日本:2026年度税制改正における資産課税および相続税制改正の政治的推移

2026年3月22日、日本における資産課税および相続税制改正は、国会審議を経てその全容が固まりつつあります。昨年12月に公表・閣議決定された2026年度税制改正大綱は、富裕層の資産移転戦略に大きな影響を与える多岐にわたる変更を導入しました。特に、2026年3月31日に期限を迎える教育資金一括贈与の非課税措置の終了は、期限直前の駆け込み需要を喚起し、社会的な注目を集めています。

2026年度税制改正大綱の概要と政治的背景

2025年12月19日、与党である自由民主党と日本維新の会は、2026年度税制改正大綱を公表しました。その後、同年12月26日には閣議決定され、国会での審議を経て、現在その内容が具体化しています。今回の税制改正は、「強い経済」の実現に向けた決断と実行を掲げ、資産課税および相続税制においても重要な見直しが盛り込まれました。

資産課税・相続税制改正が議論された背景には、富裕層への課税強化を通じた格差是正、そして中小企業の円滑な事業承継支援といった複数の政治的意図が存在します。特に、近年の資産価格の上昇や、一部の富裕層への資産集中に対する社会的な関心の高まりが、今回の改正の大きな原動力となりました。

相続税・贈与税制の主要改正点と富裕層への影響

今回の税制改正では、相続税・贈与税制において複数の重要な改正点が導入されました。富裕層の資産形成や相続・贈与戦略に直接的な影響を与える主な変更点は以下の通りです。

まず、貸付用不動産および不動産小口化商品の評価方法が見直されます。具体的には、取得後5年以内に相続または贈与された場合、通常の取引価格で評価されることになります。この改正は、2027年1月1日以降に取得される不動産等に適用される予定です。 これにより、相続税対策として不動産を活用してきた富裕層は、より慎重な資産計画が求められることになります。特に、相続直前の駆け込み購入による節税効果は大幅に限定される見込みです。

次に、超高所得者へのミニマム課税が強化されます。特別控除額の引き下げや税率の引き上げが検討されており、2027年分の所得から適用される予定です。 これは、所得再分配機能の強化を目指す政府の姿勢を反映したものであり、高額所得者層の税負担が増加することになります。

さらに、ふるさと納税の寄附金税額控除限度額も見直されます。この改正は2028年分以降の寄附に適用される予定であり、富裕層によるふるさと納税を通じた節税効果にも影響を与える可能性があります。

これらの改正は、富裕層の資産移転や相続・贈与の計画に大きな再考を促すものであり、専門家は早期の対策を呼びかけています。

教育資金一括贈与の非課税措置の終了と期限直前の動向

2026年3月31日に適用期限を迎える教育資金一括贈与の非課税措置は、延長されることなく終了することが決定しました。この制度は、祖父母などから孫への教育資金の一括贈与について、最大1,500万円までを非課税とするもので、富裕層の資産移転対策として広く活用されてきました。

制度終了の背景には、富裕層への資産移転を促進しすぎるとの批判や、制度の利用状況が一部の富裕層に偏っているとの指摘がありました。

2026年3月22日現在、制度終了まで残り9日となり、金融機関や税理士事務所では、この制度を活用しようとする駆け込み需要がピークを迎えています。特に、期限直前の3月30日、31日には、多くの家庭が手続きを完了させようと動き、相談窓口は連日混雑している状況です。制度活用を促すセミナーなども開催され、最後の機会を逃すまいとする動きが活発化しています。

制度終了後の代替策としては、暦年贈与の活用や、生命保険を活用した教育資金の準備などが議論されていますが、非課税枠の大きさや使い勝手の面で、教育資金一括贈与の非課税措置に代わる決定的な制度は見当たらないのが現状です。

事業承継税制の特例措置延長と今後の展望

中小企業の円滑な事業承継を支援するため、法人版および個人版事業承継税制における特例承継計画の提出期限が延長されました。具体的には、非上場株式等に係る特例承継計画の提出期限が1年6ヶ月、個人事業用資産に係る特例承継計画の提出期限が2年6ヶ月延長されます。

この延長措置は、後継者不足や事業承継の準備に時間を要する中小企業にとって、大きな猶予期間を与えるものとなります。これにより、より多くの企業が特例措置の適用を受け、円滑な事業承継を進めることが期待されます。

今後の税制改正においては、資産課税・相続税制のさらなる見直しに関する政治的議論が継続される見込みです。政府は「強い経済」の実現と格差是正を両立させるため、富裕層への課税強化と同時に、経済成長を阻害しないようなバランスの取れた税制改革を模索していくことになります。事業承継税制の特例措置延長は、その中で中小企業の活力を維持しようとする政府の意図が反映されたものと言えるでしょう。

Reference / エビデンス