グローバルサウスにおける政権交代に伴う資源国有化と投資環境の動向(2026年3月15日時点)

2026年3月15日、グローバルサウス地域では、政権交代や政策変更が資源国有化の動きと投資環境に複雑な影響を与えています。特に、電気自動車(EV)バッテリーや電子機器に不可欠な重要鉱物資源を巡る各国の政策動向、外国直接投資(FDI)の誘致・規制、および地政学的競争の激化が注目されています。コンゴ民主共和国(DRC)におけるコバルト輸出規制強化の動きや、ナイジェリアの鉱業改革によるFDI誘致成功事例など、具体的なニュースを基に現状を多角的に分析します。

グローバルサウスにおける資源ナショナリズムの台頭と政策動向

グローバルサウス各国では、自国の資源に対する国家管理を強化し、国内での付加価値化を促進する「資源ナショナリズム」の動きが顕著になっています。特に、世界のコバルト供給の約7割を占めるコンゴ民主共和国(DRC)では、コバルト輸出に関して新たな規制「Circular No. 001/2026」が導入され、事実上の輸出停止状態にあると報じられています。この規制は、輸出時に提出される複数の研究所の分析結果間の許容誤差を±2%に設定し、これを超える場合は参照テストを義務付けるもので、金属含有量の検出偏差に関する管理を強化する目的で実施されました。国境職員は、鉱業大臣が新規則の適用方法を定めた行政指示に署名するまで、輸出書類の処理を保留していると伝えられています。

この措置は、DRC政府がコバルトの国内付加価値化を推進し、より多くの収益を確保しようとする強い意図の表れと見られます。国際市場では、電気自動車(EV)バッテリーや電子機器に不可欠なコバルトの供給網に深刻な混乱が生じる可能性があり、日本企業も生産コストの上昇やサプライチェーンの不安定化に直面する恐れがあります。

アフリカ全体でも、鉱業政策改革の動きが加速しています。各国政府は、資源の国内加工を義務付けたり、国営企業による権益保有比率を高めたりするなど、資源から得られる利益を最大化しようとしています。これは、アフリカが抱える1.6兆ドルもの開発資金不足を補うため、鉱物資源からの歳入を増やす狙いがあると考えられます。

政権交代と投資環境の変化:誘致と規制の二面性

グローバルサウスにおける政権交代は、投資環境に誘致と規制という二面性をもたらしています。ナイジェリアは、鉱業改革を通じて外国直接投資(FDI)の誘致に成功した好事例として注目されています。ナイジェリアの固体鉱物開発大臣は、過去2年半で26億ドル(約3,900億円)以上のFDIを固体鉱物セクターに誘致したと発表しました。これは、ティヌブ政権によるガバナンス強化、ライセンスのデジタル化、規制枠組みの改善、そして違法採掘者への厳格な取り締まりが奏功した結果とされています。ナイジェリア政府は、輸入鉱業設備への税制優遇措置や、ロイヤルティと税金支払い後の利益の完全な本国送金を保証することで、投資家を積極的に誘致しています。

一方で、DRCのコバルト輸出規制のように、資源管理強化が一時的に投資の不確実性を高める可能性も指摘されています。DRCは2025年2月にコバルトの輸出禁止措置を導入し、その後輸出割当制度を導入しましたが、規制の実施には混乱が生じていました。今回の新たな規制は、さらなる管理強化を目指すものですが、国際的なサプライヤーにとっては予見可能性の低下につながる恐れがあります。

アフリカ全体の鉱業セクターでは、政策シフトと投資増加の傾向が見られます。各国政府は、投資誘致と資源保護のバランスを取りながら、持続可能な開発を目指しています。例えば、南アフリカでは、インフラ投資促進のための「信用保証ビークル(CGV)」を設立し、民間投資を呼び込むことで、電力伝送網などの大規模プロジェクトにおける投資リスクを低減しようとしています。

重要鉱物資源を巡る地政学的競争とサプライチェーンの再編

グローバルサウスの重要鉱物資源を巡る米中間の地政学的競争は激化の一途をたどっています。特にアフリカでは、銅、コバルト、リチウムなどの上流権益獲得競争や加工強化の動きが活発です。中国企業は、DRCのテンケ・フングルメ鉱山やカモア・カクラ鉱山を掌握するなど、広範な投資を通じて優位性を維持しています。

これに対し米国は、オフテイク契約や政府支援資金を活用し、アフリカ鉱物を巡る中国の支配に対抗しています。DRCの国営鉱山会社ジェカミンは、テンケ・フングルメ鉱山の割当銅約10万トンを米国向けに出荷する予定であり、米国はマーキュリア社との枠組みやDRCとの協力強化を通じて、鉱物を中国主導の精錬網から米国系バリューチェーンへ振り向けようとしています。また、米国はDRCの鉱山会社シェマフ(Chemaf)の株式取得契約を承認するなど、具体的な動きを見せています。

資源安全保障確保に向けた先進国の対応も進んでいます。2026年3月14日、日本と米国は南鳥島周辺のレアアース泥開発で協力に合意しました。これは、中国が世界のレアアース生産量の大半を握る中で、日米がレアアース確保を喫緊の課題と捉え、供給網の多様化と強靭化を目指すものです。日米首脳会談では、レアアースに関する「最低価格制度」の導入に向けた協議も行われる見通しです。この動きは、グローバルなサプライチェーン再編の加速を示唆しており、重要鉱物資源を巡る国際的な枠組みが大きく変化する可能性があります。

新興国市場の動向と投資家心理への影響

2026年3月の新興国株式市場は、中東情勢の緊迫化による原油価格高騰や世界的なインフレ懸念が投資家心理に大きな影響を与え、月間で下落となりました。米国とイスラエルがイランを攻撃したことや、その後のイランによる報復攻撃、ホルムズ海峡の事実上の封鎖などを受け、原油価格が急騰し、世界的なインフレや景気減速懸念が高まりました。

また、インフレ懸念の高まりから米国の利下げ観測が後退し、米長期金利が上昇したことや米ドル高が進行したことは、新興国株式市場にとってマイナス要因となりました。これにより、新興国市場全体でリスクオフの動きが強まり、エネルギーセクター以外は軒並み下落しました。特に、不動産、情報技術、素材セクターの下落率が大きくなっています。

ラテンアメリカ諸国では、ブラジルやメキシコが注目されます。ブラジルでは、産業信頼感が3月に低下し、高金利政策が成長を抑制すると見込まれています。10月の大統領選挙に向けた追加の財政政策や不透明感も、投資環境のかく乱要因となる可能性があります。メキシコ経済は、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)見直しの不透明感で民間投資が抑制されやすい状況が続いていますが、米国向け輸出は拡大を続けています。メキシコ銀行は2月の金融政策決定会合で政策金利を据え置いたものの、今後の追加利下げに含みを持たせており、インフレ圧力の持続を見ながら慎重に利下げを検討するでしょう。

Reference / エビデンス