グローバル:国際法人税ルールの策定と多国籍企業の動向(2026年4月8日時点)

2026年4月8日、国際法人税の分野では、OECDが主導するグローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の導入に向けた動きが加速しており、多国籍企業は新たな税務環境への適応を迫られています。特に、OECDが公表した「Side-by-Sideパッケージ」の合意内容や、各国における具体的な法制化の進捗、そして企業が直面する課題と対応策が注目されています。

OECDのグローバル・ミニマム課税「Side-by-Sideパッケージ」の合意と米国企業の適用除外

2026年1月5日、経済協力開発機構(OECD)は、グローバル・ミニマム課税に関する「Side-by-Sideパッケージ」を公表し、国際課税システムの簡素化と安定化に向けた重要な合意がなされました。このパッケージには、簡素化措置として、簡易実効税率セーフハーバー、実体ベース優遇税制セーフハーバー、SbSセーフハーバー、UPEセーフハーバーといった新たなセーフハーバー制度が導入されています。また、移行期間CbCRセーフハーバーの適用期間が1年延長され、2027年までとなりました。

この合意の中で特に注目されたのは、米国に本社を置く多国籍企業がPillar Twoの適用外とされた点です。2026年1月8日、米財務長官は、この合意により米国企業がグローバル・ミニマム課税の適用外となることを歓迎する声明を発表しました。 具体的には、SbSセーフハーバー制度が導入され、米国のGILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)制度がPillar Twoの目的上、適格国内ミニマムトップアップ課税(QDMTT)と同等とみなされることで、米国企業はPillar Twoの追加課税を免れることになります。 この措置は、国際課税システムにおける米国の影響力を改めて示すものであり、多国籍企業は今後の税務戦略を策定する上で、各国の税制との整合性を慎重に検討する必要があります。

各国のグローバル・ミニマム課税導入と最新動向(2026年4月上旬の動き)

2026年4月8日を中心に前後48時間以内には、各国でグローバル・ミニマム課税(Pillar Two)に関する具体的な動きが相次いで発表されました。トルコは同日、Pillar Twoの税務申告書および通知書の草案を公表し、制度導入に向けた準備を進めています。 ドイツも同日、IIR(所得合算ルール)、UTPR(軽課税所得ルール)、QDMTT(適格国内ミニマムトップアップ課税)、およびQDMTTセーフハーバーの適格管轄区域リストを含む草案規則を発行しました。 イタリアは、GloBE申告書の詳細な技術仕様を承認する命令を同日に発行し、申告実務の具体化を図っています。 さらに、リヒテンシュタインは同日、GloBE規則の第3条を改正し、6つのセーフハーバー制度を認めることを発表しました。 これらの動きは、グローバル・ミニマム課税の導入が世界中で着実に進行していることを示しており、多国籍企業は各国における法制化の進捗を継続的に監視し、自社の事業活動への影響を評価する必要があります。

日本の国際法人税ルール改正と多国籍企業への影響

日本においても、グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)の法制化が着実に進んでいます。2026年4月6日、国税庁は「法人税基本通達の一部改正について」の趣旨説明を公表しました。 これにより、令和7年度税制改正で法制化された「国際最低課税残余額に対する法人税」および「国内最低課税額に対する法人税」が、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される予定です。

また、2026年4月8日発行の「国際税務」2026年04月号には、「令和8年度税制改正大綱を踏まえたBEPS 2.0の最新動向」が掲載されました。 この記事では、令和8年度税制改正大綱における国際課税分野の見直し、特にグローバル・ミニマム課税(ピラー2)に関するOECDガイダンスを踏まえた見直しや、外国子会社合算税制等の継続的な見直しについて解説されています。 3月決算法人の最初の国際最低課税額確定申告書の提出期限は2026年9月末とされており、多国籍企業は、適用開始に備え、必要な情報収集体制の構築や税務計算システムの改修など、早急な準備が求められます。

多国籍企業が直面する課題と今後の対応策

グローバル・ミニマム課税の導入は、多国籍企業に複雑な制度内容への対応、膨大な情報収集の負担、そして各国での法制化における実務上の要因による複雑性といった具体的な課題をもたらしています。PwC税理士法人が2026年3月に発行した「グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド」では、申告までのスケジュール、ルールの適用における検討事項、収集すべき情報など、実務家目線に立った対応ポイントが提示されています。

企業は、GloBEルールの適用対象となるかどうかの判断から始まり、データ収集、計算、申告書の作成、そして税務当局への対応まで、多岐にわたるプロセスを管理する必要があります。特に、各国の税制や会計基準の違いを考慮したデータ収集と、それらをGloBEルールに沿って調整する作業は、大きな負担となることが予想されます。

さらに、2026年4月6日に英国歳入関税庁が発表した移転価格および迂回利益税(DPT)に関する年次統計(2024-25年度)では、税収が前年度からほぼ倍増の33億8,700万ポンドに達したことが明らかになりました。 このことは、各国の税務当局が移転価格やDPTに対する監視を強化していることを示唆しており、多国籍企業はグローバル・ミニマム課税への対応と並行して、移転価格およびDPTのリスクを適切に評価し、適切な文書化と堅牢なコンプライアンス体制を整備することが不可欠です。

Reference / エビデンス