北米エネルギー政策の動向:米国LNG輸出拡大とカナダの戦略的課題

米国:LNG輸出能力の拡大と市場への影響

2026年3月13日、米国エネルギー省(DOE)は、ルイジアナ州に位置するVenture Global社のPlaquemines LNGターミナルからの液化天然ガス(LNG)輸出を直ちに13%増加させることを承認しました。この決定により、非自由貿易協定国へのLNG輸出は1日あたり0.45億立方フィート(Bcf/d)追加され、同ターミナルの総輸出承認能力は3.85 Bcf/dとなります。DOEは、中東情勢の緊張とホルムズ海峡の混乱が続く中で、この措置が世界の天然ガス供給を強化する目的であると説明しています。

同年3月には、米国のLNG輸出量が過去最高の11.7百万メートルトンを記録しました。この増加は、テキサス州の新工場稼働に加え、中東での紛争による供給途絶が世界のガス価格を急騰させたことに起因しています。このような国際市場の状況を受け、2026年3月13日には米国の石油部門が輸出制限に反対する警告を発しており、市場の信頼性や国際関係への潜在的な影響を懸念しています。

カナダ:エネルギー輸出拡大への意欲と国内政策の課題

2026年3月11日、カナダのエネルギー・天然資源大臣ティム・ホジソン氏は声明を発表し、中東での軍事行動とホルムズ海峡の混乱に関連する世界のエネルギー市場のボラティリティが高まる中、カナダが主要なエネルギー生産国および輸出国としてエネルギー安定を支援する立場にあることを強調しました。カナダ政府は輸出能力の増強と多様化、国内エネルギー安全保障の強化、および同盟国の支援に取り組んでいると述べています。

しかし、カナダはエネルギー輸出拡大に向けた意欲を示す一方で、国内政策に起因する課題も抱えています。過去10年間にわたるパイプライン建設の停滞や輸出インフラの制約が続いています。具体的には、石油タンカーの交通を制限するBill C-48や、プロジェクト承認に主観的な基準を導入するBill C-69といった規制、さらに炭素税の増加などが、エネルギー分野への投資を阻害し、迅速な輸出拡大を困難にしていると指摘されています。

このような状況下でも、カナダのエネルギー輸出は堅調に推移しています。2026年1月には、カナダの原油輸出量が過去最高を記録し、一次エネルギー生産量も2020年以降で最高水準に達しました。また、米国の極端な冬季気象による需要増が影響し、天然ガス輸出も大幅に増加しました。

Reference / エビデンス

  • Energy Department Approves Immediate Additional LNG Exports from Plaquemines LNG 2026年3月13日、米国エネルギー省(DOE)は、Venture Global社のルイジアナ州Plaquemines LNGターミナルからの液化天然ガス(LNG)輸出を直ちに13%増加させることを承認しました。この承認により、非自由貿易協定国へのLNG輸出が1日あたり0.45億立方フィート(Bcf/d)追加され、同ターミナルの総輸出承認能力は3.85 Bcf/dとなります。DOEは、この措置が中東情勢の緊張とホルムズ海峡の混乱の中で世界の天然ガス供給を強化すると述べています。
  • Statement from the Minister of Energy and Natural Resources in support of strengthening global energy stability | BOE Report 2026年3月11日、カナダのエネルギー・天然資源大臣ティム・ホジソン氏は、中東での軍事行動とホルムズ海峡の混乱に関連する世界のエネルギー市場のボラティリティが高まる中、カナダが主要なエネルギー生産国および輸出国としてエネルギー安定を支援する良い立場にあるとの声明を発表しました。声明では、カナダ政府が輸出能力の増強と多様化、国内エネルギー安全保障の強化、および同盟国の支援に取り組んでいることが強調されています。
  • U.S. LNG exports up again in March on global panic buying | American Press 2026年3月、米国の液化天然ガス(LNG)輸出は過去最高の11.7百万メートルトンに達しました。これは、テキサス州の新工場稼働と、中東での紛争による供給途絶が世界のガス価格を急騰させたことに起因しています。
  • CER – What's New – Natural gas and electricity emerge as pivotal forces shaping Canada's energy future in new energy outlook - Canada Energy Regulator 2026年3月17日にカナダエネルギー規制庁(CER)が発表した報告書『Canada's Energy Future 2026』によると、カナダ国内では電力需要が増加し、再生可能エネルギーが急速に成長すると予測されています。また、天然ガス生産の拡大と石油生産の潜在的な増加が、カナダの世界市場における存在感を強化する可能性があると指摘されています。しかし、現在の政策の下では、カナダの温室効果ガス排出量は2035年頃に横ばいになると予想されており、2050年のネットゼロ排出目標達成には追加的な気候変動対策が必要であるとされています。
  • EPA Continues to Unleash Domestic Energy with Revisions to Burdensome, Unworkable Biden-era Oil and Natural Gas Regulations, Saving Americans Billions in Energy Costs 2026年3月30日(報告は4月6日)、米国環境保護庁(EPA)は、2024年のクリーンエア法に基づく石油・天然ガス規則(OOOOb/c)の一部を改訂しました。これらの変更により、一時的なフレアリングの許容期間が延長され、監視規定が調整されました。EPAは、これらの改訂が業界の負担を軽減し、国内エネルギー生産を促進すると説明しています。
  • EPA Finalizes Historic New Renewable Fuel Standards to Strengthen American Energy Security, Support Rural Economies 2026年3月27日、米国環境保護庁(EPA)は、2026年と2027年の再生可能燃料基準(RFS)「Set 2」規則を最終決定し、過去最高のバイオ燃料混合義務を設定しました。この規則は、米国のエネルギー安全保障を強化し、農村経済を支援することを目的としており、2025年と比較してバイオディーゼルおよび再生可能ディーゼルの生産と使用を約60%増加させると推定されています。
  • Canada can increase global energy security—but bad policies block the way - The Hub 2026年3月27日の論説によると、カナダは世界のエネルギー供給を増やす潜在能力があるにもかかわらず、Bill C-48(石油タンカーの交通を制限)、Bill C-69(プロジェクト承認に主観的な基準を導入)、および炭素税の増加といった制限的な政策が投資を阻害し、エネルギー輸出インフラの拡大を妨げていると指摘されています。
  • US Oil Sector Warns Against Export Restrictions - Discovery Alert 2026年3月13日、米国の石油部門は、世界的な供給途絶と地政学的緊張の中で、輸出制限に反対する警告を発しました。これは、市場の信頼性と国際関係を損なう可能性を懸念するものです。また、2026年3月19日にはホワイトハウスが石油・ガス輸出制限を計画していないことを表明し、短期的な価格緩和よりも長期的な戦略目標を優先する姿勢を示しました。
  • The Daily — Canadian international merchandise trade, January 2026 2026年1月、カナダの原油輸出は過去最高を記録し、一次エネルギー生産量も2020年以降で最高水準に達しました。天然ガス輸出も、米国の極端な冬季気象による需要増により大幅に増加しました。