USMCA共同見直しと北米サプライチェーンからの中国排除
2026年3月24日に報じられたUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の「6年目見直し」協議は、北米サプライチェーンからの中国製部品や投資の排除、および原産地規則の厳格化が主要な焦点となっています。米国はメキシコに対し、北米のサプライチェーンから中国製部品や投資を排除することを強く要求しており、合意に至らない場合、メキシコ製自動車などに高額な追加関税が課されるリスクが指摘されています。これは、日本企業を含むメキシコに生産拠点を持つ企業にとって、部品の調達源流の再調査や供給網の再編を迫る構造的な転換点となるでしょう。
2026年3月19日には、米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表とメキシコのマルセロ・エブラル経済相がワシントンで会談し、USMCAの共同見直しに向けた初の2国間技術協議を開始しました。両閣僚は、北米サプライチェーンへの非市場経済国の参入を制限しつつ、米国およびメキシコの製造業における雇用を増加させるための選択肢を検討しました。具体的な検討事項としては、経済安全保障、原産地規則の強化、補完的貿易措置における協力強化などが挙げられています。
米国は、メキシコを通じた中国製部品や製品の米国流入を「バックドア(裏口)の封鎖」として警戒しており、特に自動車産業と鉄鋼・アルミニウム分野が標的となっています。中国企業が米国の高関税を逃れるため、メキシコに工場を建設し、USMCAの無関税枠を利用して米国市場に輸出している現状に対し、米国は原産地規則の厳格化を通じてこれを排除しようとしています。
USMCAの延長には3カ国での合意が必要ですが、米国とカナダの関係は現在良好ではないとされており、これがUSMCA見直し協議に影響を与える可能性も指摘されています。
米国の新たな関税政策とカナダの報復措置
2026年3月23日前後、米国による新たな関税措置、特にトランプ大統領による全世界一律10%の関税賦課が注目を集めています。この関税は2月24日に発効し、トランプ大統領はさらに15%への引き上げを計画していると報じられています。
これに対し、カナダ政府は大規模な報復措置の準備を本格化させています。2026年3月6日、カナダ政府は米国が発動したカナダ産品への35%追加関税に対し、大規模な報復措置の準備を発表しました。カナダ経済は輸出の約7割を米国に依存しており、この懲罰的な関税は自動車部品、木材、アルミニウムなどの主要産業に致命的な打撃を与えています。カナダが準備している報復関税の対象品目は、米国の産業と国内政治の急所を突くよう精緻に設計されており、エネルギー、重要鉱物資源、米国産農産物、消費財などが含まれるとみられています。
また、2026年3月6日には、ニューヨーク州やカリフォルニア州など24州の司法長官らが、トランプ大統領が通商法122条を根拠に発動した全世界一律10%の追加関税について、「致命的な欠陥」があり無効にすべきだと主張し、国際貿易裁判所に提訴しました。
トランプ大統領は、2025年7月10日にはカナダに対し8月1日から35%の追加関税を課すと通告する書簡を公開しており、カナダからの違法薬物流入対策の不十分さを批判していました。 2025年3月4日には、トランプ政権がメキシコとカナダに対し25%の関税を発動したことを受け、カナダのトルドー首相は300億カナダドル(約3兆円)相当の米国からの輸入品に対し25%の関税を即時発動すると発表し、さらに21日以内に1550億カナダドル(約16兆円)相当に拡大すると表明していました。
米国によるロシア石油制裁の一部緩和
2026年3月23日前後、米国財務省はロシア産石油に対する経済制裁の一部緩和措置を発表しました。2026年3月19日に発表された新たな一般許可証は、3月12日以前に船舶に積載されたロシア産原油および石油製品の引き渡しと販売を2026年4月11日午前0時1分(東部夏時間)まで許可するものです。ただし、北朝鮮、キューバ、クリミアに関わる取引は除外されています。
この一時的な措置は、中東情勢の緊張が続く中で高騰するエネルギー価格を緩和することを目的としています。米国とイスラエルによるイラン空爆後にホルムズ海峡が事実上封鎖され、国際原油価格が1バレル=100ドル前後まで高騰したことを受け、緊急の対応が迫られた形です。
スコット・ベセント米財務長官は、この限定的かつ短期的な措置は既に輸送中の石油にのみ適用され、ロシア政府に大きな財政的利益をもたらすものではないと説明しています。
カナダの輸出管理リスト改正と有害化学物質規制
北米における輸出規制措置として、2026年2月26日にカナダのCEPA(カナダ環境保護法)輸出管理リスト(ECL)の改正が告示されました。この改正により、新たな管理化学物質が追加され、カナダがロッテルダム条約およびストックホルム条約に基づく国際的義務を遵守することが確保されます。
主な改正点としては、建築用断熱フォームなどに使用される難燃剤であるヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、撥水・撥油製品に使用されるペルフルオロオクタン酸(PFOA)、その塩類および前駆体、家具や電子機器などに使用される難燃剤であるポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)などがパート2に追加され、輸入国からの事前同意が必要となります。また、国内での使用が制限される長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCAs、C9–C21)や殺菌剤のフェルバムなどがパート3に追加されました。
これらの規制強化は、有害化学物質を取り扱う特定企業に対し、輸出入プロセスの見直しや製品成分の再評価を求めるものであり、国際的な環境規制への対応がより一層重要となります。
Reference / エビデンス
- 20260326 USMCA2026:「中国排除」の衝撃波と日本企業のサプライチェーン・リスク - YouTube
- 米USTR、メキシコとのUSMCA見直し協議開始、非市場経済国の参入制限と原産地規則の強化を議論(カナダ、米国、メキシコ) - ジェトロ
- 北米貿易の命運を握る「2026年7月」に向けたカウントダウン。USMCA再検討と関税リスクの深層
- カナダによる対米報復関税の衝撃。北米一体型サプライチェーンの崩壊と日本企業の対応策
- 米24州がトランプ「新関税」提訴 差し止め求める 関税政策に逆風続く(2026年3月6日) - YouTube
- Global Legal Update Vol. 125 | 2026年3月号 - Jones Day
- 「特集」ゲームチェンジの行方 日米関係は変質するか?変質すべきか? - 共同通信社
- 米国、新たな許可でロシア石油制裁を緩和 | Phemex News
- カナダは有害化学物質の輸出管理を強化するためCEPA輸出管理リストを改正 - ChemRadar