米国:UST(米国債)利回り曲線の反転と景気後退
現状のUST利回り曲線:非逆転状態への移行
2026年4月17日現在、米国債市場では利回り曲線が非逆転状態を維持しており、市場参加者の注目を集めています。同日、2年債利回りは3.704%、10年債利回りは4.230%、そして30年債利回りは4.866%で推移しました。特に、景気後退の先行指標として重視される10年債と2年債のスプレッドはプラス52.6ベーシスポイント(0.526%)を記録し、長短金利差が明確にプラスを維持していることが確認されています。
この「非逆転」状態は、過去の景気後退局面でしばしば見られた逆イールド(長短金利差の逆転)が解消されていることを意味します。例えば、4月17日には10年物国債利回りが4.25%に低下し、前営業日比0.06%低い水準で取引を終えました。これは、米国とイラン双方から「ホルムズ海峡の開放」が伝えられたことでWTI原油先物価格が急落し、インフレ懸念が和らいだことが債券買いにつながったと分析されています。利回り曲線が正常化していることは、短期的な景気後退リスクが後退している可能性を示唆するものの、市場のボラティリティは依然として高い水準にあります。
景気後退確率と経済指標の動向
最新の予測市場では、米国の景気後退確率が低下傾向にあります。Polymarketのデータによると、2026年末までに米国が景気後退に陥る確率は4月16日時点で28%と、以前の40〜45%から大幅に低下しました。また、Kalshiの予測市場では、同時期の景気後退確率が約21.4%と、早期4月の35〜40%から減少しています。しかし、エコノミストの見方は分かれており、ゴールドマン・サックスは30%、JPモルガンは35%、ムーディーズはイラン戦争前のデータに基づき約50%の確率を予測しています。
経済指標の動向を見ると、2026年第1四半期のGDP予測には下方修正が見られます。国際通貨基金(IMF)は、中東紛争に起因するエネルギー価格の急騰と供給混乱を理由に、2026年の世界経済成長率予測を3.3%から3.1%に下方修正しました。米国の2026年の成長率予測も、IMFは2.3%、OECDは2.0%と、中東情勢の影響を織り込む形で修正されています。特に、イラン情勢の緊迫化は原油価格の高騰を招き、4月13日には米海軍によるホルムズ海峡の封鎖が開始され、WTI原油先物価格は99.08ドル、ブレント原油は99.36ドルまで上昇しました。国際エネルギー機関(IEA)はこれを「世界の石油市場史上最大の供給途絶」と表現しており、原油価格の高止まりはインフレ再燃の懸念を強めています。ミシガン大学の消費者信頼感指数における1年先のインフレ期待は、4月速報値で3.8%から4.8%へと急上昇し、家計を直撃しています。
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策スタンスも、これらの経済状況を反映して変化しています。Polymarketでは、2026年にFRBが利下げを一切実施しない確率が40%と予測され、1回の利下げの可能性は27%と織り込まれています。市場は利下げ時期が2027年9月までずれ込むと見ており、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が3.50〜3.75%に据え置かれました。2026年のPCE(個人消費支出)およびコアPCEインフレ率の予測は、原油高の影響を受け、それぞれ2.7%(前回2.4%)と2.7%(前回2.5%)に上方修正されています。一部では、2026年後半には再び利上げ議論が浮上する可能性も指摘されています。
今後の見通しと主要因
利回り曲線の非逆転状態が継続することは、景気後退の先行指標としての信頼性に新たな解釈をもたらす可能性があります。しかし、インフレ動向、FRBの金融政策、地政学的リスクといった主要因が、今後の米国経済およびUST利回りに大きな影響を与え続けるでしょう。
インフレは、中東情勢に起因する原油価格の高騰により、FRBの目標を上回る水準で推移する可能性が高いと見られています。2026年の米国のインフレ率は3.3%と予想されており、FRBは利下げに慎重な姿勢を維持せざるを得ない状況です。地政学的リスク、特にイラン情勢は、原油供給の不安定化とサプライチェーンの混乱を通じて、引き続き世界経済の下振れリスクとなるでしょう。
一方で、経済成長を支える要因としては、人工知能(AI)への投資と財政政策が挙げられます。AI関連の設備投資は、2025年上半期に米国の実質GDP成長率を年率1〜2%程度押し上げるなど、経済成長に寄与しており、2026年にはAIを活用した投資が5,000億ドルに達すると予測されています。また、米国の財政政策も景気を下支えする効果が期待されています。
2026年後半の米国経済は、金融・財政政策の緩和効果とAIブームに支えられ、底堅い成長が見込まれる一方で、「K字経済」(高所得層とAI関連投資が景気を牽引する一方で、低・中所得層や非AI分野の投資が低迷する二極化)の構図が継続する可能性が高いとされています。全体としては、景気後退は回避されるものの、インフレ圧力と地政学的リスクによる市場のボラティリティは高止まりする見通しです。FRBの金融政策はデータ次第の運営が続き、利下げ期待は後退し、場合によっては利上げの議論が再燃する可能性も視野に入れる必要があります。
Reference / エビデンス
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- Treasury Yields Snapshot: April 17, 2026 - ETF Database
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- 米国10年債利回り - 価格 - チャート - ヒストリカルデータ - ニュース
- The Great Un-Inversion: Treasury Volatility Surges as 10-Year Yields Hit 4.30%
- Treasury Yields Snapshot: April 17, 2026 - dshort - Advisor Perspectives
- 利回り低下後もみ合い=NY債券概況 - 2026年04月18日05:57|為替ニュース - みんかぶFX
- 2 Year Treasury Rate - Real-Time & Historical Yield Trends - YCharts
- Prediction markets slash 2026 U.S. recession odds to ~28% | Seeking Alpha
- 【為替】米景気減速の兆しとFRB利下げ | 吉田恒の為替デイリー - マネクリ
- ヤバすぎ…米国の4割が「経済崩壊」覚悟、景気後退が現実になる「原油 ドルの壁」 - ビジネス+IT
- 'Recession Shock'—Polymarket Bettors Wager $1.3M On U.S. Downturn - Forbes
- Economic & Market Perspective: April 2026 | Mutual of America
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- Recession this year? Odds & Predictions 2026 - Kalshi
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- 2026年アメリカ経済の見通し(Copilot) 4月14日更新|Seiji - note
- 5 Realistic Surprise Predictions for 2026 | J.P. Morgan Asset Management
- Transamerica Asset Management, Inc. 2026 Market Outlook