北米:巨大IT企業に対する独占禁止法と規制の動向
2026年4月1日、北米では巨大IT企業に対する独占禁止法と規制の動きが活発化している。米国におけるGoogleへの訴訟の進展、カナダでの新たなデジタル規制法案の提出、そして予測市場を巡る連邦と州の対立、さらには大手テック企業による大規模な人員削減など、多岐にわたる動向が各国の政策決定と企業の事業戦略に大きな影響を与えている。
米国における巨大IT企業の独占禁止法訴訟の進展
米国では、Googleの検索市場および広告技術市場における独占禁止法違反に関する訴訟が重要な局面を迎えている。米国司法省および複数の州は、GoogleがChromeの強制売却を免れた判決に対し、不服として控訴している状況だ。ワシントンDCの裁判所は、Googleがオンライン検索市場を違法に独占しているとの判断を示しており、救済措置に関する判断が現在審理中である。また、Googleの広告テクノロジー事業に対する反トラスト訴訟では、司法省がアドエクスチェンジの分離とコードのオープンソース化を要求しており、最終判決は2026年になる可能性が指摘されている。
特に注目すべきは、2026年3月31日に発表されたYouTubeとMetaに対する「有害設計」認定の画期的な判決である。ロサンゼルスの地方裁判所の陪審団は、幼少期にSNS依存に陥った女性が損害賠償を求めた訴訟において、MetaとGoogle傘下のYouTubeの責任を認め、両社に懲罰的賠償を含む合計600万ドル(約9億5000万円)の賠償を命じる評決を下した。この判決に対し、MetaとGoogleは不服を表明し、控訴を検討していると報じられている。アムネスティ・インターナショナルは、この判決を「オンラインの安全確保に向けた画期的な判決」と評価している。
カナダにおけるデジタルプラットフォームおよびAI規制の動向
カナダでは、デジタルプラットフォームに対する規制強化が進んでいる。すでにオンラインストリーミング法(C-11)とオンラインニュース法(C-18)が成立しており、IT企業への依存を誘う戦略に警戒が促されている。
さらに、2026年3月26日には、仮想通貨による政治献金を禁止する法案「ビルC-25」(Strong and Free Elections Act)が下院に提出された。この法案は、ビットコインを含むデジタル資産を、追跡困難な資金形態であるマネーオーダーやプリペイドギフトカードと同様に、禁止される献金として定義している。目的は、匿名性による外国勢力の介入リスクを遮断し、民主的プロセスを保護することにある。この法案に違反した場合、個人に対しては最大2万5,000カナダドル、法人・団体に対しては最大10万カナダドルの罰則が科される可能性がある。カナダ政府は、2019年以降、仮想通貨による政治献金を許可していたものの、実際の利用は極めて限定的であり、2021年および2025年の連邦選挙では仮想通貨による献金は報告されていない。
米国における予測市場規制とAI関連の動向
米国では、予測市場の規制を巡る連邦と州の対立が顕在化している。2026年4月2日、米国商品先物取引委員会(CFTC)と司法省は、イリノイ州、アリゾナ州、コネチカット州の3州を連邦地裁に提訴した。CFTCは、商品取引所法(CEA)に基づき、予測市場を含むデリバティブ市場に対する「独占的管轄権」を有すると主張しており、州独自の規制が連邦法に抵触すると訴えている。これに先立つ2026年3月17日には、アリゾナ州が予測市場運営者に対して史上初の刑事告発を行っており、予測市場の法的地位を確定させる上で極めて重要な岐路となっている。
一方、AIとテック業界では大規模な動きが続いている。2026年4月1日、Oracleは全世界の従業員の約18%にあたる2万~3万人を削減すると発表した。これは、AI基幹設備の整備に向けた巨額の資本支出を続ける一方で、生成AI技術開発競争激化による事業リスクへの市場懸念と、AI投資のための借り入れ拡大および現金収支悪化をめぐる投資家からの圧力が背景にあるとされている。
また、AI分野の資金調達も活発だ。OpenAIは2026年3月31日までに、総額1220億ドル(約19兆3000億円)の資金調達契約を締結し、ポストマネー評価額は8520億ドル(約135兆円)に達したと発表した。同社は年内のIPO準備を進めており、一部を個人投資家に割り当てる計画も明らかにしている。さらに、SpaceXは目標時価総額1.75兆ドル(約280兆円)を掲げ、米国証券取引委員会(SEC)に秘密裏にIPO申請書を提出したと報じられており、早ければ今年7月にも上場する可能性がある。これらの動きは、AI産業への資金集中が加速していることを示している。
Reference / エビデンス
- GoogleがChrome強制売却を逃れた判決に司法省や複数の州も不服として控訴 - GIGAZINE
- グーグル検索巡る独禁法訴訟、是正措置不十分と米政府・州が控訴へ - ニューズウィーク
- 米国:裁判所 グーグルのオンライン広告独占を違法と判断 - アムネスティ日本
- 米大手パブリッシャー5社がGoogleを提訴——広告テック独占で「10年以上の収益毀損」を訴える
- カナダでIT規制2法が成立~AI時代には未対応 IT企業への依存誘う戦略に警戒を | 民放online
- 北米テック規制の最前線:HSR法改正、デジタルプラットフォーム、AI規制に見る米加墨の多様なアプローチ - Vantage Politics
- カナダ、政治献金への仮想通貨利用を禁止する法案を提出 | Iolite(アイオライト)
- カナダ政府、デジタル分野に関わる包括法案を議会に上程、個人情報保護を強化 - ジェトロ
- カナダ、「強力で自由な選挙法」で暗号資産寄付の禁止を提案 - KuCoin
- カナダ、暗号資産による政治献金を全面禁止へ - JinaCoin
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