北米:連邦選挙に伴う経済・通商政策の変遷

2026年3月22日、北米地域は連邦選挙後の新たな経済・通商政策の局面を迎えている。特に今年7月に予定されているUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の初回レビューは、各国が直面するインフレ抑制、国内産業保護、そして非市場経済国からの影響排除といった課題を背景に、域内経済統合の将来を左右する重要な試金石となる。各国新政権の政策動向が、地域全体の経済見通しを形成する上で注目されている。

USMCAレビューの進捗と北米サプライチェーンへの影響

2026年7月に迫るUSMCAの初回レビューを前に、米国とメキシコは3月18日、見直しに向けた二国間技術協議を開始した。この協議の主要な論点の一つは、原産地規則の強化であり、特に米国は中国製部品の排除を強く要求している。米国は、域内コンテンツ要件を現在の水準から80~85%へ引き上げることを提案しており、これは北米のサプライチェーン、特に自動車産業や同地域に進出する日本企業に大きな影響を与える可能性が高い。

米国通商代表部(USTR)は、非市場経済国の参入制限と原産地規則の強化を議論の焦点としている。 メキシコ政府は、USMCAの見直し協議が順調に進んでいると強調しているものの、中国製品への関税引き上げといった対米協調策と国内産業保護の間で政策的なジレンマに直面している。

米国の経済・貿易政策の動向と選挙後の影響

米国の経済は、最新の経済指標が混在する状況を示している。3月19日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%の上昇を記録した。 また、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利が据え置かれた。 しかし、2月の財の貿易赤字は834.87億ドルに拡大しており、貿易不均衡の問題は依然として根深い。

再選を想定されるトランプ政権の貿易政策は、今後の経済に大きな影響を与える見込みだ。セクション232に基づく関税や、122条関税の適用、さらには相互関税に関する最高裁判断など、保護主義的な政策が再び前面に出る可能性がある。 これらの政策は、国内産業の保護を目的とする一方で、貿易相手国との摩擦を激化させ、世界経済に不確実性をもたらすリスクをはらんでいる。

メキシコの経済状況と貿易政策の課題

メキシコ経済は、インフレ圧力の高まりに直面している。3月24日に発表された中間月インフレ率は、前年同月比4.63%に上昇した。 このインフレ動向は、メキシコ政府の経済政策に大きな影響を与えており、物価安定が喫緊の課題となっている。

USMCA見直しにおけるメキシコの立場は複雑だ。米国が中国製部品の排除を求める中、メキシコは中国製品への関税引き上げといった対米協調策を講じつつも、国内産業の保護とのバランスを取る必要がある。 メキシコ政府は、USMCAの見直し協議が順調に進んでいると強調しているが、国内の経済状況と米国の要求の間で難しい舵取りが求められている。

カナダの経済見通しと貿易関係の変化

カナダ経済は、緩やかな回復の兆しを見せている。2025年第4四半期の実質GDP成長率は前期比年率マイナス0.6%と低調であったものの、2026年2月のGDPは前月比0.2%拡大したという速報値が発表された。

2025年総選挙で勝利したマーク・カーニー首相の政権下では、経済成長の加速と米国との貿易関係の安定化が主要な政策課題となる。ゴールドマン・サックスは、2026年のカナダの成長率を1.8%と予測しており、貿易緊張の緩和が成長を加速させると見ている。 USMCAレビューは、カナダにとって米国との貿易関係を再構築し、国内経済の安定を図る上で重要な機会となるだろう。

Reference / エビデンス