欧州の保護主義が日本企業の欧州参入を阻む:EV優遇と鉄鋼AD調査が焦点に

2026年4月25日、欧州連合(EU)の新たな産業政策「産業加速法(IAA)」と進行中の貿易救済措置が、日本企業の欧州市場参入および事業展開に具体的な障壁を築きつつあることが明らかになった。特に電気自動車(EV)分野における「Made in EU」要件と、鉄鋼製品に対するアンチダンピング(AD)調査の進展が、日本企業にとって直接的な懸入となっている。

EU産業加速法(IAA)による電気自動車(EV)分野への参入障壁

EU欧州委員会が2026年3月4日に発表した産業加速法(IAA)は、EU域内の産業基盤強化、脱炭素化の加速、そして外国サプライヤーへの依存度低減を目的としている。このIAAは、EVを含む低炭素製品の公共調達や財政支援において「Made in EU」要件を導入する方針を示しており、日本政府は2026年4月24日、EUに対し、域内生産EV優遇政策の見直しを求める方針を固めた。日本政府は、この政策が世界貿易機関(WTO)のルールに違反し、日本車が欧州市場で競争上不利になることを懸念している。

IAAは、バッテリー技術、EV、太陽光発電、重要原材料といった新興分野への1億ユーロ(約180億円)を超える外国投資に対し、特定の条件を課すことを提案している。具体的には、外国資本の出資・支配権の持ち分を49%以下に制限するほか、知的財産やノウハウのライセンス供与義務、年間売上高の1%以上を研究開発に投資する義務、従業員の50%以上をEU域内労働者とする雇用要件、EUバリューチェーン強化戦略の作成・公開などが含まれる。 また、EVに関しては、バッテリーを除く部品の70%以上(価格ベース)をEU域内で調達しなければならないとする認定基準も導入される見込みだ。 さらに、社用車向けのゼロ排出・低排出車(ZLEV)への財政支援は「EU原産のみ」に限定される方針が示されており、日本企業は欧州での事業展開において、これらの条件を厳しく評価する必要がある。

鉄鋼製品に対するアンチダンピング調査の進展

鉄鋼製品分野では、日本を含む冷延鋼板製品に対するアンチダンピング調査が2025年9月17日に開始された。 この調査は、欧州鉄鋼業が長引く景気低迷や鋼材需要の落ち込みに苦しむ中で、安値鋼材の流入に警戒を強めていることを背景としている。 2026年4月17日には、仮措置に関する事前開示が行われ、2026年5月18日頃には仮措置が発動される見込みである。 この措置は、すでに日本製熱延鋼板に対する暫定AD措置が発動されている状況に続き、日本企業の欧州市場への鉄鋼輸出にさらなる打撃を与える可能性が高い。

広範な保護主義的動向と日本企業の対応

EU全体で高まる「Made in EU」や「Buy European」といった保護主義的傾向は、IAAの導入によってさらに顕著になっている。 ドイツ産業界からも、規制負担の増加や競争力低下への懸念が相次いで表明されている。

このような状況に対し、2026年4月16日に開催された第27回EU・日本ビジネス円卓会議(BRT)では、共同提言が発表された。 この提言では、保護主義への対抗と公正な市場アクセス確保の重要性が強調され、日EU間で産業政策、競争政策、貿易政策における具体的な協力の加速が求められた。 BRTは、IAAがEUと日本の産業界の間に相乗効果を生み出しつつ、競争力と経済的安全保障を強化する重要な機会であるとしつつも、IAAの適用範囲、基準、スケジュール、および他の規制との関係といった要素を明確にし、「共通の価値観に基づく」精神を示すことの重要性を指摘している。

IAAは、自由貿易協定(FTA)締結国(日本など)からの製品を公共調達や財政支援において「Union origin」と同等と見なす原則を掲げているものの、EVへの財政支援のように「EU原産のみ」に限定される例外も存在する。 このため、日本企業は、サプライチェーンの再評価や原産地規則への適合性確認を強化し、変化する欧州の貿易環境に迅速に対応する必要がある。

Reference / エビデンス