北米エネルギー政策の最新動向:米国の規制緩和とカナダの輸出戦略が交錯する現状

米国:温室効果ガス規制の緩和とエネルギー輸出戦略

米国環境保護庁(EPA)は2026年2月18日、新自動車および新自動車エンジンからの温室効果ガス(GHG)排出規制の根拠となっていた2009年の「エンダンジャーメント・ファインディング」を撤回する最終規則を公表しました。これにより、EPAが地球規模の気候変動を理由とした車両基準のGHG排出規制を定める権限を持たないと結論付けられ、関連するGHG規制が正式に廃止されました。この措置は、トランプ政権下のEPAがバイデン政権時代の石油・天然ガス規制を見直し、国内エネルギーを解放し、業界のコンプライアンスコストを削減するための一連の行動の一部とされています。バイデン政権の環境政策はGHG排出量削減と2050年までのネットゼロ排出達成を主要目標としていましたが、現在の規制緩和の動きはこれとは異なる方向性を示しています。

米国は世界最大の天然ガス生産国となり、2026年3月には液化天然ガス(LNG)輸出が過去最高を記録しました。2026年1月時点で、米国の輸出ターミナルは5大陸50カ国にLNG貨物を送っています。2026年3月時点の市場状況と政策声明によると、米国は原油輸出を妨げる計画はなく、オープンな輸出政策を維持しています。連邦エネルギー規制委員会(FERC)の2026年3月10日時点のデータでは、米国には8つの稼働中のLNG輸出ターミナルがあり、これらはほぼ最大容量で稼働しているため、大幅な輸出増加には大規模なインフラ拡張が必要とされています。米国エネルギー情報局(EIA)の2026年3月の短期エネルギーアウトルックでは、LNG輸出が2025年第1四半期から増加傾向にあると予測されています。

カナダ:エネルギー輸出拡大への意欲と環境政策の調整

2026年3月11日、カナダの天然資源大臣は、中東での軍事行動とホルムズ海峡の混乱に関連する世界エネルギー市場のボラティリティが高まる中、カナダが世界のエネルギー安定化を支援する上で有利な立場にあるとの声明を発表しました。カナダ政府は、主要なエネルギー生産国および輸出国として、輸出能力の拡大と多様化、国内エネルギー安全保障の強化、および同盟国支援にコミットしています。

2026年3月13日、カナダ環境・気候変動省(ECCC)は2026-2027会計年度の部門計画を発表しました。この計画の主要優先事項には、クリーン成長と気候行動の加速、主要プロジェクト承認プロセスの効率化と規制負担の軽減、自然保護と生物多様性の推進が含まれます。しかし、この計画には、2026年3月31日をもって「強化された自然遺産基金」の法定資金が減少することが明記されています。この基金は2021年の連邦予算で5年間で23億ドルの支出が約束されたもので、2026-2027年度には3億8100万ドルの不足が生じるとされており、自然保護活動への資金提供に影響を与える可能性があります。この点は、エネルギー輸出拡大への意欲と環境保護の間の政治的調整の側面を浮き彫りにしています。

北米全体のエネルギー展望と政策の相互作用

米国とカナダのそれぞれの政策調整は、北米全体のエネルギー市場と環境目標に異なる影響を与える可能性があります。米国では、温室効果ガス排出規制の緩和と、原油・LNG輸出の拡大方針により、国内の化石燃料生産と輸出が促進される可能性が示唆されています。LNG輸出は2026年3月に過去最高を記録し、2025年第1四半期からの増加傾向が予測されていますが、さらなる大幅な輸出増加には大規模なインフラ拡張が課題となります。

一方、カナダは世界的なエネルギー市場の安定化に貢献するため、輸出能力の拡大と多様化にコミットしています。しかし、カナダの政策、例えばBill C-48、C-69、C-5、炭素税、メタン排出削減要件などが、エネルギー部門への投資と拡大を妨げているという批判があります。実際、2014年から2024年にかけてカナダのエネルギー部門への投資は大幅に減少しました。これは、エネルギー開発と環境目標、特にクリーン成長と気候行動の加速を目指すECCCの部門計画との間でバランスを取ることの課題を示しています。両国の政策は、経済成長とエネルギー安全保障を追求する一方で、気候変動対策との間で異なる調整経路を辿っており、北米全体のエネルギー展望に複雑な影響を与えています。

Reference / エビデンス