グローバル:国際法人税ルールの策定と多国籍企業の動向
2026年3月25日、国際法人税制は歴史的な転換期を迎えています。OECD/G20が主導する「2本の柱」解決策、特にグローバル・ミニマム課税(第2の柱)の導入は、多国籍企業の税務戦略に大きな影響を与え続けています。各国での法制化と実務対応が加速する中、企業は新たな税務環境への適応を迫られています。
グローバル・ミニマム課税(第2の柱)の進展と各国の対応
グローバル・ミニマム課税(第2の柱)は、多国籍企業に対し各国ごとに最低15%以上の課税を確保する仕組みとして、国際課税システムの安定化を目指しています。2026年1月5日には、グローバル・ミニマム課税と、米国を含む独自のミニマム課税制度を有する国の制度との共存に関する国際合意が成立しました。この合意は、2025年6月にG7で合意された「Side-by-Side package」として公表され、特に米国を最終親会社とする企業グループを所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)の対象外とする「SbSセーフハーバー」制度が導入されています。
日本においては、この国際合意を踏まえ、2026年1月23日に「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定されました。 これにより、2026年度税制改正において、国際最低課税額に対する法人税および地方税(法人住民税)の見直しが行われることとなります。 具体的には、特定の要件を満たす国・地域に最終親会社等が所在する場合、グループ国際最低課税額をゼロとする適用免除基準が設けられます。
多国籍企業が直面する具体的な課題に対応するため、PwC Japanグループは2026年3月6日に「グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド」を発行しました。 このガイドは、2024年4月から日本で導入された国際最低課税額に対する法人税について、申告実務に携わる企業担当者向けに制度内容と対応ポイントを整理しており、申告までのスケジュールやルールの適用における検討事項、収集すべき情報などがコンパクトにまとめられています。
日本の2026年度税制改正と多国籍企業への影響
日本の2026年度税制改正大綱では、国際課税関連の主要な改正点が盛り込まれています。特に、外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しは、多国籍企業に大きな影響を与えるでしょう。 外国関係会社の2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるCFC税制の改正では、解散した部分対象外国関係会社に係る特例の創設、ペーパー・カンパニー特例に係る資産割合要件の見直し、および租税負担割合算定における最高税率の使用制限などが含まれています。
3月期決算を迎える企業にとって、これらの税制改正への対応は喫緊の課題です。EY税理士法人は2026年3月9日に「令和8年3月期法人税申告の留意事項」を発表し、リースに関する取扱い、中小企業関連、試験研究費の範囲、外国子会社合算税制、イノベーションボックス税制、外形標準課税など、税制改正により取扱いが変更となった主な項目について解説しています。 企業は、これらの最新情報を踏まえ、適切な税務戦略を立案し、コンプライアンス体制を強化する必要があります。
BEPS行動計画と各国の税務執行動向
OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)行動計画は、国際的な税源浸食と利益移転に対処するための取り組みとして、引き続き各国で進展を見せています。特にBEPS行動5(有害税制慣行)に関する同輩審査結果や、移転価格税制、迂回利益税(DPT)に関する各国の税務執行の動向は、多国籍企業にとって重要な監視対象です。
英国歳入関税庁(HMRC)は2026年3月11日、移転価格および迂回利益税(DPT)に関する2024-25年度の年次統計を発表しました。 この統計によると、移転価格による税収は33億8,700万ポンドと大幅に増加し、前年度からほぼ倍増しています。 これは、HMRCが移転価格調査において継続的に圧力をかけ、精査を強化していることを示唆しており、多国籍企業は移転価格およびDPTのリスク評価と、十分な文書化および堅牢なコンプライアンス体制の整備が不可欠です。
特定国の国際税制改革と多国籍企業への影響
特定の国における国際税制改革も、多国籍企業の事業活動に大きな影響を与えています。ナイジェリアでは、2026年1月1日に「2025年ナイジェリア税法」が施行されました。 この新税法は、ナイジェリアの税制を抜本的に見直し、歳入改善、コンプライアンス簡素化、行政の近代化を目指しています。 特に、外国企業向けの主要改正点として、法人所得税(CIT)、キャピタルゲイン税(CGT)、開発税の免除基準の変更、CGT税率の引き上げ、間接的なオフショア株式譲渡へのCGT適用、最低実効税率15%の導入、CFC(外国子会社合算税制)ルールの導入、恒久的施設(PE)の基準強化、引き寄せの原則の導入・拡充などが挙げられます。
ジェトロは、2026年3月31日に発表が予定されているレポートで、この2025年ナイジェリア税法における外国企業向けの主要改正点を概観・分析する予定です。 ナイジェリアで事業を展開する、またはナイジェリア市場向けに事業活動を行う外国企業および多国籍企業グループは、この新税法の細目を詳細に確認し、税務構造とコンプライアンスプロセスを見直す必要があります。
一方、イスラエルは2026年から、OECDの第二の柱原則に基づくグローバル最低税負制を導入する計画を発表しています。 このような各国の税制改革の動きは、多国籍企業がグローバルな事業展開において、常に最新の税務情報を把握し、機動的な対応を講じることの重要性を示しています。
Reference / エビデンス
- 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International
- グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ
- グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - 財務省
- 2026(R8)年度税制改正:グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - Deloitte
- 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte
- Global Anti-Base Erosion Model Rules (Pillar Two) - OECD
- Worldwide Tax Summary 2026年2月号 - PwC
- 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International
- 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte
- Revision of International Taxation [Explanation of the Outline of the FY2026 Tax Reform]
- 令和8年度税制改正大綱①:国際課税(グローバル・ミニマム課税、CFC税制、移転価格税制、物品に関するプラットフォーム課税) - 長島・大野・常松法律事務所
- 令和8年3月期法人税申告の留意事項 - EY
- 2026年度税制改正の大綱 速報 - PwC
- 2026年3月期の決算上の留意事項 -税務編- - YouTube
- 英国歳入関税庁、移転価格および迂回利益税に関する年次統計を発表 - EY
- Base erosion and profit shifting (BEPS) - OECD
- 國際稅務新知
- 税務局: 跨國企業集團的全球最低税和香港最低補足税
- 2025年ナイジェリア税法 外国企業向けの主要改正点(2026年3月) | 調査レポート - ジェトロ
- イスラエル財政部宣布將從2026年起、依照OECD國際稅制改革原則第二支柱、對跨國公司實施全球最低稅負制