グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の動向(2026年3月)

2026年3月30日、世界は重要鉱物資源を巡る熾烈な権益争奪戦の渦中にあり、特にグローバルサウス諸国がその主戦場となっている。電気自動車や再生可能エネルギー技術の普及に伴う需要の急増は、これらの資源の戦略的価値をかつてないほど高め、国際機関や主要国はサプライチェーンの強靭化と公平な資源開発に向けた動きを加速させている。

グローバルな重要鉱物資源争奪の現状と国際機関の動向

重要鉱物資源を巡る国際的な競争は激化の一途をたどっており、2026年3月5日には国連安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」に関する議論が行われ、国際競争における公平性が呼びかけられた。これに先立つ2月4日には、米国が「2026年重要鉱物閣僚会合」を主催し、54カ国および欧州委員会の代表を招集して、重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築する方針を打ち出している。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物資源の需要急増が地政学および産業構造を再編し、資源豊富な途上国が新たなバリューチェーンの中心になりつつあると指摘している。UNCTADは、これらの国々が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増やせる可能性を示しており、コンゴ民主共和国のコバルト加工が2022年に輸出額を約3倍の60億ドルに増加させた事例を具体例として挙げている。 また、国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2024年にはリチウム需要が約30%増加したほか、ニッケル、コバルト、グラファイト、レアアースも6〜8%増加しており、これらの資源がエネルギー転換の鍵を握る重要性を強調している。 IEAは2月19日、閣僚会議で重要鉱物安全保障プログラムに基づく協力拡大を承認し、サプライチェーンリスクに対処するための共同行動を強化すると発表した。 さらに、IEAは3月30日、中東紛争に伴うエネルギー市場の混乱に対応するため、各国の政策対応を監視するオンラインツール「エネルギー危機政策対応トラッカー」をローンチした。

主要国による重要鉱物サプライチェーン再編戦略とグローバルサウスとの連携

主要国は、重要鉱物サプライチェーンの強靭化を目指し、グローバルサウス諸国との連携を強化している。2026年3月19日には、日本の高市早苗首相と米国のドナルド・トランプ大統領がワシントンで会談し、重要鉱物サプライチェーン強靭化のための日米アクションプランを発表した。 このアクションプランでは、選定された重要鉱物の輸入のためのプライス・フロア(最低価格)の策定などを議論し、中国への依存度低減を目指す。 日米両政府は、三菱マテリアルや住友金属鉱山など、日米企業が参画する13プロジェクトを支援する意向を示している。

米国通商代表部(USTR)は2月26日、重要鉱物に関する複数国間協定の設計、ならびにサプライチェーンの強靭化に向けたパブリックコメントの募集を開始し、3月19日まで意見を受け付けている。 これは、トランプ大統領が1月に重要鉱物の取引への最低価格設定や貿易制限措置の導入検討を指示したことを受けた動きであり、米国主導の「重要鉱物・複数国間貿易協定」の具体化を意味する。 この協定は、米国と価値観を共有する同盟国および信頼できる資源保有国のみで構成される「限定的な特恵貿易圏」の創設を目指すものとされている。

また、4月1日には高市総理がマクロン仏大統領と会談し、日仏共同声明に署名。重要鉱物に関するロードマップの歓迎が盛り込まれる見通しだ。

アフリカにおける重要鉱物開発と各国の戦略

アフリカは、重要鉱物資源の宝庫として、グローバルなサプライチェーンにおいてその役割を増している。2026年3月23日、ナイジェリアの固体鉱物開発大臣は、過去2年半で26億ドル(約3,900億円)以上の外国直接投資(FDI)を同国の固体鉱物セクターに誘致したと発表した。これは、ティヌブ政権による鉱業改革が奏功した結果とされている。

コンゴ民主共和国(DRC)と中国は、2026年3月26日に鉱業分野の協力を深化させる協定に署名した。 DRCは近年、鉱物資源の管理強化や国営企業の関与拡大を通じて、資源ナショナリズムの傾向を強めている。 中国企業はアフリカの重要鉱物分野に広範に関与しており、2月には中国政府が国交のあるアフリカ53カ国に対し、100%の品目でゼロ関税措置を5月1日から実施すると表明し、アフリカから中国への重要鉱物の供給網強化を後押ししている。

日本政府もアフリカでの重要鉱物確保に動いており、2026年3月2日には、中国メディアが日本政府によるナミビアでの鉱山開発計画の表明を報じた。これは、中国によるレアアース輸出規制への対策として、2028年までに一部のレアアースの対中依存度をゼロにすることを目指す日本の戦略の一環とされている。 2月9日から12日まで開催された「アフリカン・マイニング・インダバ2026」には、日本から松尾剛彦経済産業審議官のほか、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などが参加し、アフリカ資源国の存在感の高まりを改めて示す場となった。 会議では、ザンビア大統領が鉱業セクターの透明性確保と銅生産目標を掲げ、DRC鉱山相は米国との重要鉱物枠組みが具体的案件に結び付かない場合には他のパートナーとも議論を進める可能性を示唆した。

ラテンアメリカおよびその他のグローバルサウス地域における重要鉱物動向

ラテンアメリカ地域でも重要鉱物を巡る動きが活発化している。2026年2月6日には、アルゼンチンと米国が重要鉱物協定に署名し、投資誘致と供給網強靭化を狙う姿勢を明確にした。 この協定は、アルゼンチン、クック諸島、エクアドルを含む11カ国と米国が締結した二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)の一部である。

オーストラリアもまた、重要鉱物供給網の強化において重要な役割を担っている。2026年3月23日には、日豪連携による重要鉱物供給網強化の動きが報じられた。 オーストラリアは資源が豊富で日本と関係が深く、有力なパートナー候補となり得るが、同国内の加工・精製能力に限りがあり、多くの重要鉱物を未加工のまま輸出している現状がある。 日本と連携して不足する工程を補完することで、相互にとって利益があるウィンウィンの関係構築が期待されている。

地政学的リスクと重要鉱物市場への影響

2026年3月、中東情勢の緊迫化は、グローバルサウスの重要鉱物市場および世界経済に深刻な影響を与えている。2月28日の米国によるイラン攻撃以降、中東情勢の緊迫化が原油価格の急騰を招き、世界経済に広範な影響を及ぼしている。 特に3月の新興国株式市場は、米国・イスラエルとイランの軍事衝突激化による原油価格急騰と世界的なインフレ・景気減速懸念を受け、月間で下落した。 米国の利下げ観測後退と米ドル高も、新興国株式市場にとってマイナス要因となっている。

この地政学的リスクの高まりは、グローバルサウスの投資環境にも影響を与えている。エネルギー輸入依存度の高い南アフリカ、インドネシア、ベトナム、インドといった国々は、より大きな経済的打撃を受ける可能性が指摘されている。 経済協力開発機構(OECD)が3月に公表した最新の見通しでは、イラン情勢の悪化により主要国のインフレ予測が大幅に引き上げられ、G20では4%と前回12月時点から1.2%高い水準となった。 世界経済の成長率見通しは据え置きとされたものの、エネルギー価格の急騰や紛争の不確実性により、今後の変動リスクが高まっている状況だ。 ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化すれば、肥料の供給にも支障が生じ、国際的な肥料価格は急上昇しており、食品価格の押し上げを招き、輸入頼みの国に打撃を及ぼす恐れがある。

Reference / エビデンス