米国:インフラ投資法案に伴う財政赤字の長期影響(2026年4月20日時点)

2026年4月20日、米国の財政状況は、インフラ投資・雇用法(IIJA)の長期的な影響と、その他の主要な財政要因によって複雑な様相を呈しています。議会予算局(CBO)の最新予測は、連邦財政赤字が歴史的な水準で推移し、今後10年間でさらに悪化する見通しを示しており、政策立案者にとって喫緊の課題となっています。

2026年度の連邦財政赤字の現状と予測

2026会計年度上半期(3月まで)において、米国の連邦財政赤字は1.2兆ドルに達しました。これはCBOが2026年4月8日に発表した最新データによるものです。CBOは、2026会計年度通年の赤字が1.9兆ドルに上ると予測しており、これは国内総生産(GDP)の5.8%に相当します。この水準は、過去50年間の平均赤字であるGDP比3.8%を大きく上回るものです。

長期的な視点で見ると、CBOの予測では、連邦財政赤字は2036年までに3.1兆ドル、GDP比6.7%にまで拡大すると見込まれています。公的債務は2026年のGDP比101%から2036年には120%に増加し、第二次世界大戦直後の過去最高値である106%を上回る見通しです。

インフラ投資・雇用法(IIJA)の財政への直接的影響と2026年度の動向

インフラ投資・雇用法(IIJA)は、当初CBOによって10年間で2,560億ドルの財政赤字拡大をもたらすと予測されていました。この法律は、2026年9月30日に期限を迎えることになっており、連邦政府の交通プログラムに大きな影響を与えています。

2026年2月3日に署名された2026年連結歳出法は、連邦交通プログラムに資金を確保しましたが、IIJAによって確立された主要なイノベーションおよび電気自動車(EV)関連プログラムを対象とする懸念すべき傾向を継続させました。連邦道路管理局(FHWA)の2026年度予算は、2025年度から19億ドル増加し、総予算は643億ドルとなりました。しかし、この予算には資金の再配分が伴い、SMARTグラントプログラムからは2億ドル以上が転用され、実質的にゼロとなりました。また、IIJAに基づく高速道路インフラプログラムの事前歳出から10億ドルが再利用され、そのうち8億ドル以上が国家電気自動車インフラ(NEVI)プログラムから削減されました。他の情報源では、EV充電インフラへの8億7,900万ドルの削減が指摘されています。これらの削減は、IIJAが掲げる公平性目標の達成に課題を投げかけています。実際、IIJAは高速道路プロジェクトに投資を集中させる一方で、公共交通機関の資本支出は横ばい、鉄道プロジェクトは純減を経験していると指摘されています。

財政赤字の長期的な主要因とIIJA以外の影響

IIJA以外の要因も、米国の財政赤字の長期的な悪化に大きく寄与しています。社会保障費、メディケア、および純利払い費の増加が、連邦支出の主要な推進要因となっています。CBOの予測では、社会保障費は2026年のGDP比5.2%から2036年には5.9%に、メディケア費は同4%から5.2%に増加すると見られています。純利払い費は、2026年のGDP比3.3%から2036年には4.6%に上昇すると予測されており、2026年には社会保障とメディケアに次ぐ連邦予算の第3位の項目となり、2036年までには国防費のほぼ2倍に達する見込みです。

2025年の和解法案(「One Big Beautiful Bill Act」またはOBBBAとしても知られる)は、CBOの赤字予測を4.7兆ドル増加させました。また、政権の関税政策もCBOの歳入予測に大きな影響を与えています。関税収入は2025年のGDP比0.6%から2026年には1.3%に増加するものの、輸入の減少により2036年には0.9%に減少すると予測されています。さらに、移民関連の行政措置もCBOの赤字予測を5,000億ドル増加させています。

2026年の10年物国債金利は、CBOによって4.1%と予測されています。他の予測では、2026年末までに4.55%、または3.75%に達する可能性が示唆されています。2026年4月17日時点では、10年物国債の利回りは4.25%でした。一部のアナリストは、利回りが6%にまで上昇する可能性も指摘しています。

IIJAの資金使途と今後の課題

IIJAは、米国のインフラシステムに多岐にわたる分野で資金を投入してきました。具体的には、ブロードバンドに650億ドル(うち425億ドルは州へのブロックグラント)、公共交通機関に899億ドル(5年間保証)、水インフラに550億ドル、道路と橋に1,100億ドル、港湾と水路に170億ドル、空港に250億ドル、EV充電器に75億ドル、電力インフラに650億ドル、そして干ばつ、熱波、洪水、山火事に対するレジリエンスに500億ドルが割り当てられました。

IIJAの資金は2026会計年度末まで配分され続けるにもかかわらず、広範な連邦資金の削減、凍結、遅延がプロジェクトの実施を脅かしています。2026年連結歳出法では、IIJAからの23億ドルが再配分され、特にEV充電インフラからは8億7,900万ドルが削減されました。SMARTグラントは実質的に廃止されました。

2026年9月30日のIIJAの期限切れは、「資金の崖」のリスクをもたらしており、新たな法案が成立しなければ、多くのプログラムはIIJA以前の資金水準に戻る可能性があります。さらに、建設コストのインフレ高騰がIIJAの投資効果を低下させているとの指摘もあります。一部のプロジェクトでは、「無駄な支出」との批判も上がっており、2026年連結歳出法では、IIJAからの23億ドルが「無駄な民主党の優先事項」として再配分され、その中には「失敗したバイデンEV充電ネットワークの無駄な支出」からの8億7,900万ドルが含まれています。

Reference / エビデンス