重要鉱物サプライチェーンを巡る国際動向:グローバルサウスの価値向上と主要国の戦略
日米連携による重要鉱物サプライチェーン強靱化の動き
重要鉱物サプライチェーンの強靱化に向けた日米間の協力は、2025年10月27日に両国首脳が署名した「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」に基づいて進行しています。この枠組みは、中国への依存度を低減し、安定的な供給ルートを確保することを目的としており、複数国間の貿易イニシアティブの発展を目指しています。
グローバルサウス:資源国としての価値向上と国際協力
グローバルサウス諸国、特にアフリカ諸国は、重要鉱物サプライチェーンにおいて、単なる原材料供給国から脱却し、加工・精製による高付加価値化を目指す動きを強めています。国連は2026年3月5日、重要鉱物資源を巡る世界的な競争において「公平な競争」を呼びかけました。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、重要鉱物需要の急増が地政学的および産業的ダイナミクスを再形成し、資源豊富な開発途上国が新たなバリューチェーンの中心に位置すると指摘しています。エネルギー移行はこれらの国々にとって「大きな開発機会」であり、原材料輸出から現地での加工・付加価値化へ移行することで、経済的収益の大幅な増加が期待されています。国連環境計画(UNEP)は、バリューチェーン全体にわたる鉱物ガバナンスと国際協力の強化を求めています。アフリカ大陸は世界の重要鉱物埋蔵量の約40%を保有するものの、未加工での輸出が主流であり、サプライチェーン全体の価値のごく一部しか獲得できていない現状があります。
主要国の戦略と多国間・二国間連携の拡大
米国は、重要鉱物サプライチェーンの中国への依存度を低減し、多様化を図るため、新たな国際協力戦略を推進しています。2026年2月4日、米国はワシントンD.C.で重要鉱物に関する閣僚級会合を主催し、54カ国と欧州委員会の代表が参加しました。この会合では、新たな国際フォーラムであるForum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE)の立ち上げが発表されました。FORGEは、多様で強靱かつ安全な重要鉱物サプライチェーンを推進するための政策調整と国境を越えたプロジェクト連携に焦点を当てています。また、米国はアルゼンチン、クック諸島、エクアドル、ギニア、モロッコ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、アラブ首長国連邦、ウズベキスタンを含む多数の国々と二国間重要鉱物枠組みや覚書に署名しました。J.D.バンス副大統領は、同盟国や友好国による「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案し、生産の各段階で重要鉱物の最低価格を設定することで公正な市場価値を反映した市場を構築する構想を示しました。会合後、米国通商代表部(USTR)は、重要鉱物に関するメキシコとの行動計画、および日本とEUとの共同声明を発表しました。さらに、トランプ大統領は2月2日、国内の重要鉱物戦略備蓄を強化するためのイニシアティブ「Project Vault」を発表しています。
グローバルな権益争奪と新たな市場秩序の展望
重要鉱物資源を巡るグローバルな権益争奪は、国際的な貿易ルールや市場構造に変化をもたらしつつあります。米国は、中国が精錬・加工において支配的な地位を占め、不当に安い価格で市場を席巻している状況に対抗するため、採掘鉱物の最低価格設定(プライスフロア)を伴う重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案しています。EU、米国、日本も、重要鉱物の貿易に関する行動計画を策定し、志を同じくするパートナーとの複数国間の貿易イニシアティブの可能性を検討しています。このイニシアティブには、国境で調整される価格フロアや特恵貿易圏の構築の検討が含まれる可能性があります。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、世界のレアアース精錬の91%が中国で行われており、主要国はこのような現状を変革しようとしています。これらの動きは、同盟国間での限定的な貿易圏形成を通じて、今後の資源ビジネスにおける新たな市場秩序を構築する可能性を秘めています。
Reference / エビデンス
- What does the US pursuit of critical minerals mean for the Global South? - Eco-Business 2026年2月4日、米国政府はワシントンD.C.で重要鉱物に関する閣僚級会合を開催し、54カ国の代表が参加しました。この会合は、ハイテクチップや再生可能エネルギー機器などに不可欠な鉱物のサプライチェーン確保を目的としており、Forum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE)の立ち上げ、10件の二国間協定の署名、採掘鉱物の最低価格を伴う重要鉱物貿易圏の提案といった活動が行われました。また、トランプ大統領は、米国輸出入銀行からの100億ドルの融資による重要鉱物備蓄イニシアティブ「Project Vault」を発表しました。これらの動きは、重要鉱物における中国への依存を断ち切ることを明確に意図しています。グローバルサウスの生産国にとって、主要な政策目標はバリューチェーンを向上させることです。
