Pillar Twoグローバルミニマム税の最新動向:国際法人税改革と多国籍企業の複雑な課題
国際法人税ルール導入の進展と多国籍企業の課題:OECDビジネス諮問委員会の提言
OECD/G20が主導する国際法人税ルール、特にPillar Two(グローバルミニマム税)の導入は、多国籍企業に大きな影響を与えています。2026年3月13日、OECDのビジネスステークホルダーグループであるOECDビジネス諮問委員会(BIAC)は、法人利益に対する15%のグローバルミニマム税の円滑な適用を確実にするため、準備計画の継続的な改善を呼びかけました。この呼びかけは、複雑な制度導入と実務上の課題に直面する多国籍企業の現状を浮き彫りにしています。
米国の「Side-by-Side」合意:国際税制における特例と各国の対応
OECD中央記録において適格要件を満たす唯一の国である米国は、OECDの「Side-by-Side」合意に基づき、独自の特例が認められています。この合意により、米国に本社を置く多国籍企業は、特定の外国税から免除され、OECDの枠組み内で交渉された15%のグローバルミニマム税の対象外となります。2026年3月13日のレポートでは、グローバルミニマム税申告において、米国企業が適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)についてのみ申告を行うことが明記される予定です。米国は「Side-by-Side」合意の下で、グローバルミニマム税から親会社を保護する最終親会社セーフハーバーの適用を受けています。2026年1月5日、OECDはグローバルミニマム課税のSide-by-Sideシステムに関する包括パッケージを公表し、米国を最終親会社とする企業グループを所得合算ルール(IIR)と軽課税所得ルール(UTPR)の対象外とするSide-by-Side Systemを含め、新たなセーフハーバーの導入を示しました。これを受けて、日本では2026年1月23日に「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定され、国際課税システムの安定化等の観点から、2026年度税制改正において、Side-by-Sideパッケージの側面を国内のグローバルミニマム税制度に組み込むべく見直しが進められています。
Pillar Twoのグローバルな導入状況と多国籍企業のコンプライアンス
2026年時点で、EU加盟国、英国、日本、韓国、カナダ、オーストラリア、スイス、シンガポールを含む60カ国以上がGloBEルールを制定または暫定的に適用しています。多国籍企業は、GloBE情報申告(GIR)の提出など、新たなコンプライアンス課題に直面しています。最初の移行年度(FY2024)のGIR提出期限は2026年6月30日とされており、QDMTTへの対応も急務となっています。一方で、制度の簡素化に向けた取り組みも進められています。OECDは2026年1月5日に発表した執行ガイダンスパッケージにおいて、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバーの導入を決定しました。また、移行期間CbCRセーフハーバーは1年延長され、2027年12月31日以前に開始する会計年度まで適用されることが決定されています。
国際法人税ルールの今後の展望と税務政策研究者への示唆
Pillar Twoの導入は、国際税制に継続的な調整と簡素化の取り組みを促しており、OECDによって様々なガイダンスが公表されています。例えば、オーストラリアでは2026年3月13日にPillar Two規則のさらなる改正に関する協議が終了し、フランスでは2025年12月31日以降に終了する会計年度に適用される2026年財政法が2月に採択されました。日本では2026年度税制改正でグローバルミニマム課税制度の見直しが継続され、国際合意を踏まえた措置として、国際最低課税額に対する法人税(IIR)などが見直され、新たな適用免除基準の創設などが予定されています。このような各国の対応の多様性と制度の複雑性は、税務政策研究者にとって、多国籍企業が直面するコンプライアンスと戦略的計画における課題を深く探求する重要な研究テーマであり続けることを示唆しています。
Reference / エビデンス
- International Tax News - PwC オーストラリアでは、Pillar Two規則のさらなる改正に関する協議が2026年3月13日に終了した。フランスでは、2025年12月31日以降に終了する会計年度に適用される2026年財政法が2月に採択された。
- OECD Business Group Calls For Further Pillar 2 Planning 2026年3月13日、OECDのビジネスステークホルダーグループは、法人利益に対する15%のグローバルミニマム税の円滑な適用を確実にするため、Pillar Twoの準備計画の「継続的な改善」を呼びかけた。
- OECD finalizes agreement on global minimum tax exemption for US multinational corporations - TTWTO VCCI 米国および100カ国以上が、米国企業を特定の外国税から免除する合意を正式に締結した。この合意に基づき、米国に本社を置く多国籍企業は、OECDの枠組み内で交渉された15%のグローバルミニマム税から免除される。
- How US multinationals escaped the global minimum corporate tax | PIIE Pillar Twoとして知られる15%の最低法人税率は、米国多国籍企業の海外子会社には適用されなくなった。
- oecdpillars.com – Independent Insights and Analysis on the OECD Two Pillars Solution 2026年3月31日、日本は2026年度税制改正を制定し、2026年1月のOECD Side-by-Sideパッケージの側面を日本のグローバルミニマム税制度に組み込んだ。
