北米連邦選挙に伴う経済・通商政策の変遷:2026年3月時点の動向と展望
2026年3月28日、北米大陸では連邦選挙、特に米国中間選挙を控え、経済・通商政策の不確実性が高まっている。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の見直し交渉も本格化しており、各国間の政策スタンスと経済的影響が注目される。特に、今週に入ってからの米国通商代表部(USTR)によるメキシコでの労働権侵害認定や、米国・メキシコ間の二国間協議の開始など、具体的な動きが活発化している。
米国中間選挙とトランプ政権の経済・通商政策の継続性
2026年11月に控える米国中間選挙は、トランプ政権の経済・通商政策の継続性に大きな影響を与えるものと見られている。足元の経済状況は不安定さを増しており、2025年第1四半期のGDP成長率はマイナスを記録した。また、2025年末時点では、トランプ政権が発動したIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税の合憲性が問われる状況にあり、今後の司法判断が注目されている。
金融政策の面では、2026年1月上旬に指名される連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任人事が市場の関心を集めている。トランプ大統領自身は、2026年中間選挙の政治的利益について「予測できない」と発言しており、政策の不確実性を一層高めている。さらに、共和党が下院の過半数を失う可能性も指摘されており、政権運営の難しさが増すことが予想される。
USMCA見直し交渉の進展と北米サプライチェーンへの影響
2026年7月に予定されているUSMCAの「6年目の見直し」交渉は、北米サプライチェーンに広範な影響を及ぼすことが確実視されている。今週、2026年3月16日の週には米国とメキシコ間で二国間協議が開始され、交渉が本格化した。メキシコ大統領は3月25日、「USMCA見直しが順調に進んでいる」と強調した。しかし、その翌日の3月26日には、米国USTRがメキシコの採掘施設における労働権侵害を認定したと発表しており、交渉の行方は依然として不透明だ。
今回の見直し交渉の主要な争点としては、中国からの迂回輸出阻止と原産地規則の強化が挙げられる。メキシコはすでに2026年度予算案で中国からの輸入品に関税を引き上げる動きを見せており、北米域内での中国製品排除の動きが加速している。このような動きは、メキシコに進出している日本企業にも大きな影響を与える可能性があり、サプライチェーンの再編を迫られる企業も出てくるだろう。
カナダの経済・通商政策と米国との関係
カナダでは、2025年4月28日の総選挙でカーニー首相率いる自由党が政権を維持した。これにより、カナダの経済・通商政策は一定の継続性が見込まれる。しかし、経済状況は楽観視できない。2025年第4四半期のGDPは年率0.6%減少しており、経済の回復が課題となっている。
一方で、ゴールドマン・サックスは2026年のカナダ経済見通しで、貿易緊張緩和による成長加速を予測している。これは、米国との関係改善への期待を反映しているものと考えられる。カーニー首相はトランプ米大統領との会談を通じて関係強化を図る一方で、「脱米国依存」の動きも模索しており、米国とのバランスの取れた関係構築を目指している。USMCA見直し交渉においても、カナダは自国の利益を最大限に確保するため、米国との交渉に臨むことになるだろう。
Reference / エビデンス
- 2026年の政治リスク 米中間選挙が焦点、限られるトランプ政権の切り札 野村證券・吉本元
- 不確実なトランプ米政権、2026年中間選挙で民主党勝利の可能性は - ジェトロ
- トランプ政権下で二極化する米国経済の展望 | MRIオピニオン(2026年1月号) | ナレッジ・コラム
- トランプ大統領、巨額投資の成果を強調も2026年中間選挙には不安示す「予測できない」
- 2026年3月の注目イベント 日米の金融政策に注目
- コラムVol.200 マネーライターの取材裏話――マネー誌に書かなかったこと&書けなかったこと:市場が注目する2026年の大イベント、アメリカ中間選挙とは?:三菱UFJ信託銀行
- 主要国経済Outlook 2026年3月号(No.472) - 大和総研
- メキシコと米国でUSMCAの見直しに関する2国間協議を行うことを公表 - ジェトロ
- トランプ新関税やUSMCA見直しの動きと日本企業の対応~その5 6つのUSMCA見直しのシナリオと日本企業の北米戦略~ - 一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI)
- 米・カナダ・メキシコ「USMCA見直し」協議は泥沼化!?北米サプライチェーンは維持も再編もいばらの道 - ダイヤモンド・オンライン
- 2026年USMCA「6年見直し」の深層。北米サプライチェーン再編の行方と各国の思惑
- USMCA「6年目の見直し」交渉が本格化。激化する中国排除の要求とメキシコ進出の日本企業に迫る決断 - 株式会社ロジスティック
- メキシコ、2026年度予算案で中国からの輸入品関税引き上げへ | ウレタン総合サイト|PU Portal
- 関税の不当な回避の取り締まりなど通商法の執行を強化する方針、2027会計年度米国予算教書
- メキシコ政府、USMCAの見直しの協議は順調だと強調 - ジェトロ
- 米USTR、メキシコの採掘施設での労働権侵害をUSMCAパネルが認定と発表 - ジェトロ
- World Trend Foresight - PwC
- カナダ総選挙、カーニー首相が勝利宣言、与党・自由党が政権維持 - ジェトロ
- 解説 カナダ下院総選挙:“51番目の州”への反発と経済危機の経験が導いた逆転勝利
- カナダGDP、第4四半期は年率0.6%減 予想下回る - ニューズウィーク
- ゴールドマン・サックス、カナダ2026年経済見通し:貿易緊張緩和で成長加速 - Investing.com
- 米・カナダ・メキシコ「USMCA見直し」協議は泥沼化!?北米サプライチェーンは維持も再編もいばらの道 - ダイヤモンド・オンライン