- [MC14 - SIDE EVENT] Trade Cooperation on Africa's Critical Minerals: Pathways for Equitable Clean Energy Transitions and Sustainable Development 2026年3月27日にカメルーンのヤウンデで開催された第14回WTO閣僚会議(MC14)のサイドイベントでは、「アフリカの重要鉱物に関する貿易協力:公平なクリーンエネルギー移行と持続可能な開発への道筋」がテーマとなりました。このセッションは、アフリカ諸国が重要鉱物サプライチェーンからより大きな価値を獲得し、グリーン産業化と経済多様化を支援する貿易・投資協力の機会を強調することを目的としています。アフリカ大陸は世界の重要鉱物埋蔵量の約40%を保有していますが、ほとんどの国はこれらの資源を未加工の形で輸出し、グローバルサプライチェーン全体で生み出される価値のごく一部しか獲得できていません。
- 「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発出しました - 財務省 2026年3月18日、日本政府と米国は「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を発表しました。これは、2025年10月27日に発表された「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」を深化させるもので、プライスフロアやその他の措置によって支えられる重要鉱物の複数国間の貿易イニシアティブを発展させることを目指しています。
- 重要鉱物、複数国貿易協定へ協議=対米投融資 - リスク対策.com 2026年3月19日の日米首脳会談では、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」が合意されました。この計画は、レアアースを廉売する中国に対抗するため、同志国で調達時の最低価格を設定し、安定的に調達できる「貿易圏」の構築に向けた議論を進めるものです。また、南鳥島近海のレアアース開発を加速するため、日米の作業部会を設置することでも一致しました。
- Critical Minerals Ministerial Introduces New International Cooperation Strategy - CSIS 2026年2月4日の重要鉱物閣僚会合では、米国が同盟国やパートナー国との重要鉱物安全保障における協力を深めるための新たな国際協力戦略が導入されました。これには、新たな国際フォーラムであるForum on Resource Geostrategic Engagement (FORGE)の立ち上げ、13の新たな二国間重要鉱物枠組みおよび覚書の署名、そして価格フロアや特恵貿易圏の創設に関する議論が含まれます。FORGEは、多様で強靭かつ安全な重要鉱物サプライチェーンを推進するため、政策調整と国境を越えたプロジェクト連携に焦点を当てています。
- 三菱マテリアル、米リエレメントとレアアースなど重要鉱物のリサイクル事業で協業 - ジェトロ 2026年3月31日、三菱マテリアルは、レアアースなど重要鉱物資源のリサイクル事業を行う米国のリエレメントテクノロジーズと日米協業に関する覚書(MOU)を締結し、出資を発表しました。これにより、三菱マテリアルは北米における資源循環型サプライチェーンに参画し、米国での原料調達、委託精製、製品のオフテイク契約を引き受けます。また、日本では両社の技術を活用したレアアース・レアメタルリサイクルの共同事業(合弁会社設立を想定)の可能性を検討します。
- U.S. Launches Critical Minerals Coalition at 54-Nation Summit - The Hilltop 2026年2月初旬、米国は史上最大の重要鉱物に関する外交会議を主催し、54カ国と欧州委員会の代表者が参加しました。この会議の目的は、現代技術と国防に不可欠な重要鉱物に対する中国への米国の依存を減らすことでした。会合では、アルゼンチン、クック諸島、エクアドル、ギニア、モロッコ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、アラブ首長国連邦、ウズベキスタンとの間で11の新たな二国間重要鉱物枠組みおよび覚書が署名されました。また、トランプ大統領は2月2日に、国内の重要鉱物戦略備蓄を確立するための120億ドルのイニシアティブ「Project Vault」を発表しました。バンス副大統領は、強制力のある最低価格を伴う重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案しました。
