国際決済システムの多極化と脱ドル化の最前線:FSB、日銀、BRICSの動向を読み解く

国際決済の効率化と多極化への動き:FSBと日本銀行の最新動向

2026年3月12日、ロンドンで開催された金融安定理事会(FSB)の国境を越えた決済サミットにおいて、G20ロードマップの新たな実施段階が開始されました。FSB議長アンドリュー・ベイリーは、国境を越えた決済をより速く、安く、透明性が高く、アクセスしやすくするためには、官民双方の強いコミットメントと協調行動が不可欠であると強調しました。この新たな段階は、公的機関による管轄区域および地域レベルでの行動計画の策定と、民間部門の行動および官民連携の強化に焦点を当てています。

こうした国際的な動きと並行して、2026年3月3日には日本銀行が、ブロックチェーン技術を用いた金融機関の中央銀行預金決済への活用実験を開始する計画を発表し、国際的な共同実験にも参加しています。これらの取り組みは、国際決済システムの近代化と通貨の多極化に向けた具体的な進展を示しています。

グローバルサウスにおける非米ドル決済網構築の進展とBRICSの戦略

BRICS諸国は、2026年の開始を目指し、共通デジタル通貨または共通決済システム(BRICS Pay)の構築計画を進めています。この取り組みは、米ドルへの依存度を低減し、世界の金融システムを再構築することを目的としています。直近のサミットでは、現地通貨での貿易利用の進展や、金融の独立を支援するBRICS Payの開発が強調されました。この新通貨は、ブロックチェーン技術や中央銀行デジタル通貨(CBDC)との統合を含むデジタルインフラによって裏付けられる予定です。

BRICS加盟国間では、米ドルの「武器化」を抑止するために、現地通貨での金融取引のための代替システム開発が進んでいます。ロシア当局は、BRICS内の貿易の大部分がすでにドルフリーとなっていることを確認しています。しかしながら、ブラジルやインドといった一部のBRICS加盟国は、米ドルからの完全な離脱やSWIFTからの脱却には慎重な姿勢を示しつつも、自国通貨での取引を促進するための代替システム開発を推進しています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)とステーブルコインの国際決済への影響

中国のデジタル人民元(e-CNY)は2026年1月から利息付与を開始し、世界初の利息付きCBDCとなりました。これにより、デジタル人民元の法的性質は現金通貨のデジタル版から銀行預金のデジタル版へと変化し、準備金制度・利息付与・預金保険の対象となりました。中国は、ブラジルやサウジアラビアとの間で商品取引にe-CNYを使用するテストを行っており、CBDCを活用したクロスボーダー決済で「国際標準」を確立したいという意欲が示されています。

他のグローバルサウス諸国においても、CBDC開発は進展しています。ロシアのデジタルルーブルは2025年1月に正式に開始され、中国やインドとエネルギー取引でのCBDC使用に関する合意を締結しました。インドはe-ルピーのパイロットフェーズを大幅に拡大し、2025年までに5000万人以上のユーザーが利用しています。ブラジルも2025年にDREX(デジタルレアル)の開始を準備しており、中国と鉄鉱石輸出にDREXを使用する協議を行っています。また、香港、タイ、中国、UAEが参加する多国間CBDCプロジェクト「Project mBridge」のような国際的な取り組みも進行中です。

ステーブルコインもクロスボーダー決済において注目を集めています。2025年はステーブルコイン決済業界にとって大きな年となり、2026年に入ってからも、理論から実践への移行に焦点を当てた議論が活発に展開されています。過去1年間で大幅な取引量増加が見られ、2026年3月3日にはデジタルアセットプラットフォーム「NeUSD」がグローバルデジタル資産取引市場で自社トークン「NeUSD」の取引を開始し、国際市場における流動性基盤を強化しています。

脱ドル化の現状と国際金融システム多極化のマクロ経済的展望

2026年初頭、米ドルの「武器化」への懸念や地政学的リスクを背景に、各国が米国債保有を減らし、金などの資産に分散投資する「脱ドル化」の動きが加速しています。中央銀行による外貨準備の多様化がこのトレンドの主要な推進力となっています。2025年には世界の市場が米国株を約2対1でアウトパフォームし、新興国市場ETFへの資金流入が過去最高を記録しました。インドは米国債を売却し、積極的に金を買い増しており、金の準備金に占める割合は前年の9%から14%に増加しました。

BRICS諸国は、西側のインフラを迂回する代替金融システムの確立に取り組んでおり、中央銀行デジタル通貨と資源に裏付けられた貿易メカニズムが脱ドル化の鍵となっています。サウジアラビアがペトロダラー合意を終了したことも、この傾向を後押ししています。

数十年にわたり、米ドルは世界経済の要石として貿易、投資、準備において支配的でしたが、その優位性に亀裂が生じている可能性が指摘されています。為替レートの変動や地政学的リスクをヘッジするために、一部の国はドルへの依存度を下げようとしています。FX取引におけるドルのシェアは依然として高いものの、国際金融システムは多極的な通貨システムへの移行が徐々に進むと予想されています。

