日本:2026年度資産課税および相続税制改正の政治的推移と主要変更点

2026年3月24日、日本の税制は歴史的な転換点を迎えています。本日、国会では「令和8年度税制改正法案」の審議が大詰めを迎えており、特に資産課税および相続税制に関する主要な改正点が、富裕層の資産承継や事業承継に大きな影響を与えるものとして注目されています。衆議院では既に3月23日に可決され、現在は参議院での審議が進行中です。この法案は、3月31日までの可決・成立、そして原則として4月1日の施行が見込まれています。

2026年度税制改正大綱の決定と政治的背景

2026年度税制改正の議論は、2025年11月13日に自民党税制調査会(税調)の「インナー」と呼ばれる幹部会合で本格的に始まりました。 小野寺五典税制調査会長は「国民目線で、国民に開かれた税調の姿を実現する」と述べ、国民目線の議論を展開する決意を示しました。 その後、与党である自由民主党と日本維新の会は、2025年12月19日に「令和8年度与党税制改正大綱」を決定しました。 この大綱は、物価高への対応と「強い経済」の実現を基本方針としつつ、税負担の公平性確保の観点から、富裕層への課税強化の方向性が明確に打ち出されています。

貸付用不動産および不動産小口化商品の評価方法見直し

今回の税制改正では、相続税対策として利用されてきた貸付用不動産および不動産小口化商品の評価方法が大きく見直されます。特に注目されるのは「5年ルール」の導入です。これは、相続開始前5年以内に取得または新築した貸付用不動産について、原則として「通常の取引価額(時価)」をベースに評価するというものです。 これまでの相続税評価では、路線価や固定資産税評価額を基に計算され、市場価格よりも低くなるケースが多く、この乖離を利用した節税策が問題視されていました。 新しいルールでは、取得価額を基に地価の変動等を考慮した価額の80%相当額での評価も認められるものの、従来の通達評価に比べ評価額は大幅に上昇すると見られています。 この改正は、2027年1月1日以降に発生する相続・贈与から適用されます。 また、不動産小口化商品については、取得時期を問わず、常に「通常の取引価額」で評価されることになり、過去に節税目的で購入した商品も影響を受ける可能性があります。

教育資金の一括贈与に係る非課税措置の終了

祖父母から孫などへ教育資金を最大1,500万円まで非課税で贈与できる「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、2026年3月31日をもって終了することが決定しました。 この制度は、2013年度の税制改正で導入され、若年世代への資産移転を促す目的がありましたが、利用件数の減少や高額所得者による利用が集中し、経済格差の固定化を招いているとの懸念が廃止の背景にあります。 制度終了後は、教育資金の贈与について、都度贈与や暦年贈与、あるいは未成年者向けNISAの活用などが代替策として検討されることになります。 なお、2026年3月31日までに信託等で拠出された金銭については、廃止後も引き続き非課税の適用を受けることができますが、使い切れない場合の課税には注意が必要です。

事業承継税制の特例措置の延長

中小企業の円滑な事業承継を支援するため、事業承継税制における特例承継計画および個人事業承継計画の提出期限が延長されます。法人版事業承継税制(特例措置)の特例承継計画の提出期限は、2026年3月31日から1年6か月延長され、2027年9月30日までとなります。 また、個人版事業承継税制における個人事業承継計画の提出期限は、2026年3月31日から2年6か月延長され、2028年9月30日までとなります。 この延長は、経営者の高齢化が進む中で、より多くの事業者が制度を活用し、円滑な世代交代を通じて生産性向上を図ることを目的としています。 ただし、計画提出期限は延長されるものの、制度の適用期限自体は延長されない見込みであるため、早期の計画策定と実行が引き続き重要となります。

超富裕層への課税強化と公平性の確保

税負担の公平性を確保する観点から、2026年度税制改正では超富裕層への課税強化策が盛り込まれました。特に、年間所得が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」を是正するため、「ミニマム課税」(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)が見直されます。 2027年分の所得から適用されるこの改正では、追加の税負担を計算する基礎となる基準所得金額から控除する特別控除額が、現行の3億3,000万円から1億6,500万円に引き下げられます。 また、対象者への適用税率も、現行の22.5%から30%に引き上げられます。 これにより、これまでミニマム課税の対象外だった所得層も新たに課税強化の対象となり、特に株式譲渡所得など分離課税の所得割合が高い富裕層に大きな影響が出ると予想されています。

2026年度税制改正法案の国会審議と成立

「令和8年度税制改正法案」は、2026年2月20日に閣議決定され、同日国会に提出されました。 衆議院での審議を経て、3月23日には衆議院本会議で賛成多数により可決され、参議院へ送られました。 現在、参議院で審議が進行中であり、3月31日には参議院本会議で可決・成立する見通しです。 成立した税制改正法は、原則として2026年4月1日から施行されることになります。

Reference / エビデンス