- 山田経済産業副大臣が第14回WTO閣僚会議に出席しました 2026年3月24日から31日まで、山田経済産業副大臣がカメルーンのヤウンデで開催された第14回WTO閣僚会議(MC14)に出席しました。会談では、フランスの対外貿易・投資誘致担当大臣との間で、重要鉱物を含む経済安全保障分野での二国間協力強化が確認されました。また、アルゼンチン共和国やエクアドルの副大臣とも経済関係の強化について意見交換が行われました。
- 3月19日の日米首脳会談で、ほとんどニュースにならなかった合意がある。それが何なのか、調べてみた/重要鉱物アクションプラン - note 2026年3月19日の日米首脳会談で、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」が合意されました。この計画は、中国に頼らない重要鉱物の流通ルートを日米が共同で構築する実務的な行動計画であり、特に「プライスフロア」の議論が実際に動き始めた点が注目されます。これが機能すれば、重要鉱物の国際的な価格構造そのものが変わる可能性があります。このアクションプランは、2025年10月の日米首脳会談で合意された「重要鉱物の供給確保のための日米枠組み」の「次のステップ」と位置づけられています。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、世界のレアアース精錬の91%が中国で行われています。
- UN calls for fair play in the global race for critical minerals | UN News 2026年3月5日、国連は重要鉱物資源を巡る世界的な競争において「公平な競争」を求めました。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、重要鉱物に対する需要の急増は地政学的および産業的ダイナミクスを再形成しており、資源豊富な開発途上国が新たなバリューチェーンの中心に位置しています。エネルギー移行はこれらの国々にとって「大きな開発機会」であり、原材料の輸出から現地での加工・付加価値化へと移行することで、経済的収益を大幅に増加させることができます。国連環境計画(UNEP)は、鉱物生産の拡大が環境、社会、経済、地政学的な深刻なリスクをもたらす可能性を懸念しており、バリューチェーン全体にわたる鉱物ガバナンスと国際協力の強化を求めています。
- 欧州委、米国政府、日本政府が重要鉱物に関する共同プレス声明を発表 - CRDS EU、米国、日本は、重要鉱物の貿易に関する行動計画を策定し、志を同じくするパートナーとの複数国間の貿易イニシアティブの可能性を検討する意向を表明しました。このイニシアティブには、国境で調整される価格フロア、基準に基づく市場、値差に係る補助金、オフテイク協定など、協調的な貿易政策および制度的枠組みの構築可能性の検討が含まれ得ます。2025年10月27日には、米国と日本の首脳が「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」に署名しています。
- 米国主導の「重要鉱物・複数国間貿易協定」が意味するもの覇権を巡る資源ルールの激変と日本企業への影響 - 株式会社ロジスティック 2026年2月4日、ワシントンで54カ国以上が参加する初の重要鉱物閣僚会合が開催され、バンス副大統領が友好国との間で「重要鉱物に関する特恵貿易圏」の創設を正式に宣言しました。同日、米国は日本・EU・メキシコとの共同行動計画を発表するとともに、11カ国との二国間枠組み合意に署名しました。これは、電気自動車(EV)のバッテリーや先端半導体、防衛装備品に不可欠なリチウム、ニッケル、コバルト、レアアースなどの資源供給網を、米国の主導下で再構築しようとする試みです。米国は、特定の国(主に中国)が国家資本を背景に過剰生産を行い、不当に安い価格で市場を席巻していることに強い危機感を抱いています。
- 米国務省、重要鉱物閣僚会合を初開催、バンス副大統領が重要鉱物特恵貿易圏の創設を提案 2026年2月4日、米国務省はワシントンで初の重要鉱物閣僚会合を開催し、日本を含む54カ国および欧州委員会が参加しました。J.D.バンス副大統領は、同盟国や友好国による「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案し、生産の各段階で重要鉱物の最低価格を設定し、関税を用いて公正な市場価値を反映した市場を構築すると説明しました。会合後、米国通商代表部(USTR)は、重要鉱物に関するメキシコとの行動計画、日本とEUとの共同声明を発表しました。また、鉱物資源安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「FORGE」の創設が発表されました。