2026年5月第1週:資源・戦略備蓄・エネルギー市場予測を裏切った主要因
2026年5月第1週、資源・戦略備蓄・エネルギー市場は、従来の予測モデルを大きく裏切る展開を見せました。アラブ首長国連邦(UAE)のOPEC脱退という地政学的な大転換、中東情勢の緊迫化による原油価格の急激な乱高下、そして日本の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)における異例の価格上昇など、複数の要因が重なり、市場の安定性や予測の前提が根底から揺るがされました。
UAEのOPEC脱退が原油市場にもたらした構造的変化
2026年5月1日、アラブ首長国連邦(UAE)は石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を正式に発表し、約60年にわたる加盟国の歴史に幕を下ろしました。この決定は、OPECの市場支配力に大きな影響を与え、原油供給の不確実性を高め、価格変動の激化を招く構造的変化をもたらしています。
UAEはOPEC内でサウジアラビア、イラクに次ぐ主要産油国であり、世界の石油生産の約4%を占めています。 脱退の背景には、OPECの減産政策に対する不満や、増産による収益拡大を志向するUAEとサウジアラビアとの生産割当量をめぐる軋轢があったとされています。
UAEは2027年までに日量最大500万バレルの生産能力を制限なく活用する意向を示しており、これはOPECの需給調整機能を低下させ、原油市場のボラティリティをさらに高める可能性があります。 国際商品市場は、この構造的変化による価格変動の増大を覚悟すべきであるとの見方が強まっています。
中東情勢緊迫化による原油価格の急激な乱高下
中東情勢の緊迫化は、原油価格に予想外の急激な乱高下をもたらしました。2026年4月30日には、ブレント原油が1バレル120ドルを突破し、WTI原油も107.5ドルに急騰しました。 しかし、そのわずか半月前の4月14日には、米・イラン停戦協議再開への期待感からWTI原油が91.28ドルまで急落するなど、市場は不安定な動きを続けています。
こうした状況を受け、ゴールドマン・サックスは4月26日、中東地域の原油生産量減少を反映し、2026年第4四半期のブレント原油価格予想を1バレルあたり90ドルに、WTI原油価格予想を83ドルにそれぞれ上方修正しました。 同社のアナリストは、中東の供給逼迫により、4月の世界の原油在庫が日量1,100万から1,200万バレルという「史上稀に見る」ペースで減少していると指摘しています。
天然ガス価格の予測修正と短期的な急騰・下落
天然ガス市場もまた、予測を裏切る動きを見せました。2026年1月には、広範囲に及ぶ寒波に伴う暖房需要の増加により、ヘンリーハブ天然ガス価格が平均7.72ドル/MMBtuに急騰しました。 しかし、その後2月には3.62ドル/MMBtuまで下落し、市場の変動性の高さを示しました。
米国エネルギー情報局(EIA)は、予想よりも穏やかな2月の気象により貯蔵量が従来予想より多く残ったため、3月に2026年の価格見通しを引き下げました。 2026年5月のヘンリーハブスポット価格は2.98ドル/MMBtuと予測されており、短期的に市場の予測が大きく裏切られた状況が浮き彫りになっています。
日本のエネルギー政策におけるFIT価格の異例な上昇
日本のエネルギー政策においても、異例の事態が発生しました。2026年2月に発表された固定価格買取制度(FIT)において、10年以上続いた買取価格の引き下げ傾向が反転し、一部の再生可能エネルギー、特に太陽光発電の買取価格が前年比で上昇したのです。
具体的には、住宅用太陽光発電の余剰電力の買取価格が、最初の4年間は24円/kWhと大幅に引き上げられることが予定されています。 この予測を裏切る要因となったのは、世界的なインフレ、資材価格の高騰、そして慢性的な人手不足です。 経済産業省・資源エネルギー庁の「調達価格等算定委員会」は、物価高騰という新たな局面を反映し、一部の電源において買取価格を上昇させるという異例の決定を下しました。
金価格の急落と市場のサプライズ
安全資産とされる金も、市場のサプライズに見舞われました。2026年4月29日から30日にかけて、金価格は1オンスあたり4,700ドル、4,600ドルの節目を割り込み急落しました。 これは、ゴールドマン・サックスが2026年末までに金価格が5,400ドルに達する可能性があると予測していたこととは異なる短期的な動きです。
さらに、2026年1月には、ドナルド・トランプ米大統領が次期連邦準備制度理事会(FRB)議長にタカ派のケビン・ウォーシュ氏を指名したとの観測が広がり、金価格は「世紀的」な下落を経験し、一時5,000ドルを下回りました。 このように、金市場は地政学的な緊張や金融政策の動向に敏感に反応し、予測困難な変動を見せています。
Reference / エビデンス
- 歴史的な石油危機:アラブ首長国連邦がOPECを離脱する本当の理由 - Xpert.Digital
- 新たな展開を受けて金価格は変動し、原油価格は急騰した。 - Vietnam.vn
- ゴールドマン・サックス・グループは第4四半期の原油価格予想を上方修正しました。 - Moomoo
- 4月14日は原油価格下落 今後の見通しを原油安定供給の観点から解説 野村證券・髙島雄貴
- 中東情勢の悪化によりエネルギー価格が4年ぶりの大幅上昇へ - World Bank
- 天然ガス価格の見通し・予測 - 新電力ネット
- ヘンリーハブの天然ガス価格見通し:2026年にヘンリーハブは上昇するか、下落するか?
- 2026年度以降のFIT動向を解析、事業用太陽光発電(地上設置)はFIT対象外、一部太陽光など前年比で異例の「単価上昇」電源も、再エネ賦課金は4.18円/kWhで前年比約5%増加|新電力ネット
- 新たな展開を受けて金価格は変動し、原油価格は急騰した。 - Vietnam.vn
- 貴金属市場が“世紀的”売りに襲われる 金価格が日中で約10%急落し5000ドルを下回る
- 金価格、来年4900ドルに上昇へ 銅値固め・原油は下落=ゴールドマン - ニューズウィーク