国際的な労働基準と人権規律による供給網の停止・排除事例:2026年最新動向

2026年4月29日、国際的な労働基準と人権規律がサプライチェーンに与える影響は、かつてないほどに高まっています。特に、欧州連合(EU)と米国を中心に進む法制化の動きは、特定の供給網を「物理的に停止・排除」する判断を企業に迫り、その対応は喫緊の課題となっています。本記事では、2026年4月29日時点の最新情報を基に、各法規制の概要、適用範囲、具体的な執行事例、そして日本企業が直面する課題と対応策を詳細に分析します。直近48時間以内(2026年4月27日〜29日)に報じられたニュースや動向に焦点を当て、情報の鮮度と具体性を重視します。

EUにおける企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)の進展と日本企業への影響

EU企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)は、2024年4月24日に欧州議会本会議で可決され、同年5月24日にEU理事会で最終承認されました。2026年4月29日現在、指令は発効しており、各国での国内法制化が進められています。最新の改正状況では、適用対象企業の基準が大幅に絞り込まれました。当初案の従業員数500人超かつ全世界売上高1億5,000万ユーロ超から、従業員数1,000人超かつ全世界売上高4億5,000万ユーロ超の企業へと引き上げられています。

国内法制化および適用開始時期は、企業規模に応じて段階的に設定されています。最も大規模な企業(従業員数5,000人超かつ全世界売上高15億ユーロ超)は2027年から、従業員数3,000人超かつ全世界売上高9億ユーロ超の企業は2028年から、そして従業員数1,000人超かつ全世界売上高4億5,000万ユーロ超の企業は2029年から適用される予定です。金融機関については、当初案では適用対象外とされていましたが、最終案では「上流のサプライチェーン」に限定して適用されることになりました。また、ステークホルダー・エンゲージメントの明確化も重要な変更点として挙げられます。

日本企業も、EU域内に子会社を持つ場合や、EU域内企業と取引がある場合、間接的にCSDDDの影響を受ける可能性があります。特に、EU域外企業であっても、EU域内で一定の売上高基準を満たす場合は直接適用対象となるため、自社のサプライチェーン全体における人権・環境リスクの評価と対応策の検討が急務となっています。

米国ウイグル強制労働防止法(UFLPA)による供給網の物理的停止と執行強化

米国ウイグル強制労働防止法(UFLPA)は2022年6月21日に施行されて以来、新疆ウイグル自治区で生産された製品、または強制労働に関与する企業リストに掲載された企業が生産した製品の輸入を原則禁止しています。2026年4月29日現在、米国税関・国境警備局(CBP)は、UFLPAに基づき、繊維製品、電子機器、太陽光発電関連製品などを中心に多数の輸入差し止めを行っており、2023会計年度には約4,700件、10億ドル以上の貨物が差し止められました。主な対象製品は、綿製品、トマト製品、ポリシリコンなど多岐にわたります。

特筆すべきは、リストに掲載されていない企業であっても、強制労働に関与しているとCBPが判断すれば、輸入差し止めの対象となる点です。これは、サプライチェーン全体における徹底したデューデリジェンスの必要性を示唆しています。

直近の動向として、米国通商代表部(USTR)は、2026年外国貿易障壁報告書(日本編)において、日本が強制労働産品の輸入を禁止する法律を欠いていることに懸念を表明しました。さらに、USTRは日本を含む60カ国・地域に対し、強制労働産品の輸入禁止措置に関する301条調査を開始したと報じられており、日本企業はサプライチェーン全体で強制労働リスクを特定し、排除するためのデューデリジェンスを一層強化する必要があります。

EU強制労働製品禁止規則(FLR)の採択と今後の影響

EU強制労働製品禁止規則(FLR)は、2024年3月5日に欧州議会と理事会の間で政治的合意に達し、同年4月23日に欧州議会本会議で採択されました。2026年4月29日現在、本規則は正式な発効に向けて手続きが進められています。FLRは、強制労働によって製造、加工、または輸送された製品のEU市場への流通、およびEUからの輸出を禁止するものであり、EU域内企業だけでなく、EU市場に製品を供給するすべての企業が対象となります。

本規則は、発効後36ヶ月後に適用開始となる見込みです。また、欧州委員会は、強制労働リスクの高い地域や製品に関するデータベースを2026年6月14日までに公開する予定であり、企業はこれを活用してリスク評価を行うことが期待されます。

CSDDDが企業の人権・環境デューデリジェンス義務を課すプロセスに焦点を当てるのに対し、FLRは強制労働によって製造された製品そのものの市場流通を禁止するという点で、アプローチが異なります。これにより、企業はサプライチェーンにおける強制労働リスクの特定と排除を、より直接的かつ厳格に求められることになります。

その他の国際的な人権デューデリジェンス法制化動向と日本企業の対応

国際的な人権デューデリジェンス法制化の動きは、EUや米国に留まりません。ドイツでは、2023年1月1日にサプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG)が施行され、ドイツ企業およびドイツに支店を持つ外国企業に、サプライチェーンにおける人権・環境デューデリジェンスを義務付けています。しかし、ドイツ産業界からは、過度な負担を理由に停止を求める声も上がっており、その動向が注目されます。カナダもまた、強制労働や児童労働によって製造された製品の輸入を禁止する法律を施行しており、国際的な規制の網は広がり続けています。

さらに、国際労働機関(ILO)は、2025年のILO総会で、ギグワーク(プラットフォームワーク)に関する国際基準の策定を目指しており、人権団体からは前向きな進展と評価されています。これは、新たな働き方における労働者の権利保護に向けた国際的な動きを示しています。

一方、日本では、現時点では人権デューデリジェンスを義務付ける包括的な法律は存在しません。しかし、政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定し、企業に自主的な取り組みを促しています。国際的な法制化の加速を受け、日本企業は、自社のサプライチェーンにおける人権リスク評価、デューデリジェンス体制の構築、サプライヤーとの連携強化などを積極的に進める必要があります。国際的な潮流に乗り遅れることなく、持続可能なサプライチェーンの構築に向けた具体的な行動が、今、強く求められています。

Reference / エビデンス