南方:中南米移民社会を通じた外交網の活用

2026年4月18日、中南米地域では移民の移動が活発化し、それに伴う社会・経済的課題が顕在化している。各国の移民政策の厳格化、送金による経済的影響、そして地域政治の右傾化は、外交関係に大きな変化をもたらしている。また、中国の「グローバルサウス」戦略における中南米への関与深化は、既存の外交構造に新たな側面を加えている。このような状況下で、移民社会、特に日系社会のようなディアスポラは、国際関係における独自の外交チャネルとして機能する可能性を秘めており、その活用は多角的な外交戦略において重要な要素となる。

中南米における移民政策の現状と課題

2025年から2026年にかけて、中南米諸国では移民政策の厳格化が顕著に進んでいる。特に国境管理の強化や不法移民への対応は、深刻な人道危機を引き起こしている。チリでは、2026年3月20日に「移民防波壁」の建設が開始されたと発表され、不法移民の流入阻止に向けた強硬な姿勢が示された。これは、2025年3月に発足したカスト政権の主要政策の一つであり、不法移民の増加に対する国民の不満を背景としている。

米国においても、移民政策の転換は中南米諸国に大きな影響を与えている。2025年6月2日、米国最高裁は中南米4カ国からの移民に対する保護措置の取り消しを容認し、バイデン政権の移民保護路線を否定する判断を下した。この決定は、トランプ前大統領の再選を視野に入れた動きと見られており、中南米からの移民にとっては強制送還への懸念を一層高めるものとなった。

このような政策転換の背景には、中南米地域における移民問題の深刻化がある。特に、コロンビアとパナマの国境地帯にある「ダリエン地峡」を越える移民の数は急増しており、2023年には52万人以上が通過したと報告されている。これは2022年の2倍以上にあたり、中南米で広がる人道危機を浮き彫りにしている。各国政府は、トランプ氏の大統領就任を前に、移民問題に関する共同声明を発表するなど、対応を迫られている状況だ。

移民社会が外交に与える影響

移民による母国への送金は、中南米諸国の経済において極めて重要な役割を果たしており、これが外交関係にも影響を与えている。2025年10月3日の報道によると、米国における中南米系移民の間では、強制送還への不安から、母国への「予防的送金」が急増している。これは、移民が将来の不測の事態に備え、家族の生活を支えるために送金を増やしていることを示しており、送金が単なる経済活動に留まらず、社会情勢に強く連動していることを物語っている。

一方で、フィリピンの海外送金動向を見ると、2026年2月の海外送金は9カ月ぶりの低水準を記録したと2026年4月16日に発表された。これは、世界経済の変動や各国の移民政策の変化が、送金という形で移民の経済活動に直接的な影響を与えていることを示唆している。ディアスポラが持つ経済的・政治的影響力は、母国政府にとって重要な外交資源となり得る。例えば、日本と中南米の日系社会との連携強化は、文化交流、経済協力、人材育成といった多角的な外交網の活用に繋がる可能性を秘めている。笹川平和財団は、2026年度の「次世代日本ラテンアメリカ研究会」の応募要項を2026年4月6日に発表し、日本と中南米の専門家間のネットワーク構築を支援することで、日系社会を通じた外交の可能性を探る動きを加速させている。

地域政治の右傾化と外交関係の変化

2025年から2026年にかけて中南米地域で顕著になっている政治の右傾化トレンドは、各国間の外交関係、特に米国および中国との関係に大きな影響を与えている。チリでは、2026年3月に発足したカスト政権が、不法移民阻止を掲げた「移民防波壁」の建設を開始するなど、強硬な移民政策を推進している。また、2024年に誕生したアルゼンチンのミレイ政権も、経済の自由化と対米接近を志向しており、地域全体の政治バランスに変化をもたらしている。

このような右傾化は、中南米諸国の外交政策に大きな影響を与えている。多くの国が対米接近の姿勢を強める一方で、中国との関係も維持しようとする動きが見られる。2026年4月15日の特集記事では、中南米における米国通商政策がビジネス機会と脅威の両方をもたらしていると分析されており、米国との経済関係強化が各国にとって重要な課題となっていることが示唆されている。

しかし、米国と中国という二大国間の狭間で、中南米諸国は難しい選択を迫られている。2026年1月13日の連載記事では、中南米における麻薬問題、独裁政権、そして中国の台頭が、米国の介入を招く要因となり得ると指摘されている。地域政治の右傾化は、移民政策の強硬化だけでなく、経済政策の変化を通じて、既存の外交網の活用にも新たな課題を突きつけている。

中国の関与と「グローバルサウス」外交

中国は中南米地域において、「グローバルサウス」外交を積極的に展開し、その影響力を着実に拡大している。2026年2月10日には「中拉合作開創全球南方発展振興新局面」と題する報道がなされ、中国とラテンアメリカ諸国との協力が、グローバルサウスの発展と振興に新たな局面を切り開くと強調された。また、2026年1月4日には「中拉『命运共同体』政策紅利」が報じられ、中国とラテンアメリカが「運命共同体」を形成することで得られる政策的恩恵が強調されている。

中国は、中南米諸国に対し、大規模な投資、貿易の拡大、文化交流、そして人材育成プログラムを通じて深く関与している。これらの取り組みは、中南米諸国の外交政策に多大な影響を与えており、一部の国では中国への経済的依存度が高まっている。例えば、中国外交部の2026年3月24日の発表では、中国とラテンアメリカ諸国との協力関係の深化が改めて強調された。

中国の「グローバルサウス」外交は、既存の外交網に新たな側面を加えるだけでなく、移民社会にも影響を与えている。中国からの投資やビジネス機会の増加は、現地経済に新たな活力を与える一方で、地域内の労働市場や社会構造にも変化をもたらす可能性がある。中南米諸国は、米国との伝統的な関係と中国との新たな関係の間で、バランスの取れた外交戦略を模索している状況だ。

日本と中南米日系社会を通じた外交の可能性

日本は、中南米の日系社会との歴史的なつながりを、現代の外交網として活用する大きな可能性を秘めている。2026年4月17日には、明治学院大学で中南米7か国の大使が登壇する公開講座が開催され、ラテンアメリカ諸国との関係強化に向けた活発な議論が行われた。このような機会は、日本と中南米諸国との相互理解を深め、外交関係を強化する上で極めて重要である。

また、笹川平和財団は、2026年4月6日に「次世代日本ラテンアメリカ研究会」の応募要項を発表し、日本と中南米の専門家間のネットワーク構築を支援する取り組みを進めている。これは、日系人との連携強化を通じて、文化交流、経済協力、人材育成といった多角的な側面から日本外交の新たな可能性を追求するものである。日系社会は、両地域の架け橋として、言語や文化の壁を越えた円滑なコミュニケーションを可能にする独自の強みを持っている。

日本政府は、日系社会のネットワークを最大限に活用し、中南米諸国との間でより強固な信頼関係を構築すべきである。具体的には、日系企業による現地投資の促進、日系人コミュニティを通じた草の根レベルの文化交流の強化、そして次世代の日系リーダー育成プログラムの拡充などが考えられる。これらの取り組みは、中南米地域における日本のプレゼンスを高め、多極化する国際社会において日本の外交力を強化する上で不可欠な要素となるだろう。

Reference / エビデンス