米国:水素ハブ構想と税制優遇(45V)の現状と市場への影響

2026年4月16日、米国における水素エネルギー戦略は、政府の強力な推進と市場の活発な動きが交錯する局面を迎えています。特に、水素ハブ構想の進捗と45Vクリーン水素生産税額控除の動向は、今後のエネルギー転換の行方を左右する重要な要素として注目されています。

米国水素ハブ構想の進捗と政治的影響

米国エネルギー省(DOE)は、国内のクリーン水素生産を加速するため、当初6~10拠点の水素ハブを設立し、80億ドルの助成を通じて年間300万トンの水素生産を目指すという野心的な目標を掲げていました。この構想に基づき、2023年10月には7つの地域が水素ハブとして選定され、総額70億ドルの助成金が割り当てられました。これらのハブは、米国の主要な産業地域に分散し、クリーン水素の生産、加工、輸送、貯蔵、利用のバリューチェーン全体を構築することを目指しています。

しかし、この大規模な取り組みには政治的な変動が影を落としています。2025年10月2日には、カリフォルニア州のARCHESプロジェクト(12億ドル)と太平洋北西部プロジェクト(10億ドル)を含む、総額22億ドル相当のDOE資金提供が停止されるという事態が発生しました。 この資金停止は、特にトランプ政権下でのエネルギー政策の転換と関連付けられており、クリーンエネルギープロジェクトへの連邦政府の支援が将来的に縮小される可能性を示唆しています。 政治的な不確実性は、水素ハブ構想の長期的な成功に対する懸念材料となっています。

45Vクリーン水素生産税額控除の現状と政策の不確実性

インフレ削減法(IRA)によって導入された45Vクリーン水素生産税額控除は、クリーン水素生産コストを大幅に削減し、市場競争力を高めることを目的としています。この税額控除は、生産される水素のライフサイクル排出量に応じて最大で1キログラムあたり3ドルの控除を提供するもので、水素産業への投資を強力に後押ししてきました。

2025年1月3日には、財務省と内国歳入庁(IRS)が45V税額控除に関する最終規則を公表し、投資家に対して長期的な確実性を提供しました。 しかし、政策の不確実性は依然として存在します。2025年7月4日に成立した「One Big Beautiful Bill Act (OBBBA)」では、45V税額控除の廃止が回避されたものの、その後の政策変更や2028年以降の段階的廃止の可能性が指摘されています。 このような政策の変動は、水素プロジェクトへの大規模な投資を検討する企業にとって、依然として大きなリスク要因となっています。

米国水素市場の堅調な成長と直近の投資動向

政治的な不確実性にもかかわらず、米国の水素市場は堅調な成長を続けています。米国水素生成市場は、2033年までに457億ドルに達すると予測されており、産業界の脱炭素化、政府のインセンティブ、持続可能なエネルギーインフラへのシフトがその成長を牽引しています。 また、北米の水素発生市場は、2024年の192億ドルから2034年には340億ドルに成長すると見込まれています。

直近の市場データもこの成長を裏付けています。2026年4月10日に発表されたレポートによると、水素発生装置市場は2025年に15.4億ドルと評価され、2026年には16.5億ドルに成長すると予測されています。 個別の企業レベルでも活発な動きが見られます。例えば、2026年2月17日には、脱炭素化プラットフォームを提供するUtility Globalが、世界展開を目指し1億ドルのシリーズD資金調達を達成しました。 これらの具体的な数値は、米国水素市場が短期および長期的に大きな成長潜在力を秘めていることを示しています。

Reference / エビデンス