グローバルサウスの重要鉱物資源:権益争奪と国家間連携の最前線(2026年3月15日)
2026年3月15日、世界は重要鉱物資源を巡る熾烈な権益争奪戦の最中にあり、特にグローバルサウス諸国がその主戦場となっている。資源確保を目指す先進国と、付加価値向上を目指す生産国双方の戦略的動きが活発化し、国家間の連携も新たな局面を迎えている。本稿では、この数週間に報じられた具体的な動き、政策発表、市場動向を基に、最新の地政学的・経済的影響を報告する。
日米連携による重要鉱物サプライチェーン強化の動き
日米両政府は、来たる3月19日から20日にかけて、重要鉱物サプライチェーン強化のための共同プロジェクトと行動計画を発表する予定であると報じられている。この計画には、三菱マテリアルが検討しているレアアースのリサイクル事業や、三菱商事が出資するアリゾナ州の銅鉱山など、13のプロジェクトが候補に挙がっているという。また、南鳥島周辺海域の深海鉱物資源開発に関する協力覚書も締結される見込みだ。日米首脳会談では、中国を念頭に置いた最低取引価格導入を含む貿易政策の検討についても合意されたとされ、両国が経済安全保障の観点から重要鉱物サプライチェーンの強靭化を急ぐ姿勢が鮮明になっている。
グローバルサウス主要生産国の戦略:DRCとブラジルの動向
グローバルサウスの主要生産国も、自国の利益最大化に向けた戦略を加速させている。コンゴ民主共和国(DRC)は、3月26日に中国との間で鉱業分野協力深化協定を署名する予定だ。この協定は、DRCが豊富なコバルトや銅などの重要鉱物資源を保有する中で、中国との関係を一層強化し、資源開発における協力関係を深めるものと見られる。
一方、ブラジルは3月初旬にカナダ・トロントで開催されたPDAC 2026を機に、総額約55億ドル規模の重要鉱物プロジェクト投資誘致計画を発表した。この計画は、国内での加工・精錬による付加価値創出を軸としており、単なる資源輸出に留まらない経済的リターンの最大化を目指すブラジルの強い意志を示している。
コバルト市場では、2025年10月のDRCによる輸出割当開始から半年近くが経過した3月23日時点でも、市場の膠着状況が続いている。電気自動車(EV)販売の低迷を背景とした電池向け需要の縮小への懸念が、市場の不透明感を増幅させている状況だ。
国際機関が警鐘を鳴らす資源ナショナリズムと開発機会
国際社会も重要鉱物資源を巡る動向に強い関心を示している。国連貿易開発会議(UNCTAD)は3月5日に発表した報告書で、重要鉱物需要の急増が資源豊富な開発途上国に「大きな開発機会」をもたらすと強調した。特に、現地加工による経済的リターン増加の可能性を指摘しており、コンゴ民主共和国におけるコバルト加工が2022年に輸出額を1億6,700万ドルから60億ドルにほぼ3倍に増加させた事例を挙げている。
同日、国連安全保障理事会では「エネルギー、重要鉱物、安全保障」が議論され、国際社会が重要鉱物資源の安定供給と公平な開発に高い関心を寄せていることが具体的に示された。
主要消費国による新たな資源確保戦略とグローバルサウスへの影響
主要消費国は、グローバルサウスからの資源確保を加速させるため、新たな戦略を打ち出している。2月4日に米国で開催された重要鉱物閣僚会合では、「Forum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE)」の設立が発表された。また、アルゼンチン、クック諸島、エクアドル、ギニア、モロッコ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、アラブ首長国連邦、ウズベキスタンを含む複数の国々との間で二国間協定が締結された。
さらに、J.D.バンス米副大統領は、生産の各段階で最低価格を設定する「重要鉱物特恵貿易圏」の構想を提案している。トランプ大統領も、100億ドル規模の国内戦略備蓄計画「プロジェクト・ヴォールト」を発表しており、米国が重要鉱物資源の安定確保に向けて多角的なアプローチを強化していることが明らかになっている。
Reference / エビデンス
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News
- 2026 Critical Minerals Ministerial - U.S. Mission to ASEAN
- 重要鉱物の共同プロジェクトを発表 日米両政府 レアアースリサイクルや銅鉱山が候補に - KFB福島放送
- 重要鉱物=55億ドル規模の投資誘致=国内加工・精錬で付加価値創出へ - ブラジル日報
- ザンビア、DRC、ジンバブエ重要鉱物(1)表面化する米中対立 | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - ジェトロ