欧州炭素規律(CBAM等)による日本製品の流通への影響:2026年4月25日時点の状況と課題

2026年4月25日、欧州連合(EU)が導入した炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、その本格的な支払い義務フェーズに移行して以来、日本企業にとって新たな貿易環境を形成しています。特に、2026年1月1日からの本格施行は、対象となる鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素といった製品をEUに輸出する日本企業に対し、排出量報告義務の遵守と将来的なコスト負担への準備を強く促しています。本稿では、現時点でのCBAMの状況、日本企業が直面する課題、そして将来的なリスクと対策について詳報します。

欧州CBAMの本格施行と日本企業が直面する課題:2026年4月25日時点の状況

欧州の炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、2026年1月1日をもって本格的な支払い義務フェーズへと移行しました。これにより、対象製品をEUに輸入する企業は、その製品の製造過程で排出された温室効果ガス量に応じたCBAM証書を購入・償却する義務を負うことになります。直近の動向として、欧州委員会は2026年第1四半期のCBAM証書価格を4月7日に公表し、CO2換算1トン当たり75.36ユーロと設定されました。この価格は、EU排出量取引制度(EU-ETS)の平均オークション価格に基づいて決定されており、日本企業は今後のコスト負担を具体的に見積もる上で重要な指標となります。

しかし、2026年4月25日現在、CBAMによる日本製品の物理的な流通遮断の具体的な事例は広く報じられていません。その背景には、CBAMの支払い義務が2026年1月1日から開始されたものの、2026年輸入分に対するCBAM証書の実際の購入・償却が2027年2月からとなるため、現時点では直接的な貿易制限措置が発動されていないという事情があります。

日本企業は、2023年10月1日から始まった移行期間中から、対象製品のサプライチェーンにおける排出量データの収集と報告義務の遵守に努めてきました。しかし、サプライチェーン全体の排出量データを正確に把握し、EUの複雑な報告要件に適合させることは依然として大きな課題となっています。特に、中小企業にとっては、データ収集システムの構築や専門知識の確保が負担となるケースも少なくありません。

日本製品の欧州流通における将来的なリスクと対策

現時点ではCBAMによる物理的な流通遮断は確認されていないものの、CBAMの完全施行後、報告義務や支払い義務の不履行が続いた場合、日本製品が欧州市場で流通を阻害される可能性は十分に考えられます。EUは、CBAMの対象品目を将来的に拡大する可能性を示唆しており、2025年末までに欧州委員会が有機化学品、ポリマー、自動車部品などの川下製品への拡大に関する報告書を提出する予定です。

このような動きに対し、米国はCBAMを新たな貿易障壁として指摘しており、国際的な貿易摩擦に発展する可能性も秘めています。

日本企業が欧州市場での競争力を維持するためには、多角的な対策が不可欠です。日本政府や業界団体は、サプライチェーン全体の炭素排出量データ収集の強化を推奨しています。具体的には、製品のライフサイクル全体にわたる排出量を可視化し、正確なデータを報告できる体制を構築することが求められます。また、日本の排出量取引制度であるGX-ETS(グリーントランスフォーメーション排出量取引制度)との連携を強化し、国内での脱炭素化投資を加速させることも重要です。

脱炭素化への投資は、CBAMによるコスト負担を軽減するだけでなく、企業の持続可能性を高め、国際的な競争力を強化する上で不可欠な戦略となります。日本企業は、CBAMを単なる規制と捉えるのではなく、サプライチェーン全体のグリーン化を推進する機会として捉え、積極的に対応していくことが求められています。

Reference / エビデンス