緊迫する国際海洋安全保障:ホルムズ海峡と南シナ海、そして海洋法秩序の最前線

ホルムズ海峡の安全保障危機:IEAの緊急石油備蓄放出と国際社会の対応

2026年3月11日、国際エネルギー機関(IEA)は、日本を含む加盟国が過去最大規模となる4億バレルの石油備蓄協調放出に合意したと発表しました。この発表の背景には、中東情勢の悪化によりホルムズ海峡を通る原油・石油製品の輸出量が以前の1割未満に減少している事実があります。IEA事務局長は、安定供給回復のためにはホルムズ海峡の通航再開が最も重要であると指摘しています。

この危機は、2026年2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃とその報復措置が発端となり、多くの船会社が自発的に通航を避ける「事実上の封鎖」状態に陥っています。数百隻規模の船舶が周辺で足止めされていると報告されています。

こうした状況を受け、2026年3月13日には日本の防衛大臣が記者会見で、3月11日に開催された中東情勢に関するG7オンライン首脳会議において、ホルムズ海峡を含む海上輸送路の安全確保について議論が行われたことを確認しました。日本政府は、ホルムズ海峡を巡る情勢に重大な関心を持って情報収集を行っていると述べています。

南シナ海における領有権紛争の継続:スカーボロー礁を巡る米中間の緊張

2026年3月13日、南シナ海のスカーボロー礁(中国名:黄岩島)付近において、米国駆逐艦が航行した事案が発生しました。これに対し、中国軍は同駆逐艦を監視し「追い払った」と発表しています。米国防総省は、米軍の行動は国際法に則ったものであるとの見解を示しています。

この事案の前日には、フィリピンが同礁付近で中国船が「危険な行動と不法な妨害」を行ったとして深刻な懸念を表明していました。スカーボロー礁は中国が実効支配しているものの、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置しており、法的・政治的な対立が継続しています。ハーグの常設仲裁裁判所は2016年にフィリピンの主張を支持する判決を下しましたが、中国はこの判決を認めていません。この海域では、領有権主張と国際海洋法の適用を巡る継続的な緊張が続いています。

国際海洋法秩序の動向:BBNJ協定の発効と今後の課題

2026年1月17日、国連公海等生物多様性(BBNJ)協定が発効しました。この協定は、国内管轄権外の海域(公海および国際海底域)における海洋生物の保護と持続可能な利用を図ることを目的としています。日本は2025年12月に本協定を締結し、原締約国となりました。

BBNJ協定は、「海の憲法」とも称される国連海洋法条約(UNCLOS)を補完するものであり、海洋に関する国際法の発展における重要な転換点と位置付けられています。気候変動、生物多様性の損失、汚染という「三重の地球環境危機」への対処に不可欠な貢献が期待されており、国際海洋法秩序の進化とその課題に新たな方向性をもたらすものと見られています。

Reference / エビデンス

  • Japan and other member countries agree to coordinate the release of 400 million barrels of oil st... - YouTube 2026年3月11日、国際エネルギー機関(IEA)は、中東情勢の悪化によりホルムズ海峡を通る原油・石油製品の輸出量が以前の1割未満に減少したことを受け、日本を含む加盟国が過去最大となる4億バレルの石油備蓄協調放出に合意したと発表した。IEA事務局長は、安定供給回復のためにホルムズ海峡の通航再開が最も重要であると指摘した。
  • 防衛大臣記者会見 2026年3月13日、日本の防衛大臣は記者会見で、3月11日に開催された中東情勢に関するG7オンライン首脳会議において、ホルムズ海峡を含む海上輸送路の安全確保について議論が行われたことを確認し、日本政府としてホルムズ海峡を巡る情勢に重大な関心を持って情報収集を行っていると述べた。
  • 【2026年最新】中東情勢が世界のコンテナ物流に与える影響とサプライチェーンの今後の対策 ... - YouTube 2026年2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃とその報復措置が発端となり、ホルムズ海峡は多くの船会社が自発的に通航を避ける「事実上の封鎖」状態にあり、数百隻規模の船舶が周辺で足止めされている。
  • Six countries—Japan, the UK, Germany, France, Italy, and the Netherlands—issue a joint statement ... 2026年3月19日、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、日本の6カ国は共同声明を発表し、湾岸地域の非武装商船に対するイランによる攻撃、石油・ガス施設を含む民間インフラへの攻撃、およびホルムズ海峡の事実上の封鎖を強く非難した。
  • Monday, March 23, 2026, Morning - Press conference by the Chief Cabinet Secretary 2026年3月18日から19日に開催されたIMO臨時理事会において、日本が主導しバーレーン、パナマ、メキシコ、シンガポール、UAEと共同で提出した、ペルシャ湾内に留め置かれた船舶の安全な避難を可能とする海上回路などの枠組み構築を奨励する提案文書が多数の国から支持され、IMO事務局長に対し枠組み構築のための措置を速やかに講じるよう要請する旨決定された。
  • 南シナ海情勢 2025 - 日本安全保障戦略研究所(SSRI) 2026年3月13日、中国軍は南シナ海のスカーボロー礁(中国名:黄岩島)付近を航行した米駆逐艦を監視し、「追い払った」と発表した。これに対し米軍は国際法に則った行動だったとの見解を示した。前日には、同礁付近で中国船が「危険な行動と不法な妨害」を行ったとしてフィリピンが深刻な懸念を表明していた。スカーボロー礁は中国が実効支配しているが、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にある。ハーグの常設仲裁裁判所は2016年にフィリピンの主張を支持する判決を下したが、中国は認めていない。
  • 潮目を変える国際海洋条約が発効へ(UN News 記事・日本語訳) 2026年1月17日、国連公海等生物多様性(BBNJ)協定が発効した。この協定は、国内管轄権外の海域(公海および国際海底域)における海洋生物の保護と持続可能な利用を図るもので、気候変動、生物多様性の損失、汚染という「三重の地球環境危機」への対処に不可欠な貢献を期待されている。
  • 海洋の国際法秩序と国連海洋法条約|外務省 - Ministry of Foreign Affairs of Japan 日本は2025年12月にBBNJ協定を締結し、原締約国となった。国連海洋法条約(UNCLOS)は「海の憲法」とも呼ばれ、海洋の法的秩序の根幹を成す。
  • 「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」の発効を歓迎 - WWFジャパン BBNJ協定は、公海および深海底の生物多様性を守る国際条約であり、海洋に関する国際法の発展において大きな転換点となる。