ブラジル等、農業大国によるバイオ燃料と食料供給の主導権

2026年4月14日、世界はエネルギー安全保障と食料供給の複雑な均衡に直面しています。ブラジルをはじめとする農業大国は、脱炭素化とエネルギー自給率向上を目指し、バイオ燃料生産を積極的に拡大しています。しかし、この動きは世界の食料供給に大きな影響を与え、食料と燃料の競合、食料価格の変動、そして地政学的リスクの増大といった課題を浮き彫りにしています。特に、2026年3月の世界の食料価格指数が128.5ポイントに上昇し(2月比1.5%増)、中東情勢の悪化によりホルムズ海峡の船舶航行が3月1日から29日の間に95%減少したこと、そしてブラジルが2025/26年度に過去最高となる1億7785万トンの大豆生産量を予測しているといった最新の動向は、この問題の喫緊性を示しています。本稿では、農業大国がバイオ燃料と食料供給の主導権をどのように握り、それが世界経済と環境にどのような影響を与えるかを分析します。

バイオ燃料生産の拡大と政策動向

米国もまた、バイオ燃料の利用拡大に積極的です。2026年のバイオ燃料混合義務量は過去最高水準に引き上げられ、大豆などを原料とするバイオ燃料の利用拡大を推進しています。これらの政策は、エネルギー安全保障の強化と脱炭素化への貢献を目的としていますが、同時に食料供給への影響という新たな懸念も生み出しています。

食料供給への影響と食料安全保障

バイオ燃料生産の拡大は、世界の食料供給に複雑な影響を与えています。食用作物であるトウモロコシ、大豆、サトウキビなどが燃料用途に転換されることで、「食料対燃料」の競合問題が顕在化しています。この競合は、食料価格の変動を増幅させる可能性を指摘されています。実際、2026年3月の世界の食料価格指数は128.5ポイントに上昇しており、これは前月比1.5%増となります。

さらに、中東情勢の悪化は、エネルギー市場だけでなく食料価格の変動も増幅させる恐れがあります。しかし、ブラジルは2025/26年度に過去最高となる1億7785万トンの大豆生産量を予測しており、これが世界の飼料供給量を押し上げると期待されています。一方で、日本の食料自給率は2024年度カロリーベースで38%と低い水準にあり、世界の食料需給見通しでは2026年における世界の穀物消費量が28.5億トンに達する見込みであることから、国際的な食料供給の安定性は日本にとって喫緊の課題となっています。

地政学的リスクとエネルギー安全保障

中東情勢の緊迫化は、世界のエネルギー市場と食料システムに深刻な影響を及ぼしています。特に、世界の原油貿易の要衝であるホルムズ海峡の混乱は、原油、ガス、肥料の貿易に大きな影響を与えています。実際、3月初旬には中東産粒状尿素価格が2月下旬比で約20%近く上昇し、2026年前半の世界の肥料価格は平均で15~20%高くなる可能性が指摘されています。これは農業投入財のコスト上昇を通じて、最終的に食料価格に波及するメカニズムを持っています。

このような状況下で、バイオ燃料はエネルギー安全保障上の「安全弁」として再評価されています。ブラジルは原油価格高騰を背景にバイオ燃料への投資を60%増加させ、2030年までに11.5億ドルを投入する計画を発表しました。また、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスは、2026年3月14日にディーゼル油価格を11.6%引き上げており、これはバイオ燃料の経済的優位性を高める要因となっています。米国もバイオ燃料の利用拡大を通じて、エネルギー自給率の向上と地政学的リスクの軽減を図っています。

次世代バイオ燃料と持続可能性

食料との競合問題を回避するため、非可食原料を用いた次世代バイオ燃料(第二世代バイオ燃料)の開発が世界中で進められています。木質バイオマスや藻類を原料とする製造技術は現在、研究・開発段階にあり、その実用化が期待されています。市場予測では、2026年から2035年の間に第二世代バイオ燃料市場が年平均成長率25%で成長し、2035年末までに580億米ドルに達すると見込まれています。

農業大国であるブラジルは、持続可能な航空燃料(SAF)製造に必要な可食性および非可食性原料の調達・供給国として大きなポテンシャルを秘めています。サトウキビ残渣や農業廃棄物など、豊富なバイオマス資源を活用することで、食料供給を脅かすことなく、持続可能なエネルギーシステムの構築に貢献できる可能性があります。次世代バイオ燃料の開発と普及は、食料安全保障とエネルギー安全保障の両立に向けた重要な鍵となるでしょう。

Reference / エビデンス