グローバルサウス:重要鉱物資源の権益争奪と国家間の連携
2026年3月23日、世界は電気自動車(EV)や再生可能エネルギー技術の急速な普及に伴い、リチウム、コバルト、ニッケルといった重要鉱物資源を巡る熾烈な権益争奪戦の渦中にあります。これらの資源を豊富に擁するグローバルサウス諸国は、国際的なサプライチェーンにおける戦略的要衝としてその存在感を高め、自国の経済発展と付加価値化を強く志向しています。主要消費国は供給網の安定化と特定の国への依存度低減を目指し、グローバルサウス諸国との連携強化を急ぐ一方、資源国側は資源ナショナリズムを背景に、国内での加工・精製による公平な利益配分を強く求めています。この複雑な国際情勢は、持続可能な資源開発と新たな国際協力の枠組みの構築を喫緊の課題として浮上させています。
グローバルサウスにおける重要鉱物資源の戦略的価値の高まり
重要鉱物資源の戦略的価値は、エネルギー転換の加速とともに飛躍的に高まっています。2026年3月5日、国連は安全保障理事会で「エネルギー、重要鉱物、安全保障」について議論し、重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけました。国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、リチウム需要は2024年に約30%増加し、ニッケル、コバルト、グラファイト、レアアースもそれぞれ6~8%増加しました。これらの資源は、EVバッテリーや風力タービン、太陽光パネルといったクリーンエネルギー技術に不可欠であり、エネルギー転換の鍵を握る存在です。
グローバルサウス諸国は、これらの重要鉱物資源の主要な供給源であり、その戦略的価値は計り知れません。米国は、サプライチェーンの脆弱性に対処するため、グローバルサウス諸国とのパートナーシップを強化する動きを加速させています。これは、特定の国に偏重した供給網のリスクを分散し、安定的な資源確保を目指す国際的な潮流を明確に示しています。
主要国による権益確保の動きと連携戦略
主要国は、重要鉱物資源の安定供給を確保するため、多角的な連携戦略を展開しています。米国は2026年2月4日に「2026年重要鉱物閣僚会合」を主催し、54カ国および欧州委員会の代表を招集しました。この会合では、アルゼンチンやモロッコを含む11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結し、供給網の強靱化に向けた具体的な歩みを進めています。
日本と米国も連携を強化しており、2026年3月18日には「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました。これにより、複数国間の貿易イニシアティブの具体化を進めることで合意し、さらに2026年3月22日にはレアアース・重要鉱物分野での連携拡大と供給網強靱化の加速を確認しました。
欧州連合(EU)も、メルコスールとの協定を通じて南米の重要鉱物資源確保を目指す動きを見せています。一方、中国は南米やアフリカにおいて、インフラ・エネルギープロジェクトへの資金提供を通じて、長期的な資源アクセスを確保する戦略を継続しており、多角的な権益争奪の様相を呈しています。
グローバルサウス各国の資源ナショナリズムと国内付加価値化の推進
グローバルサウス諸国は、単なる未加工資源の輸出国に留まらず、国内での加工・精製による付加価値化を強く推進しています。2026年3月23日、伊藤忠商事とJOGMECは、南アフリカのプラチナグループメタル(PGM)鉱山であるプラットリーフ鉱山拡張プロジェクトへの追加投資を発表しました。これは、資源国における国内加工能力の強化に向けた国際協力の一例と言えます。
ナイジェリアは、過去2年半で26億ドル以上の外国直接投資(FDI)を固体鉱物セクターに誘致したと2026年3月22日に発表し、資源開発における自国の主導権を強化する姿勢を示しています。インドネシアは、ニッケル鉱石の生産目標を2025年の3億7900万トンから2026年には約2億5000万トンに削減する計画を発表しており、これは国内での精錬・加工を促し、付加価値を高めるための戦略的な動きと見られます。また、インドネシアはレアアース国家戦略を本格化させ、2030年までに約74億2,000万ドル規模の産業体系構築を目指しており、資源ナショナリズムと国内付加価値化の推進を明確に打ち出しています。
持続可能な資源開発と公平な利益配分への国際的要請
重要鉱物資源を巡る国際競争が激化する中で、持続可能な資源開発と公平な利益配分への国際的な要請が高まっています。国連は2026年3月5日に重要鉱物資源を巡る国際競争における公平性を呼びかけ、安全保障理事会で議論を行いました。さらに、2025年6月には「エネルギー転換重要鉱物に関する行動指針」を発表し、人権、環境保護、公平な開発を推進する措置を提案しています。
国連貿易開発会議(UNCTAD)は、グローバルサウス諸国が未加工の鉱物輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的利益を大幅に増やせる可能性を指摘しています。その具体的な事例として、コンゴ民主共和国のコバルト加工は、2022年に輸出額を約3倍の60億ドルに増加させました。これは、資源国が直面する課題と同時に、国内での付加価値化を通じて経済的自立を達成する大きな機会があることを示唆しています。国際社会は、資源国の開発ニーズと環境・社会的な持続可能性を両立させる新たな枠組みの構築が求められています。
Reference / エビデンス
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News
- US Pursuit Critical Minerals Global South Impact March 2026 - The Green Blueprint
- US Pursuit Critical Minerals Global South Impact March 2026 - The Green Blueprint
- What does the US pursuit of critical minerals mean for the Global South? | Dialogue Earth
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- U.S. Eyes South America's Critical Minerals - Industrial Info Resources
- The EU-Mercosur agreement could tap a new source of critical minerals for the West | PIIE
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省
- 重要鉱物、複数国貿易協定へ協議=対米投融資 - リスク対策.com
- 米国務省、重要鉱物閣僚会合を初開催、バンス副大統領が重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案
- 日米、レアアース・重要鉱物で連携拡大 供給網強靱化を加速 - レアリサ
- アルゼンチン=米国と重要鉱物で協定署名=投資誘致と供給網強靭化狙う - ブラジル日報
- 【2026年3月24日】アフリカ関連重要ニュース|コーヒーと万年筆 - note
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- インドネシア、レアアース国家戦略を本格化 - レアリサ
- 「マイニング・インダバ2026」開催、アフリカ資源国の存在感高まる(コンゴ民主共和国 - ジェトロ
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- インドネシア:インドネシア石炭業界、政府による石炭生産削減の基準透明化を要求
- グローバルサウスの重要鉱物争奪と国家戦略:供給網再編の最新動向 - Vantage Politics
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News
- AFRICA REDEFINING CRITICAL MINERALS FOR A SHARED FUTURE - United Nations University