グローバルサウス資源・投資の多角分析:米戦略とイラン情勢が及ぼす影響
グローバルサウスの重要鉱物:米国の新たな戦略的アプローチ
米国は2026年3月14日、FORGEイニシアティブを通じてグローバルサウス諸国との新たな二国間合意を締結しました。この合意は、重要鉱物資源の確保を目的とし、アルゼンチン、フィリピン、モロッコなどが含まれています。米国の戦略的意図は、重要鉱物サプライチェーンの脆弱性を低減し、技術・防衛に不可欠な鉱物の安定供給を促進することにあり、中国の市場影響力に対抗することも目的とされています。合意では、外交関係の強化と持続可能な採掘技術の優先が強調されています。
一方、グローバルサウスの国々は、リチウムなどの重要原材料を巡る世界のグリーンエネルギー転換の中で、自国の天然資源に対する支配力を強化する「グリーン資源ナショナリズム」政策を導入しています。これは、気候変動対策と将来のエネルギー需要を満たすための再生可能エネルギーシステムへの移行が加速する中での地政学的競争の激化を背景としており、世界のエネルギー転換に影響を与えています。
イラン情勢の緊迫化と世界経済への波及:エネルギー市場と新興国投資
2026年2月28日に始まったイラン戦争では、米国とイスラエルがイランの政権交代を目指す戦略を追求しており、軍事攻撃や指導者暗殺が実施され、アリ・ハメネイ師の暗殺後にその目的が示唆されました。2026年3月11日にはトランプ米大統領がイラン戦争の「勝利」と「まもなく終わる」ことを示唆する発言をしましたが、市場では緩和が求められ、原油価格は一時1バレルあたり120ドル近くまで急騰しました。
2026年3月に入り、ハメネイ師殺害によるイランの政治的混乱とホルムズ海峡の事実上の封鎖は、原油・LNG価格の急騰を招き、日本のエネルギーコストに深刻な影響を与えています。この中東の激震は、エネルギー、安全保障、通商の三分野で日本に同時圧力を生じさせていると、2026年3月の国際情勢レポートは指摘しています。これに対し、高市早苗首相は2026年3月12日の衆議院予算委員会で、エネルギー価格高騰対策として追加の予算措置は考えておらず、既存の燃料補助向け基金(残高2800億円)と備蓄放出で当面対応可能との見解を示しました。
新興国市場では、2026年3月に米国とイスラエルによるイラン攻撃がホルムズ海峡の事実上の封鎖につながり、原油価格が急騰したことで、世界的なインフレや景気減速懸念から株式市場(現地通貨ベース)が下落しました。米国の利下げ観測の後退と米ドル高もマイナス要因となっています。シュローダーの2026年3月8日時点のレポートによると、中東紛争により新興国債券市場は調整局面に入り、現地通貨建て債券はピークから2.8%下落しました。しかし、同レポートはラテンアメリカのコモディティ輸出国を引き続き有望視しており、イラン紛争は原油価格の上昇圧力を維持し、地政学的リスクプレミアムを高める可能性があると見ています。
グローバルサウスの投資環境:地政学リスクと構造的変化
イラン情勢のような地政学リスクが高まる中で、グローバルサウスの投資環境は構造的変化と多角的な見通しに直面しています。Lazard Asset Managementの2026年見通しでは、新興国市場は堅調なファンダメンタルズ、安定性の向上、歴史的に有利なバリュエーションに支えられ、より建設的な見通しが示されています。特に、AIインフラと半導体サイクルが新興国株式のパフォーマンスを牽引すると予想されており、北アジア地域がこの変革から最も恩恵を受けていると見られています。
J.P.モルガンの2026年新興国(EM)株式見通しも建設的ですが、選別的です。EMのGDP成長率は先進国を大きく上回ると予想されており、人口動態の改善、国内消費の増加、製造業・インフラ・デジタルエコシステムへの投資がその要因です。具体的な地域では、AIインフラの展開と半導体需要の回復から、韓国と台湾がEM(中国を除く)の収益成長の主要な牽引役とされています。また、インドは堅調な国内需要と政策改革、メキシコと東南アジアはサプライチェーンの多様化とニアショアリングから恩恵を受けていると分析されています。
大和アセットマネジメントの2026年3月号投資環境見通し(2026年2月20日発行)によると、地域ごとの差異も見られます。ブラジル国債は高い利息収入と価格上昇が期待できるため「強気」の見通しを維持しています。メキシコ銀行は2月の金融政策決定会合で政策金利を据え置いたものの、今後の追加利下げの余地を探る姿勢を示しています。
さらに、グローバルサウスの国々が重要原材料を巡る世界のグリーンエネルギー転換の中で、「グリーン資源ナショナリズム」政策を導入していることは、長期的な投資戦略における重要な考慮事項です。これは、気候変動対策と将来のエネルギー需要を満たすための再生可能エネルギーシステムへの移行が加速する中で、地政学的競争が激化している状況を背景としています。
Reference / エビデンス
- US Pursuit Critical Minerals Global South Impact March 2026 - The Green Blueprint 2026年3月14日、米国はFORGEイニシアティブを通じてグローバルサウス諸国との新たな二国間合意を締結し、重要鉱物資源の確保を目指しています。この戦略は、サプライチェーンの脆弱性を低減し、技術・防衛に不可欠な鉱物の安定供給を促進するとともに、中国の市場影響力に対抗することを目的としています。合意にはアルゼンチン、フィリピン、モロッコなどが含まれ、外交関係の強化と持続可能な採掘技術の優先が強調されています。
