が求められます。

実務的な対応策としては、まずグローバル・ミニマム課税が自社グループに与える影響評価を早期に行うことが不可欠です。また、グローバル税務戦略の最適化、特にQDMTT(適格国内ミニマム追補課税)の活用は、他国からのIIR/UTPRによる課税を回避し、国内でトップアップ税額を徴収する上で重要な選択肢となります。

さらに、各国における税制動向も注視する必要があります。例えば、ナイジェリアでは2026年1月1日に「2025年ナイジェリア税法」が施行され、所得課税の統合、恒久的施設(PE)基準の強化、外国子会社合算税制(CFC)の導入・拡充などが行われました。 これにより、ナイジェリアに物理的な拠点がなくても、同国の市場で経済的価値を生み出す外国企業に広く課税できる仕組みが整備されています。 ジェトロは3月31日に、このナイジェリアの税法改正に関するレポートを発行する予定であり、多国籍企業はこれらの情報を基に、各国の税制改正への対応を強化していく必要があります。

Reference / エビデンス