グローバルサウスの資源ナショナリズムと産油国の輸出戦略:2026年3月の地政学的変動と市場への影響

2026年3月28日、世界は中東情勢の緊迫化とそれに伴う原油市場の混乱、そしてグローバルサウスにおける資源ナショナリズムの台頭という、複数の地政学的変動の渦中にあります。特に、2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、中東情勢は急速に緊迫化し、世界のエネルギー供給網に深刻な影響を与えています。

中東情勢の緊迫化と原油市場への影響

2026年2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、中東情勢は極度に緊迫し、世界の原油市場に甚大な影響を及ぼしています。3月23日から27日の週には、国際的な原油価格は高騰し、WTI原油価格は概ね90ドル台、ブレント原油価格は100ドル台で推移しました。この価格高騰の背景には、世界の石油供給量の約20%が通過するホルムズ海峡が事実上封鎖されたことが挙げられます。これにより、国際的な石油供給に深刻な懸念が生じています。

このような状況を受け、各国は石油備蓄の放出に踏み切っています。日本は3月16日に民間備蓄15日分の放出を開始し、さらに3月26日からは国家備蓄45日分の放出を開始しました。これは、供給不安と価格高騰に対応するための緊急措置であり、国際エネルギー機関(IEA)の32加盟国が石油備蓄放出で合意した動きに沿ったものです。

OPECの生産戦略とグローバルサウスの産油国

中東情勢の緊迫化は、OPECの生産戦略にも大きな影響を与えています。2026年3月におけるOPECの原油生産量は日量730万バレル減少し、パンデミック発生以来の過去最低水準を記録しました。この大幅な減産の主な原因は、ホルムズ海峡での船舶輸送の混乱に加え、イラク、クウェート、サウジアラビア、UAEといった中東の主要輸出国グループによる減産です。特にイラクの2026年3月の平均生産量は約160万バレル/日と予測されており、2月の415万バレル/日から大幅に減少しています。

OPECは、2025年11月2日に決定し、12月1日に再確認された2026年1月から3月までの増産停止方針を維持していました。しかし、4月5日には、5月の日量20万6000バレル増産を決定しました。これは、ホルムズ海峡の再開を見越した戦略的な動きであると同時に、高騰する原油価格と供給不安に対する国際社会からの圧力に応えるものと見られています。

グローバルサウスにおける資源ナショナリズムの台頭と重要鉱物戦略

2026年3月、グローバルサウス諸国における資源ナショナリズムの動向は、国際的な重要鉱物資源のサプライチェーン再編と密接に絡み合っています。国連は3月5日、重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけ、安全保障理事会で議論を行いました。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、資源豊富な途上国が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増大させる可能性を指摘しています。

その具体例として、コンゴ民主共和国のコバルト加工が挙げられます。同国は2022年にコバルトの輸出額を約3倍の60億ドルに増加させました。これは、資源国が単なる原材料供給国から脱却し、自国での加工を通じて経済的価値を高めようとする動きの象徴と言えます。

また、重要鉱物資源を巡る国際競争は激化しており、日本もその例外ではありません。2026年3月2日には、中国メディアによって日本がナミビアでの鉱山開発計画を進めていることが報じられました。一方、サウジアラビアやUAEなどの湾岸諸国は、脱石油戦略の一環として、アフリカの鉱物資源への投資を積極的に拡大しており、グローバルサウスにおける資源獲得競争は新たな局面を迎えています。

新興国経済への影響と日本の対応

2026年3月の新興国株式市場は、米国・イスラエルとイランの軍事衝突激化による原油価格急騰と世界的なインフレ・景気減速懸念を受けて、月間で下落しました。特に、エネルギー輸入依存度の高い韓国、南アフリカ、インド、台湾といった国々は相対的に下落率が大きかった一方で、原油純輸出国であるブラジルは、原油価格の上昇を受けて主力のエネルギー企業の株価が上昇し、相対的に下落率が小幅にとどまりました。

日本国内では、2026年3月末に「ナフサ危機」と呼ばれる前例のない事態が発生しました。中東情勢の混乱によりナフサの物理的欠乏が生じ、石油化学メーカーは大規模な減産を余儀なくされました。この時期、ナフサマージンは通常時の100ドル/トンから400ドル/トンを超える異常値を記録し、国内産業に深刻な影響を与えています。

この危機的状況に対応するため、経済産業省は4月2日に「第1回中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」を開催し、今後の対応策について議論を進める予定です。グローバルな地政学的変動が、日本の産業経済に直接的な影響を及ぼしている現状が浮き彫りになっています。

Reference / エビデンス