東アジアの「過剰生産」と地政学リスクが日本の川中産業に与える影響

2026年5月2日、東アジアにおける特定の川中産業での過剰生産と、中東情勢の緊迫化に伴うサプライチェーンの混乱、そして中国の輸出管理強化が、日本の化学、鉄鋼、電子部品などの川中産業に複合的な影響を与え、その深刻さを増している。特に、中国と韓国における供給過剰は、日本の同産業の競争環境を激化させ、サプライチェーンの脆弱性を露呈させている。

化学産業:中国の供給過剰と中東情勢による「ナフサ・ショック」の深刻化

日本の化学産業は、中国の供給過剰と中東情勢の緊迫化による「ナフサ・ショック」に直面し、構造的な転換を迫られている。2026年3月の日本の高密度ポリエチレン輸入量は前年同月比で約2倍に急増し、ブタジエンやキシレンの輸入も約6年ぶりに再開された。これは、中国からの安価な化学製品の流入が加速している現状を明確に示している。

中東情勢の緊迫化も日本の化学産業に深刻な打撃を与えている。2026年2月末のホルムズ海峡封鎖は、日本のナフサ調達に大きな影響を及ぼし、価格は急騰した。ナフサ価格は、2026年5月2日時点で、過去6年間で最も高い水準に達している。

中国のエチレン生産能力は過去4年間で日本の総生産能力の約2倍に拡大しており、この過剰生産が日本の化学メーカーの収益を圧迫している。これを受け、日本の主要化学メーカーである三井化学、三菱ケミカル、住友化学、旭化成などは、2026年4月下旬までに相次いで減産措置を講じた。国内のエチレン分解装置12基中、少なくとも3基が減産に踏み切ったとみられている。

韓国の石油化学産業も同様に苦境に立たされている。韓国の主要石油化学企業9社の2025年通年営業損失は合計で約2兆ウォン(約2,200億円)に拡大した。これは、中国の供給過剰とナフサ高騰が韓国産業に与える影響の深刻さを示している。

鉄鋼産業:韓国の供給過剰と中国の品質向上、地政学リスクによる競争激化

日本の鉄鋼産業もまた、東アジアにおける供給過剰と地政学リスクによる競争激化に直面している。韓国では、2026年1月時点で現代製鉄が仁川工場の一部生産を半減する計画を発表し、東国製鋼は2025年10-12月期に赤字に転落するなど、供給過剰が深刻化している。

中国からの鉄鋼材輸入は韓国の国内市場に深く浸透しており、特に高品質な鋼板類においても中国製品の存在感が増している。これは、中国の鉄鋼メーカーが品質向上に注力していることを示唆しており、日本の鉄鋼メーカーにとっても看過できない脅威となっている。

さらに、2025年6月4日から米国が鉄鋼製品に課した50%の関税は、韓国の鉄鋼輸出に大きな打撃を与え、輸出先の多角化を迫られている。このような国際的な貿易摩擦は、日本の鉄鋼メーカーにも間接的な影響を及ぼす可能性がある。

国内市場の課題に対し、日本の鉄鋼メーカーは海外での新規投資を加速させている。日本製鉄はUSスチールとの買収交渉を進め、JFEスチールはインドのJSWスチールとの合弁事業を拡大するなど、2026年5月1日時点で米国やインドといった成長市場での足場固めを図っている。これらの投資は、グローバルな競争力を強化し、サプライチェーンの安定化を図ることを目的としている。

電子部品・半導体産業:中国の輸出管理強化と先端技術分野での競争

日本の電子部品・半導体産業は、中国の輸出管理強化と先端技術分野での国際競争激化という二重の課題に直面している。2026年2月24日、中国は日本の企業・組織40件に対し、輸出制限措置(輸出管理コントロールリスト、注視リスト)を発表した。この措置は、特定の品目や技術の輸出に個別許可を義務付けるものであり、日本の電子部品・半導体サプライチェーンに大きな不確実性をもたらしている。

個別許可の取得が困難であることや、輸出管理の運用が不透明であることから、サプライチェーンの予見性確保が極めて難しい状況にある。これにより、日本企業は部品調達や生産計画の見直しを迫られ、事業戦略の再構築が急務となっている。

一方で、先端半導体分野ではAI需要がけん引する形で市場が拡大している。2026年第1四半期におけるTSMCの純利益は前年同期比で約9%増加し、半導体市場の活況を裏付けている。

日本の半導体製造装置の市場規模は、2026年度に5.5兆円に達する見込みであり、AI関連投資がこの成長を後押しすると予測されている。 しかし、中国の輸出管理強化は、日本の半導体製造装置メーカーが中国市場で事業を展開する上でのリスクを高めており、先端技術分野における日本の立ち位置と課題が改めて浮き彫りになっている。

Reference / エビデンス