東アジア:半導体サプライチェーンを巡る輸出管理の構造

グローバルな半導体サプライチェーンは、米国と中国間の地政学的緊張を背景に、大幅な再編の渦中にあります。特に先端半導体およびその製造装置に対する輸出管理は、日本、韓国、台湾といった東アジアの主要経済圏に多大な影響を与えています。これに対し、中国も独自の管理措置と半導体自給自足への取り組みを加速させています。本稿では、2026年3月28日時点の最新動向に焦点を当て、東アジアにおける半導体サプライチェーンに影響を与える輸出管理の現状、米国と中国が講じた措置、およびその他の東アジア諸国への影響と対応について詳細に分析します。

米国による対中半導体輸出管理の強化と東アジアへの影響

米国は、中国に対する半導体輸出管理の強化を継続しており、その動きは東アジアのサプライチェーンに大きな波紋を広げています。2026年4月2日には、米下院で人工知能(AI)半導体製造装置の対中輸出規制をさらに強化する超党派法案が提出される予定です。この法案は、日本やオランダなどの同盟国に対し、米国と同様の規制措置を講じるよう連携を要請する内容を含んでおり、これらの国の企業活動に影響を及ぼす可能性があります。

一方で、米国は2026年1月、NVIDIAのH200チップなど一部のAI半導体の対中輸出を条件付きで再開しました。この動きは、米中関係における「管理された相互依存」戦略の一環と分析されています。米国は、中国の技術的進歩を完全に阻止するのではなく、特定の分野での優位性を維持しつつ、経済的な結びつきを完全に断ち切らないというバランスの取れたアプローチを模索していると見られます。しかし、この戦略は、同盟国が米国の規制にどこまで追随すべきかという複雑な課題を提起しています。

中国の対抗措置とサプライチェーンの自給自足への動き

米国の輸出管理強化に対し、中国も対抗措置を講じ、半導体サプライチェーンの自給自足に向けた動きを加速させています。2026年1月6日、中国商務部は、日本向けデュアルユース品目(軍事転用可能な民生品)の輸出管理を強化する措置を発表しました。これは、特定の半導体材料や製造装置の輸出に影響を与える可能性があり、日中間の貿易関係に新たな緊張をもたらしています。

また、2026年3月31日に公表される予定の米通商代表部(USTR)による「2026年外国貿易障壁報告書(中国編)」では、中国のレアアース輸出管理強化が「武器化」であると批判される見込みです。同報告書は、中国がレガシー半導体(旧世代半導体)の過剰生産能力を抱えている点も指摘しており、これが国際市場に与える影響が懸念されています。

中国は、半導体分野でのキャッチアップを着実に進めており、2025年12月には極端紫外線(EUV)露光装置の試作に成功したとの報道もありました。これは、最先端半導体製造における重要な技術であり、中国が自国の半導体産業の強化に注力していることを示しています。しかし、その進捗状況や量産化への道のりは依然として不透明な部分も多く、今後の動向が注目されます。

東アジア主要国(日本・韓国・台湾)の対応とサプライチェーン再編

米中間の半導体覇権争いの中で、東アジアの主要国はそれぞれの立場から対応を迫られ、サプライチェーンの再編が進んでいます。

日本は、米国の同盟国として輸出管理体制の強化を進めています。経済産業省は2026年1月30日、「輸出貿易管理令の運用について」等の一部を改正する通達を発表し、日本の輸出管理体制の最新動向を示しました。これは、国際的な枠組みと連携しつつ、安全保障上の懸念に対応するための措置と考えられます。

韓国は、2023年7月に日本の「グループA(ホワイト国)」に復帰しました。この復帰は、2026年時点の半導体輸出管理において、日韓間の貿易手続きの円滑化に寄与し、両国間の半導体サプライチェーンにおける協力関係を強化する可能性があります。しかし、米中対立の狭間で、韓国もまた、米国の要請と中国市場への依存との間で難しい舵取りを迫られています。

台湾の半導体産業は、世界最大のファウンドリであるTSMCを擁し、グローバルサプライチェーンにおいて極めて重要な役割を担っています。米中対立の激化は、台湾の半導体産業に地政学的なリスクをもたらしており、サプライチェーンの分散化や国内生産能力の強化といった課題に直面しています。台湾は、米国の要請に応じつつも、中国市場との関係を維持するという複雑なバランスを模索しており、その動向は世界の半導体供給に直接的な影響を与えます。

Reference / エビデンス