Reference / エビデンス

  • The Payments Newsletter including Digital Assets & Blockchain, March 2026 | JD Supra 2026年3月12日、金融安定理事会(FSB)はロンドンで開催された国境を越えた決済サミットで、G20ロードマップの新たな実施段階を開始すると発表しました。FSB議長アンドリュー・ベイリーは、国境を越えた決済をより速く、安く、透明性が高く、アクセスしやすくするために、官民双方の強いコミットメントと協調行動が不可欠であると強調しました。この新たな段階は、公的機関による管轄区域および地域レベルでの行動計画の策定と、民間部門の行動および官民連携の強化に焦点を当てています。また、2026年3月3日には日本銀行が、ブロックチェーン技術を用いた金融機関の中央銀行預金決済への活用実験を開始する計画を発表し、国際的な共同実験にも参加しています。
  • FSB kicks off new implementation phase to enhance cross-border payments through public-private partnership - Financial Stability Board 2026年3月12日、金融安定理事会(FSB)は、国境を越えた決済を強化するためのG20ロードマップの新たな実施段階を開始しました。FSB議長アンドリュー・ベイリーは、官民双方の強いコミットメントと協調行動がロードマップの目標達成に不可欠であると述べました。次の段階では、公的機関が国内および地域レベルでの決済システム強化のための行動計画を策定すること、および民間部門の行動と官民連携の促進に重点が置かれます。
  • New BRICS Currency Could Reshape Global Economy by 2026-27 - GoldSilver BRICS諸国は、2026年から2027年までに共通のデジタル通貨を創設する計画を進めており、これは米ドルへの依存を減らし、世界の金融システムを再構築することを目的としています。最近のサミットでは、現地通貨での貿易利用の進展や、金融の独立を支援する共通決済システム「BRICS Pay」の開発が強調されました。この新通貨は、ブロックチェーン技術や中央銀行デジタル通貨(CBDC)との統合を含む高度なデジタルインフラによって裏付けられる予定です。
  • How Would a New BRICS Currency Affect the US Dollar? | INN - Investing News Network BRICS諸国は米ドルに対抗する新通貨の創設に関心を示しており、ブロックチェーンベースの決済システム計画を発表しました。しかし、BRICS加盟国間でも、米ドルからの完全な離脱については議論があり、ブラジル政府はBRICS共通通貨に向けた大きな動きはないと述べています。インドも2025年3月には、米ドルを代替する政策はないと表明しています。BRICSの目標は、米ドルの「武器化」を抑止するために、現地通貨での金融取引のための代替システムを開発することにあります。Project mBridgeは、香港金融管理局、タイ銀行、中国人民銀行デジタル通貨研究所、UAE中央銀行の協力により開発中の、もう一つのドル代替デジタル通貨クロスボーダー決済システムです。
  • When Will BRICS Launch its own Currency - Gate.com BRICS諸国は、2026年の開始を目指して自国通貨の開発を大きく進めており、米ドルの世界貿易と金融における支配に挑戦することを目指しています。2025年9月現在、BRICS加盟国は新通貨導入に向けた段階的アプローチを積極的に実施しています。ロシア当局は、米ドルではなく現地通貨での貿易決済が進展していることを確認しており、BRICS内の貿易の大部分がすでにドルフリーとなっています。BRICS Payシステムは、SWIFTネットワークへの依存を減らすための代替決済システムとして注目を集めています。
  • The BRICS Could Launch Their Currency In 2026! | Bitget News BRICSは、2026年にも共通通貨を立ち上げるという明確な目標を持って金融協力を強化しています。2025年7月にブラジルで開催された第17回BRICSサミットでは、現地通貨での決済拡大とBRICS Payの開発における実質的な進展が承認されました。このプロジェクトは、クロスボーダー決済を容易にするために開発中のデジタルインフラであるBRICS Payに依存しており、ブロックチェーン技術を活用してSWIFTのような従来のシステムを迂回することを目指しています。中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する研究もプロジェクトアーキテクチャに統合されています。
  • CBDCs from BRICS+: a new chapter in global financial modernization - BRICS Brasil 2026年に開始予定のBRICS Payプラットフォームは、加盟国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を相互接続し、SWIFTに代わる選択肢を提供し、米ドルへの依存を減らすことを目指しています。中国のデジタル人民元(e-CNY)は2023年から運用されており、2025年までにロシアとの二国間貿易の約20%で使用されています。中国はまた、ブラジルやサウジアラビアと商品取引にe-CNYを使用するテストを行っています。ロシアのデジタルルーブルは2025年1月に正式に開始され、中国やインドとエネルギー取引でのCBDC使用に関する合意を締結しています。インドはe-ルピーのパイロットフェーズを大幅に拡大し、2025年までに5000万人以上のユーザーが利用しています。ブラジルは2025年にDREX(デジタルレアル)の開始を準備しており、中国と鉄鉱石輸出にDREXを使用する協議を行っています。
