グローバルサウスの重要鉱物戦略:米中対立と多角化するサプライチェーンの最新動向
米国とチリ、重要鉱物サプライチェーン強化で連携
2026年3月12日、米国とチリは重要鉱物およびレアアースのサプライチェーン強化に関する共同声明を発表しました。この声明は、両国が供給網の強靭化を目指す姿勢を示すものです。チリはグローバルサウスにおける主要な鉱物資源国の一つであり、今回の連携は、米国が同盟国やパートナー国との協力関係を通じて、特定の国への依存度低減を図る戦略の一環と見られます。
G7首脳会議と広がる資源安全保障の議論
同日の2026年3月12日、G7首脳はオンライン会議を開催し、イラン情勢とエネルギー価格の高騰について議論しました。会議では、イラン情勢の悪化に伴うエネルギー供給逼迫の懸念が高まる中、広範な資源安全保障の文脈で重要鉱物への関心も高まっていることが示唆されました。日本の高市総理は、ホルムズ海峡付近での船舶への攻撃に懸念を表明し、安全な航行確保に向けてG7や中東諸国との連携を強化する方針を示しました。これは、地政学的な緊張が世界の資源戦略に直接的な影響を与えている現状を浮き彫りにしています。
主要国の戦略的動き:多角化と備蓄の推進
米国は重要鉱物のサプライチェーン強靭化に向けた戦略的動きを活発化させています。2026年2月、米国は「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、50を超える国々と欧州委員会が参加しました。この会合では、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継となる「資源の戦略的地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の立ち上げが発表されました。また、トランプ大統領は、レアアースやコバルトといった重要鉱物の備蓄計画「Project Vault」を発表し、民間資本を含む120億ドルの投入を計画しているとされます。これらの動きは、特定の国への依存度を低減させ、供給源の多角化と安定化を目指す米国の戦略を示しています。
グローバルサウスにおける中国の存在感と新たな連携
中国は、グローバルサウスにおける重要鉱物資源の権益確保とサプライチェーン強化に向けた戦略を展開しています。2026年2月、中国政府は国交のあるアフリカ53カ国に対し、同年5月1日から100%の品目でゼロ関税措置を実施すると表明しました。この措置は、アフリカ諸国から中国への重要鉱物の供給網を強化することを後押しする目的があると見られています。
Reference / エビデンス
- 中国によるレアアースの輸出規制 -各国の対応と今後の視座-(2026年4月) - PwC 2026年2月、米国は「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、50数カ国が参加。この会議で、鉱物資源安全保障パートナーシップ(MSP)の後継となる「資源の戦略的地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の立ち上げが発表された。また、トランプ大統領はレアアースやコバルトなどの重要鉱物備蓄のため、民間資本を含む120億ドルを投入する計画「Project Vault」を発表した。
- 半導体以外の新たな生命線?日米が5500億ドルを投じてレアアース供給網を構築―台湾メディア 2026年2月、日本の高市早苗首相は、レアアース開発などを重点とした経済安全保障の強化を施政方針として打ち出した。来月予定される訪米時にトランプ米大統領とレアアース開発における協力を深め、総額5500億ドルの対米投資を実行する方針であると報じられた。
- 重要鉱物、複数国貿易協定へ協議=対米投融資 - リスク対策.com 2026年3月19日、日米両政府は重要鉱物の安定供給に向けた複数国間貿易協定の具体化を進める行動計画を策定したと発表した。南鳥島周辺海域のレアアース開発に関する協力覚書も締結。また、中国を念頭に重要鉱物の安定供給を脅かす輸出規制などの措置に反対する方針を確認した。
- ザンビア、DRC、ジンバブエ重要鉱物(1)表面化する米中対立 | 高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは - ジェトロ 2026年2月、中国政府は国交のあるアフリカ53カ国に対し、同年5月1日から100%の品目でゼロ関税措置を実施すると表明した。これはアフリカから中国への重要鉱物の供給網強化を後押しする措置である。また、2026年3月26日、コンゴ民主共和国(DRC)と中国はDRCにおける鉱業分野の協力を深化させる協定に署名した。DRCは世界最大のコバルト生産国である。
- 日米、重要鉱物の供給網強化に行動計画 価格下限の導入に焦点 - ニューズウィーク 2026年3月19日、日米は中国への依存を低減させるため、重要鉱物やレアアースの代替調達先を開発する取り組みに関する行動計画を発表した。計画では、特定の鉱物を対象とした価格下限措置の導入に焦点を当てる。
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省 2026年3月18日、日本と米国は「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を策定した。この計画は、非市場的政策や慣行による歪曲がサプライチェーンの脆弱性を生み出している現状を是正し、多様で強靭な市場に基づくサプライチェーンを確保することを目的としている。
- 日米、レアアース・重要鉱物で連携拡大 供給網強靱化を加速 - レアリサ 2026年3月19日の日米首脳会談に合わせ、日米両政府は重要鉱物およびレアアース分野での協力を具体化する複数の文書を発表した。これには、昨年合意された政策枠組みを基盤としたプロジェクト支援と制度設計の両面からのサプライチェーン再構築が含まれる。また、2026年3月12日には米国とチリが重要鉱物・希土類の供給網強化で共同声明を発表した。
- 米国、重要鉱物市場再構築へ「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催 - CRDS 2026年2月4日、米国は「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、54か国および欧州委員会代表が参加した。この会合では、重要鉱物およびレアアースの世界市場を再構築することが打ち出され、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設が発表された。
- G7 leaders hold online meeting to discuss Iran situation and energy prices (March 12, 2026) 2026年3月12日、G7首脳はオンライン会議を開催し、イラン情勢とエネルギー価格の高騰について議論した。会議に参加した日本の高市総理は、ホルムズ海峡付近での船舶への攻撃に懸念を示し、安全な航行確保のためにG7や中東諸国などと連携すると表明した。G7は、イラン情勢の悪化によるエネルギー供給逼迫の懸念に対し、ロシア産原油の輸出価格に上限を設けるなどの対ロシア制裁を継続する方針で一致した。