連邦インフラ投資計画の全体的な進捗と予算執行状況
2026年1月31日時点において、超党派インフラ法(IIJA)に基づく調整済み予算額は8,490億ドルに達し、そのうち発表された助成金は5,070億ドル、義務化額は3,060億ドル、支出額は1,530億ドルとなっています。それぞれの執行率は、発表された助成金が59.7%、義務化額が36.0%、支出額が18.0%です。
一方、米国政府の財政状況を見ると、2026年3月の月次予算赤字は1,641億ドルを記録しました。これは前年の1,605億ドルの赤字と比較して増加しており、予測の1,567億ドルを上回る結果となりました。支出は5,282億ドルから5,490億ドルに増加し、主に社会保障に1,390億ドル、医療に900億ドル、国防に690億ドルが充てられています。歳入は3,676億ドルから3,849億ドルに増加し、個人所得税が1,890億ドル、社会保険と退職金が1,520億ドル、関税が220億ドルによって押し上げられました。
主要分野別予算配分と具体的な進展
IIJAは、非輸送部門においても多岐にわたる分野で初期予算配分と具体的な進展を見せています。水インフラには500億ドルが割り当てられ、これまでに1,000件以上のプロジェクトが発表され、約200億ドルの投資が公表されています。高速インターネット回線には650億ドルが投じられ、約1,500件のプロジェクトで300億ドル以上の投資が発表されました。送電網の近代化とクリーンエネルギーには650億ドルが充てられ、約800件のプロジェクトで250億ドル以上の投資が公表されています。インフラの強靭化とサイバーセキュリティには500億ドルが割り当てられ、約700件のプロジェクトで150億ドル以上の投資が発表されました。環境汚染対策には600億ドルが投じられ、約1,200件のプロジェクトで200億ドル以上の投資が公表されています。
政策動向としては、2026年3月上旬に交通制御装置に関する統一マニュアル改訂版の最終規則が発表されました。また、先進原子力開発を支援する動きも活発化しており、2024年6月18日には連邦議会上院が「クリーンエネルギーのための多用途先進原子力の導入促進法(ADVANCE Act)」を88対2で可決し、同年7月9日に大統領署名を得て公法として成立しています。 この法律は、原子力における米国のリーダーシップ強化、先進技術へのインセンティブ提供、許認可手続きの改善、核燃料サイクルやサプライチェーン強化、原子力規制委員会(NRC)の効率化などを規定し、先進原子力技術の開発・展開を促進することを目的としています。
関連法案と政策動向
2026年2月3日に署名された2026年度連結歳出法(H.R. 7148)は、IIJAの下で設立された特定のプログラムに影響を与えました。特に、SMART助成金プログラムや国家電気自動車インフラ(NEVI)フォーミュラプログラムからの資金転用が行われました。 NEVIフォーミュラ・プログラムは、2021年11月に成立したIIJAに基づき、州が策定したEV充電網の整備計画を連邦政府が承認し、総額50億ドルの補助金を配分する制度ですが、2025年2月にはトランプ政権が資金配分の停止措置などを公表し、これに対しワシントン州など20州とコロンビア特別区が提訴。2026年1月23日には連邦地裁が政府の措置は違法であるとの判決を下しています。
また、2025年7月4日にトランプ大統領の署名により成立した「一つの大きく美しい法律(OBBBA)」は、10年間で3.4兆ドルのプライマリー・バランスの赤字幅拡大が想定される大規模な減税法案です。 この法案は、2017年の税制改革(TCJA)で導入された個人所得税制度を恒久化・拡充し、低〜中所得層向けの控除やクレジットの拡充、高所得者層にとって有利な州税控除の上限引き上げなどが含まれています。 特に、2025年から2028年までの新車ローンについて最大1万ドルの利子控除が適用されるなど、自動車産業分野にも影響を与えています。 OBBBAによる減税効果と財政刺激策は、2026年に最大化する見込みです。
2026年における州レベルのインフラ投資動向
2026年には、各州で大規模なインフラ投資計画が進行しています。ニューヨーク州では、MTA(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ)が2025-2029年資本計画を策定しており、州からの30億ドル、ニューヨーク市からの30億ドル、MTAからの123億ドル(うち30億ドルは橋梁・トンネルの自己資金)、連邦政府からの144億ドルの拠出が想定されています。 2026年のMTAの運営予算は均衡を保っており、2027年の赤字予測も約半分に削減されています。
テキサス州では、人口増加と水不足に対応するため、今後20年間で200億ドルの水インフラプロジェクトへの投資が計画されており、2025年の住民投票で承認されれば、2027年から年間10億ドルの売上税収がテキサス水基金に充当される予定です。 また、テキサス州環境品質委員会(TCEQ)は、6GWの天然ガス発電フェーズの予備承認を付与しており、次世代インフラ(半導体、AI、電力、クリーンエネルギー)への民間投資も活発です。 特に、サムスン電子はテイラーの半導体製造施設に2億5,000万ドルの助成金を受け、エンフィニティ・グローバルはバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)分野で今後数年間で70億ドルを超える投資を予定しています。 フェルミ・アメリカ社は、テキサス工科大学システムと提携し、次世代AI向けに原子力発電を含む11GWの独立電力供給インフラと大規模ハイパースケールAIデータセンターを建設する計画を進めています。
フロリダ州では、ロン・デサンティス知事が2025-2026会計年度予算に151億ドルの戦略的な交通インフラ投資を盛り込みました。 このうち、州交通事業計画には137億ドルが充てられ、54億ドルが高速道路の維持・建設に、15億ドルが再舗装に、9億6,120万ドルが40の橋の修理と21の橋の架け替えに、7億8,770万ドルが貨物・鉄道・地域交通システムに割り当てられています。 また、宇宙港への投資として9,050万ドルが計上されています。
イリノイ州では、2025年6月16日に526億ドルの2026会計年度資本予算が制定されました。 これは2019年に開始された450億ドルの「Rebuild Illinois」資本計画の継続であり、道路・橋梁建設、公共交通機関、鉄道、航空、港湾プロジェクトなどの交通関連プロジェクトが最大の割合を占め、288億ドルが割り当てられています。 2026-2031会計年度の高速道路・複合輸送改善プログラムでは、州および地方の道路・橋梁に325億ドルが投資され、そのうち55億ドルが現在の会計年度で使用されます。
ノースカロライナ州では、2025年以降も新たな州予算が成立していない状況が続いており、ジョシュ・スタイン知事が2026年3月9日に14億ドルの「緊急ニーズ予算」を提案しました。 この予算は、メディケイドの完全な資金提供や、法執行官、教師、看護師などの公務員の給与引き上げといった喫緊の課題に対応することを目的としています。
Reference / エビデンス
- 2026年3月最新:連邦インフラ投資計画の進捗とIIJA再承認の課題 - Vantage Politics
- 米国政府予算 - 経済指標 | JA | TRADINGECONOMICS.COM
- 2026年3月最新:連邦インフラ投資計画の進捗とIIJA再承認の課題 - Vantage Politics
- バイデン米政権、非輸送部門のインフラ投資に係る定量的な成果発表(米国) - ジェトロ
- 2026年3月最新:連邦インフラ投資計画の進捗とIIJA再承認の課題 - Vantage Politics
- 米国、政府閉鎖はいったん解除されるも、一部課題は先送り(米国) - ジェトロ
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