  • CBDCとは?中央銀行デジタル通貨の仕組みと日本への影響【2026年最新】 | 会社設立のミチシルベ 中国のデジタル人民元(e-CNY)は2026年1月から利息付与を開始し、世界初の利息付きCBDCとなりました。これにより、デジタル人民元の位置づけは現金型から預金型へと変化しました。
  • 中国が本格化させる「人民元国際化2.0」の中身。3月の全人代で外された「稳慎」の文字 2026年1月下旬の意見交換では、多くの専門家が人民元の国際化に言及し、中国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入で先行している状況を踏まえ、CBDCを活用したクロスボーダー決済で「国際標準」を確立したいという強い意欲が存在することが示されました。デジタル人民元は2026年1月以降、利息付与を開始し、その位置づけが銀行預金のデジタル版に変更されました。
  • 米欧中のデジタル通貨戦略とリテール決済の再編 | 大和総研 中国は、デジタル人民元の利用拡大を視野に制度的位置づけを大きく変更し、2026年1月以降、デジタル人民元は現金通貨のデジタル版という位置づけから銀行預金のデジタル版に変更され、準備金制度・利息付与・預金保険の対象となりました。
  • Q1 2026 Market Report: De-dollarization & Global Outperformance 2026年初頭、脱ドル化の傾向が加速しており、各国は米ドルの「武器化」への懸念やFRBの独立性への攻撃を理由に、米国債保有を減らし、金などの資産を優先しています。2025年には世界の市場が米国株を約2対1でアウトパフォームし、新興国市場ETFへの資金流入が過去最高を記録しました。インドは米国債を売却し、積極的に金を買い増しており、金の準備金に占める割合は前年の9%から14%に増加しています。中央銀行による多様化と地政学的緊張が、この需要を牽引しています。
  • The US dollar fell sharply in early 2026 due to BRICS countries promoting de-dollarization 2026年初頭、BRICS諸国が脱ドル化を推進しているとの懸念から、米ドルは急落しました。BRICS諸国は、西側のインフラを迂回する代替金融システムの確立に取り組んでおり、中央銀行デジタル通貨と資源に裏付けられた貿易メカニズムが脱ドル化の鍵となっています。サウジアラビアがペトロダラー合意を終了したことも、この傾向を後押ししています。米ドルは依然として世界的に支配的ですが、多極的な通貨システムへの移行が今後数年間で徐々に進むと予想されています。
  • Dedollarization or Redollarization? | World Economic Forum Annual Meeting 2026 数十年にわたり、米ドルは世界経済の要石として貿易、投資、準備において支配的でしたが、一部の国は為替レートの変動や地政学的リスクをヘッジするためにドルへの依存度を下げようとしています。中央銀行は、地政学的懸念からドル準備の保有に慎重になっており、ドル保有比率を減少させています。しかし、FX取引におけるドルのシェアは約88%と依然として高く、世界の貸付や債務発行の半分以上を占めています。
  • New Currency of Power: How the Global South Is Dismantling Dollar Supremacy グローバルサウスが世界貿易とGDPに占める割合を拡大するにつれて、非ドル通貨の実用化が進んでいます。BRICS圏内では、取引が自国通貨で行われることが増えています。SWIFTは依然として支配的ですが、代替手段が台頭しており、2025年5月までに中国人民元は世界の決済のわずか2%を占めていたものの、BRICS域内貿易の50%を促進しました。2025年4月までに、FX取引におけるドルのシェアは89.2%に上昇し、ユーロは28.9%に減少しました。
  • Stablecoin Cross-Border Payments In 2026: From Theory To Practice - Forbes 2025年はステーブルコイン決済業界にとって大きな年であり、2026年も引き続きステーブルコインに関する議論が活発に行われ、理論から実践への移行に焦点が当てられています。ステーブルコインはクロスボーダー決済において関心が高まっていますが、現在のところ世界のクロスボーダー決済取引量の1%未満を占めるに過ぎません。しかし、過去1年間で大幅な成長が見られ、多くのプロバイダーが100%以上の取引量増加を記録しています。
  • 【金融機関正式連携と新たな取引開始のお知らせ】NeUSD、3月3日20:00(日本時間)世界の流動性市場にて取引開始 - 株式会社フィレナのプレスリリース - valuepress デジタルアセットプラットフォーム「NeUSD」は、東南アジア金融機関との連携を基盤とし、2026年3月3日20:00(日本時間)に世界トップクラスの取引量を誇るグローバルデジタル資産取引市場で自社トークン「NeUSD」の取引を開始しました。これにより、NeUSDは国際市場における流動性基盤を大幅に強化し、実需設計を伴うデジタル金融インフラとしての実装フェーズを本格化させます。NeUSDは、米ドル・ユーロ・日本円など主要通貨との接続を視野に入れたマルチカレンシー設計を推進しています。
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