中国による「海警法」等を用いたグレーゾーン事態の常態化とその影響

中国が2021年2月1日に施行した「海警法」は、東シナ海や南シナ海における海洋活動を活発化させ、周辺国の主権を侵害する「グレーゾーン事態」を常態化させている。これは地域の安全保障環境に深刻な影響を与え、国際的な懸念が日増しに高まっている。本稿では、海警法施行後のグレーゾーン事態の常態化に焦点を当て、その法的根拠、具体的な活動事例、周辺国および国際社会の反応、そして今後の展望について多角的に分析する。2026年4月14日時点での最新の動向を盛り込み、読者に現状への深い理解を促すことを目的とする。

中国「海警法」の法的根拠と国際法上の曖昧性

中国「海警法」は、2021年2月1日に施行され、2026年2月1日には施行5周年を迎えた。この法律は、中国の法執行機関である海警局に、中国が「管轄海域」と主張する海域での外国船舶に対する武器使用を含む広範な権限を付与している。しかし、その条文は国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)と複数の点で矛盾しており、国際社会に深刻な懸念を与えている。海警法は、中国が主張する「管轄海域」の定義が曖昧であるにもかかわらず、海警局が外国船舶に対して武器を使用できると規定している点が特に問題視されている。これは、国際法が認める自衛権の範囲を超え、一方的な武力行使を正当化する可能性を秘めているため、海洋秩序を破壊し、「海軍化」を進めるものと指摘されている。 この法律の施行以降、中国は海洋権益の拡張を強化しており、その影響は長期化している。

東シナ海におけるグレーゾーン事態の常態化

東シナ海、特に尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺海域では、中国海警局の活動が常態化し、グレーゾーン事態が深刻化している。2025年には、中国海警局の船舶が日本の接続水域に336日入域し、過去最高を記録した。 また、2026年4月9日までの時点で、中国海警局の船舶は日本の領海に今年に入って5日間にわたり侵入している。 直近では、2026年3月18日には中国海警局の船4隻が日本の領海に侵入し、日本の海上保安庁による退去警告にもかかわらず、一時的に領海内に留まる事案が発生した。 これらの活動は、日本の海上保安庁や自衛隊による警戒監視活動に大きな負担をかけており、日本の安全保障上の課題となっている。中国は、台湾有事の際にも海警局を「グレーゾーン戦術」として活用する演習を行っており、その動向は日本の防衛政策にも影響を与えている。

南シナ海における中国の威圧的行動と国際社会の反応

南シナ海においても、中国海警局は威圧的な行動を常態化させている。特にフィリピンとの間では、中国海警局の船舶による放水銃使用、衝突、照明弾発射といった事例が頻繁に発生している。 2026年4月14日に報じられた情報によると、中国漁船が南シナ海にシアン化物を投棄したとの疑惑がフィリピンから主張されており、中国側はこれを「自作自演」と反論している。 このような中国の行動に対し、フィリピンは米国、日本、オーストラリアなどとの多国間協力を強化している。例えば、2026年3月には、フィリピン、米国、日本、オーストラリアの4カ国が南シナ海で初の共同海上訓練を実施し、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の維持に向けた連携を強化した。 これらの多国間協力は、中国の一方的な現状変更の試みに対する国際社会の強い意思を示すものとして、その意義は大きい。

「第二海軍化」する中国海警局と台湾有事への示唆

中国海警局は、2018年に人民武装警察部隊に編入されて以降、「第二海軍」としての役割を強化している。 海警船の大型化と武装化は顕著であり、76ミリ砲を搭載した大型巡視船も確認されている。 中国は、台湾周辺での軍と海警局が連携した封鎖訓練や臨検・拿捕訓練を活発化させており、これは将来的な台湾有事において、軍事行動に至らない「グレーゾーン戦術」として展開される可能性が高い。 例えば、台湾周辺海域を「管轄海域」と主張し、海警局が外国船舶の航行を妨害したり、臨検・拿捕を試みたりすることで、台湾への圧力を高めることが考えられる。 このような「第二海軍化」は、地域の安全保障環境を一層不安定化させる要因となっている。

グレーゾーン事態への日本の課題と今後の展望

中国によるグレーゾーン事態の常態化に対し、日本は喫緊の安全保障上の課題に直面している。尖閣諸島周辺での中国海警局の活動増加は、日本の領土・領海保全に対する直接的な脅威であり、海上保安庁と自衛隊の連携強化が不可欠である。 日本政府は、海上保安能力の強化に加え、新たな法整備の必要性も認識している。 また、米国をはじめとする同盟国・同志国との多国間協力の重要性は増しており、フィリピンとの連携強化や、日米豪比による共同訓練の実施はその一例である。 2026年4月14日時点での日本の防衛政策は、このようなグレーゾーン事態への対処能力向上を重視しており、自衛隊の役割拡大や、よりシームレスな安全保障体制の構築を目指している。 今後、国際社会は、中国による一方的な現状変更の試みに対し、国際法の遵守を強く求めるとともに、多国間での連携を一層強化していく必要があるだろう。

Reference / エビデンス