2026年4月14日:重要鉱物(レアメタル)を巡る資源ナショナリズムの台頭と国際連携の加速

2026年4月14日、世界は重要鉱物(レアメタル)を巡る資源ナショナリズムの台頭と、それに対抗する国際連携の加速という二つの潮流の狭間に立たされている。電気自動車(EV)バッテリー市場の急速な拡大を背景に、各国は経済安全保障の観点から供給網の強靭化を喫緊の課題と捉え、特に中国の動向と、日米欧豪などの連携強化が注目されている。

中国による重要鉱物輸出規制の強化とEVバッテリーリサイクル政策

中国は近年、重要鉱物の輸出管理措置を強化しており、世界のサプライチェーンに大きな影響を与えている。2023年以降、ガリウム、ゲルマニウム、黒鉛、そしてサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種のレアアースなど、多岐にわたる品目が輸出管理の対象に追加されたり、調整されたりしている。特に、2026年1月6日には日本向けの両用品目輸出管理が強化され即日施行された。

こうした動きに加え、中国は2026年4月1日にEVバッテリーの包括的リサイクル規制を施行した。これは、2030年までに年間100万トン規模に達すると予測される退役バッテリーの管理と資源確保に向けた中国の戦略的意図を示すものだ。 この規制は、EVバッテリーの「完全なる追跡網」を敷くことで、資源の循環利用を国家戦略として推進し、重要鉱物の安定供給を国内で確保しようとする狙いがある。

日米欧豪による重要鉱物サプライチェーン再編と国際連携

中国の資源ナショナリズムに対抗するため、日米欧豪は重要鉱物のサプライチェーン再編と国際連携を加速させている。2026年4月1日には、高市早苗首相とフランスのマクロン大統領が東京で首脳会談を行い、中国への依存度が高いレアアースを含む重要鉱物の調達多角化に向けた協力を深化させることで一致した。 両国は官民による共同プロジェクトを通じ、第三国での鉱山開発やフランス国内の精錬能力拡充を協議している。

また、2026年4月10日には、米国と欧州連合(EU)が重要鉱物の生産と確保で連携する合意に近づいていると報じられた。 米EU間の「行動計画」案は、中国の支配に対抗するための多国間協力の進展を示すものとみられている。

これに先立つ2026年2月4日には、ワシントンD.C.で「2026年重要鉱物閣僚会合」が開催され、米国、欧州連合、日本を含む55カ国が参加した。 この会合で、米国は同盟国による重要鉱物に関する「貿易圏」の構築を提案し、市場のゆがみを防ぐための協調的な価格下限設定の意向を表明した。 日本、米国、EUは共同声明で、重要鉱物サプライチェーンの強靭化に向けた戦略的パートナーシップを発表し、行動計画を策定し、他のパートナーとの多国間貿易イニシアチブを模索する方針を示している。

日本は中央アジアやオーストラリアとの間で資源外交を進めており、丸紅が豪州の重要鉱物プロジェクトに参画するなど、具体的な動きも見られる。

EVバッテリー市場の拡大と重要鉱物需要の動向

電気自動車(EV)用バッテリー市場は急速に拡大しており、これが重要鉱物需要に大きな影響を与えている。2025年に700億7000万米ドル規模だった市場は、2035年には5399億1000万米ドルに達し、年平均成長率(CAGR)21.18%で成長すると予測されている。 この成長は、リチウム、コバルト、ニッケルなどの主要原材料の供給不安を一層高めている。 特に、中国はリチウムイオンバッテリーの供給において支配的な立場にあり、世界の供給量の85%をオーストラリア、チリ、中国が寡占し、リチウム処理の約89%を中国が占めている現状がある。

2026年3月9日に発表されたレポート『重要原材料/重要鉱物資源/貴金属/レアアース/レアメタル/都市鉱山:ディープ・インサイト2026年版』によると、バッテリー鉱物が2026年時点で重要鉱物市場の55〜60%を占めるという構造的偏りが指摘されている。 このレポートは、リチウム市場がCAGR 27.2%、レアアース市場がCAGR 18.7%で急拡大すると予測しており、供給集中、技術転換、政策変動のリスクを詳細に分析している。

各国の資源ナショナリズム政策と経済安全保障

重要鉱物を巡る各国の資源ナショナリズム的政策は、経済安全保障に直接的な影響を与えている。インドネシアは、未加工鉱物の輸出制限を緩和しつつも国内加工を促進する政策を推進しており、ニッケルなどの鉱石輸出を禁止し、国内での精錬・加工を義務付けることで、産業構造の高度化を目指している。 しかし、米国との不均衡な貿易協定の事例も存在し、資源国が自国の利益最大化を図る動きは複雑な様相を呈している。

米国はサプライチェーンの脆弱性に対応するため、具体的な措置を講じている。2026年2月には、トランプ米政権が約120億ドル(約1兆8700億円)規模の重要鉱物備蓄計画「Project Vault」を正式発表した。 この計画は、約16億7000万ドルの民間資本と、米輸出入銀行からの100億ドルの融資を活用し、自動車メーカー、製造業者、ハイテク企業向けに鉱物を調達・備蓄することで、中国への依存を低減し、将来の供給不足に対処することを目的としている。 また、米国エネルギー省(DOE)も、採掘・加工・リサイクル技術推進に10億ドル規模のイニシアチブ、バッテリー鉱物の商業規模加工強化に5億ドルの助成金、廃さいからの資源回収強化に2億7500万ドル、次世代採掘手法開発に8000万ドルを投じるなど、多角的な取り組みを進めている。

Reference / エビデンス