グローバルサウスにおける資源ナショナリズムと投資環境の変動:2026年3月の動向

2026年3月26日、世界は中東情勢の緊迫化、グローバルサウス諸国における資源ナショナリズムの台頭、そしてこれらが引き起こすグローバル投資環境の不確実性という、複数の課題に直面している。特に、エネルギー資源の供給リスクと重要鉱物のサプライチェーンにおける各国の戦略が、国際経済の安定性を揺るがしている。

中東情勢の緊迫化とエネルギー資源の供給リスク

2026年3月24日から28日にかけて、中東情勢は一段と緊迫の度を増している。特に、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ国際物流の要衝であるホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥り、世界の原油供給に深刻な影響を与えている。米国エネルギー情報局(EIA)によると、2024年には世界の石油消費量の約20%に相当する日量約2,000万バレルの原油がホルムズ海峡を通過しており、その封鎖は世界経済に甚大な打撃を与える。現在、この海峡を通過できる船舶は1日あたりわずか5隻程度にまで減少しており、これはイラン側に多額の通行料を支払った船や、イランと友好関係にある国の船に限られているため、事実上の封鎖状態にあると言える。封鎖前には1日あたり約120隻のタンカーが通過していたことを考えると、その減少幅は極めて大きく、現在はほとんど通行できていない状況である。

この事態を受け、原油価格は高騰し、日本政府は3月26日、国家石油備蓄の放出を開始すると表明した。経済産業大臣は、5,100万バレル規模の放出に加え、補助金政策も実施することで、ガソリン価格の一時的な抑制を図るとしている。しかし、日本は原油の約94%を中東に依存しており、ホルムズ海峡経由が93%を占めるため、その影響は他国よりも大きく、早く出ると予想されている。住友商事グローバルリサーチは、3月27日に発表したレポートで、中東紛争による供給制約が長期化するとの見通しを示しており、原油価格のピークは3~5月と予想されている。原油価格が10%上昇すると、日本企業の純利益は1~2%減少すると見込まれており、ブレント原油の平均価格が120ドルを想定すると、TOPIXの予想EPSは5%程度の減益となる可能性がある。また、ナフサ(石油化学原料)、プラスチック、合成ゴムなどの石油由来製品にはすでに影響が出ており、医療分野にも波及している。

グローバルサウスにおける資源ナショナリズムの台頭と投資機会

中東情勢の緊迫化と並行して、グローバルサウス諸国では資源ナショナリズムの動きが活発化している。政権交代や政策変更が資源開発に与える影響は大きく、投資家はリスクと機会の両面を慎重に見極める必要がある。例えば、ナイジェリアの固体鉱物開発大臣は3月22日、過去2年半で26億ドル(約3,900億円)以上の外国直接投資(FDI)を同国の固体鉱物セクターに誘致したと発表した。これは、ティヌブ政権による鉱業改革、特にガバナンス強化、ライセンスのデジタル化、規制枠組みの改善、そして違法採掘者への厳格な取り締まりが奏功した結果とされている。ナイジェリアは、鉱物を現地で処理する計画を提示する企業にのみ採掘ライセンスを付与することを検討しており、単純な原材料輸出国からの転換を目指している。

一方、重要鉱物のサプライチェーンにおいては、ナショナリズムの高まりが顕著である。中国はレアアースの輸出管理を強化しており、3月31日時点でもその状況は継続している。2025年4月4日に施行された7種のレアアースに係る輸出管理強化以降、多くの日本企業が輸出許可申請の対応に追われている。中国税関総署が3月20日に公表したデータによると、1~2月のレアアース磁石の日本への輸出量は前年同期比9.5%増の約444トンだったものの、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁をきっかけに、中国政府は対日輸出規制の強化を発表しており、実態の評価は難しい状況にある。

これに対し、カナダ、メキシコ、ブラジルといった国々も重要鉱物戦略を推進している。3月上旬には、カナダ政府が重要鉱物分野で30件の新たなパートナーシップと12.1億カナダドル規模の資金動員を発表した。米国も2月4日に重要鉱物閣僚会合を初開催し、バンス副大統領が同盟国や友好国による「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案した。この貿易圏では、重要鉱物の最低価格を設定し、関税を用いて公正な市場価値を反映した市場を創出することを目指している。日本と米国は3月19日、重要鉱物の安定供給に向けた複数国間の貿易協定の具体化を進める行動計画を策定したと発表した。

グローバル投資環境における地政学リスクと政策の不確実性

2026年3月26日を挟む期間において、グローバルな地政学リスクは投資環境に大きな不確実性をもたらしている。東京海上ディーアール株式会社が1月29日に公開した「2026年のグローバルリスク」レポートでは、政権基盤の脆弱化が政策の一貫性や予見可能性を低下させる構造的なリスクとして継続すると指摘している。特に、議会の分断、世論の対立、選挙サイクルの短期化などにより、政策を安定的に実行する能力が制約される「不安定な政治」が、投資家にとってのリスク要因となっている。

また、世界経済フォーラムが1月14日に発表した「グローバルリスク報告書2026年版」では、地経学上の対立が2026年のグローバルリスクとして首位に浮上し、今後2年間の重要度において8ランク上昇したと報告されている。これには貿易、投資、サプライチェーン、天然資源へのアクセスに関する課題が含まれる。

米国におけるトランプ政権の動向も、グローバル投資環境に不確実性をもたらす要因の一つである。ジェトロが3月5日に発表したレポートでは、第2次トランプ政権下では石油・ガスを含む多様なエネルギーの開発や、これに関連する規制の見直し、グリーンニューディールの見直しなど、日系企業の米国でのビジネスにも影響を及ぼし得る様々な政策が実施される見込みであると指摘している。トランプ大統領は先月、連邦最高裁判所が「相互関税」などを違法と判断したことを受け、通商法122条を法的根拠として全世界に対して一律10%の追加関税を課し、さらに3月5日にはベッセント財務長官がこの関税を週内にも15%に引き上げる考えを示した。これに対し、ニューヨーク州やカリフォルニア州など24州が関税の差し止めなどを求めて提訴しており、トランプ政権の関税政策には逆風が吹いている。

経済安全保障の観点からも、グローバルサウスへの投資家は不確実性に直面している。東京海上ディーアール株式会社のレポートは、2026年には経済安全保障政策の大きな進展が見込まれ、改正経済安全保障推進法が多くの企業に影響を与えるだろうと述べている。特に、データセキュリティの強化、ITサプライチェーンのセキュリティ強化、外国の所有・支配・影響(FOCI)のリスク対策が焦点となる。経済産業省でも3月26日、「地政学リスクを踏まえた製造基盤強化等に関する検討会」が開催され、経済安全保障の強化に向けた議論が進められている。

Reference / エビデンス