- Pillar Two Global Minimum Tax: OECD 2026 Update & GIR Deadlines 2026年時点で、EU加盟国、英国、日本、韓国、カナダ、オーストラリア、スイス、シンガポールを含む60カ国以上がGloBEルールを制定または暫定的に適用している。最初の移行年度(FY2024)のGloBE情報申告(GIR)の提出期限は2026年6月30日である。
- Report on recent US international tax developments -13 March 2026 2026年3月13日のレポートによると、グローバルミニマム税申告では、米国企業は適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)についてのみ申告を行うことが明記される予定である。米国は「Side-by-Side」合意の下で、グローバルミニマム税から親会社を保護する最終親会社セーフハーバーの適用を受けている唯一の国である。
- Global Tax Reform Filing Date Moved to March 2026 - Accounting Weekly 南アフリカ歳入庁(SARS)は、GloBE登録・通知システムの稼働を2025年12月から2026年3月16日に延期した。これにより、国際基準との整合性を図り、企業とSARS双方のリスクを軽減する。
- ミニファイル 2026年3月期とGM課税制度の税効果 | 経営財務 日本では、2026年度税制改正でグローバルミニマム課税制度の見直しが継続され、国際合意を踏まえた措置として、国際最低課税額に対する法人税(IIR)などが見直され、新たな適用免除基準の創設などが予定されている。
- 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International 2026年3月期決算では、2025年度税制改正でOECDから公表されたガイダンス等を踏まえた国際最低課税額に対する法人税の見直しが行われている。
- Pillar Two Country Tracker - PwC 2026年1月5日、OECDはBEPS包摂的枠組みの147メンバー国・地域が、Pillar Twoグローバルミニマム税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ(「Side-by-Sideパッケージ」)に合意したことを発表した。これには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長、実質ベースの税恩典セーフハーバー、適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーおよび最終親事業体(UPE)セーフハーバーが含まれる。
- OECD Pillar Two Side-by-Side System and New Safe Harbors | Insights | Mayer Brown Side-by-Sideセーフハーバーは、適格Side-by-Side制度を有する国に最終親会社(UPE)を置く多国籍企業グループが選択した場合、所得合算ルール(IIR)または軽課税所得ルール(UTPR)の対象とはならないと定めている。移行期間CbCRセーフハーバーは1年延長され、2027年12月31日以前に開始する会計年度まで適用される。
- OECD、第2の柱グローバル・ミニマム課税に関するSide-by-Sideパッケージを公表:詳細解説 - EY OECDは2026年1月5日、グローバルミニマム課税のSide-by-Sideシステムに関する包括パッケージを公表し、新たな4つのセーフハーバー導入とCbCRセーフハーバーの1年延長を示した。
- Worldwide Tax Summary 2026年2月号 - PwC Side-by-Sideセーフハーバーは、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用され、2026年1月5日現在、米国はOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国である。新たなUPEセーフハーバーも2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用され、UPE国に「適格UPE制度」がある場合、UPE国・地域内の利得に関してUTPRの適用対象外となる。
- OECDによるグローバル・ミニマム課税(第2の柱)に関する新たな文書の公表について(2026年1月5日) | デロイト トーマツ グループ - Deloitte 2026年1月5日に公表されたOECDの文書には、2025年6月にG7により合意された、米国を最終親会社とする企業グループをUTPRとIIRの対象外とするSide-by-Side Systemに加え、簡素化の観点から新しく導入されたセーフ・ハーバーが盛り込まれている。
- 2026(R8)年度税制改正:グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - Deloitte 2026年1月23日に「グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置」が閣議決定され、国際課税システムの安定化等の観点から、グローバル・ミニマム課税と、独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について、2026年1月5日に合意が成立したことを受け、2026年度税制改正において見直しを行うこととされた。
- 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte 2026年3月決算においては、主に2025年度税制改正の内容が初めての適用を迎える。国際課税の分野では、グローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)について軽課税所得ルール及び国内ミニマム課税の法制化が行われた。
- OECDのSide-by-Sideパッケージ:第2の柱に関する3種類のセーフハーバー(簡素な実効税率、移行期間CbCR、租税優遇措置) | 著書/論文 | 長島・大野・常松法律事務所 移行期間CbCRセーフハーバーは、2027年12月31日以前に開始し、2029年6月30日までに終了する対象会計年度まで延長された。