- Scowcroft Group Snapshot: Trump May Get Neither Regime Change, Nor a Short War 2026年3月11日、トランプ米大統領はイラン戦争に「勝利した」と発言し、紛争が「まもなく終わる」と示唆しましたが、市場は依然として緩和を求めており、原油価格は一時1バレルあたり120ドル近くまで急騰しました。この発言は、米国の安全保障部隊や地域の資産、イラン政権、イスラエルの指導者が直面する現実を反映していない可能性があります。
- 高市首相、エネルギー高騰対策「追加の予算措置は考えていない」 基金2800億円の活用の考え 衆院予算委(2026年3月12日) - YouTube 2026年3月12日、高市早苗首相は衆議院予算委員会の集中審議で、イラン情勢を受けたエネルギー価格高騰対策について、追加の予算措置は考えておらず、既存の燃料補助向け基金(残高2800億円)と備蓄放出で当面対応可能との見解を示しました。
- 2026年3月の新興国株式市場 - ピクテ・ジャパン 2026年3月の新興国株式市場(現地通貨ベース)は、米国とイスラエルによるイラン攻撃がホルムズ海峡の事実上の封鎖につながり、原油価格が急騰したことで、世界的なインフレや景気減速懸念から下落しました。米国の利下げ観測の後退と米ドル高も新興国株式市場にとってマイナス要因となりました。
- Emerging markets debt investment views – March 2026 - Schroders 2026年3月8日時点のシュローダーのレポートによると、中東紛争により新興国(EM)債券市場は調整局面に入り、EM現地通貨建て債券はピークから2.8%下落しました。EM通貨に対する見方を下方修正したものの、ラテンアメリカのコモディティ輸出国は引き続き有望視されています。イラン紛争は原油価格の上昇圧力を維持し、地政学的リスクプレミアムを高める可能性があります。
- The Emerging Trend of “Green” Resource Nationalism: Lessons from Latin America グローバルサウスの国々は、リチウムなどの重要原材料を巡る世界のグリーンエネルギー転換の中で、自国の天然資源に対する支配力を強化するため、「グリーン資源ナショナリズム」政策(例:輸出制限)を導入しています。これは、気候変動対策と将来のエネルギー需要を満たすための再生可能エネルギーシステムへの移行が加速する中で、地政学的競争が激化していることを背景としています。
- Regime change efforts in the 2026 Iran war - Wikipedia 2026年2月28日に始まったイラン戦争では、米国とイスラエルがイランの政権交代を目指し、軍事攻撃や指導者暗殺、国内蜂起の奨励といった戦略を追求しています。米イスラエルによるイラン標的への攻撃とアリ・ハメネイ師の暗殺後、トランプ米大統領とネタニヤフ・イスラエル首相は、攻撃の目的が政権交代であると示唆しました。
- 2026年3月|国際情勢レポート - いい政治ドットコム 2026年3月の国際情勢レポートによると、ハメネイ師殺害によるイランの政治的混乱とホルムズ海峡の事実上の封鎖は、原油・LNG価格の急騰を引き起こし、日本のエネルギーコストに深刻な影響を与えています。この中東の激震は、エネルギー、安全保障、通商の三分野で日本に同時圧力を生じさせています。
- Emerging Markets Outlook 2026 | Lazard Asset Management 2026年の新興国市場は、堅調なファンダメンタルズ、安定性の向上、歴史的に有利なバリュエーションに支えられ、より建設的な見通しが示されています。特に、AIインフラと半導体サイクルがEM株式のパフォーマンスを牽引すると予想されており、北アジア地域がこの変革から最も恩恵を受けていると見られています。
- 新興国抜粋版 | 投資環境見通し(2026年3月号) 大和アセットマネジメントの2026年3月号投資環境見通し(2026年2月20日発行)によると、ブラジル中央銀行は3月からの連続利下げが予想されており、ブラジル国債は高い利息収入と価格上昇が期待できるため「強気」の見通しを維持しています。メキシコ銀行は2月の金融政策決定会合で政策金利を据え置いたものの、今後の追加利下げの余地を探る姿勢を示しています。
- The case for emerging markets is strengthening - J.P. Morgan Personal Investing J.P.モルガンの2026年新興国(EM)株式見通しは建設的ですが、選別的です。EMのGDP成長率は先進国を大きく上回ると予想されており、人口動態の改善、国内消費の増加、製造業・インフラ・デジタルエコシステムへの投資がその要因です。特に、AIインフラの展開と半導体需要の回復から、韓国と台湾がEM(中国を除く)の収益成長の主要な牽引役となるでしょう。インドは堅調な国内需要と政策改革、メキシコと東南アジアはサプライチェーンの多様化とニアショアリングから恩恵を受けています。