東アジアにおける人的移動の変化がサプライチェーンに与える影響:2026年の動向

2026年4月29日、東アジア地域では、少子高齢化、経済成長、そして地政学的要因が複雑に絡み合い、人的移動のパターンが大きく変容しています。特に、出稼ぎ労働者や技能実習生の増減は、各国における労働力供給に直接的な影響を及ぼし、結果として特定の産業のサプライチェーンに構造的な変化をもたらしています。本稿では、最新のデータに基づき、これらの変化がサプライチェーンに与える具体的な影響を多角的に分析します。

韓国における外国人労働者受け入れ枠の縮小と産業への影響

韓国政府は、2026年の雇用許可制(E-9ビザ)に基づく外国人労働者の受け入れ規模を、2025年の13万人から8万人に約40%縮小すると発表しました。この決定は、新型コロナウイルス感染症の流行直後に一時的に高まった外国人人材への需要が落ち着き、製造業などの人手不足が緩和傾向にあることが背景にあるとされています。

しかし、この一律の縮小が全ての産業に均等に影響するわけではありません。特に注目すべきは、造船業専用枠が廃止され、製造業枠に統合された点です。これにより、造船業は他の製造業との間で限られた外国人労働者枠を争うことになり、特定の専門技能を持つ人材の確保がより困難になる可能性があります。一方で、季節労働者の受け入れ枠は前年比1万3,000人増の10万9,000人となり、農業や漁業といった季節性の高い労働集約型産業の労働力確保には一定の配慮がなされています。

2026年4月29日現在、この受け入れ枠の変動は、特に中小規模の製造業において、生産計画の見直しや国内での労働力確保に向けた投資を促す動きが見られます。例えば、自動車部品製造業の一部では、外国人労働者の確保が難しくなることを見越し、自動化設備の導入を加速させる動きが報じられています。また、季節労働者の増加は、農水産物の安定供給に寄与する一方で、受け入れ地域のインフラ整備や生活支援体制の強化が喫緊の課題となっています。

日本の特定技能制度拡大とサプライチェーン強靭化

日本では、2026年に在留資格「特定技能」の対象分野が倉庫管理、廃棄物処理(資源循環)、リネン供給の3分野に拡大されました。これは、EC(電子商取引)需要の拡大、高齢化の進行、観光・医療現場における慢性的な人手不足といった喫緊の社会的背景を受け、日本のサプライチェーンを強靭化するための国策と位置付けられています。

さらに、技能実習制度から「育成就労制度」への抜本的な転換が進められており、外国人材の長期的な就労と転職機会の拡大が期待されています。これにより、外国人労働者がより安定した環境で働き、キャリアを形成できるようになることで、日本への定着を促し、労働力不足の解消に貢献することが目指されています。

2023年には外国人労働者数が205万人に達し、2018年からの5年間で1.4倍に増加している現状を踏まえると、これらの制度改正は、物流、リネンサプライ、廃棄物処理といった特定のサプライチェーンの労働力確保と効率化に大きく貢献すると見られています。 例えば、倉庫管理分野への特定技能導入は、ECサイトの物流センターにおける人手不足を緩和し、配送の迅速化に寄与することが期待されます。また、リネンサプライ分野では、病院やホテルでの安定的なサービス提供を支える上で不可欠な労働力を確保し、サプライチェーン全体の安定化に繋がるでしょう。

中国の労働力構造変化とサプライチェーンの自動化・再編

中国では、2026年に都市部の新規就業者数を1,200万人以上とする目標が掲げられる一方で、ハイテク製造業を中心に無人化・省人化が加速しています。 これは、人口減少に伴う労働力不足を克服し、強靭なサプライチェーンを構築するための国家的な取り組みであり、その象徴として産業用ロボットの生産量が著しく増加しています。2025年には前年比28%増を記録し、2026年1月から2月にかけても31.1%増と、その勢いは衰えていません。

この急速な自動化は、中国の労働力構造に大きな変化をもたらしています。特に若年層が製造業での定職を見つけにくくなり、宅配などの単発の仕事(ギグワーク)に従事する「ギグワーカー」が2億人に膨張していると報じられています。 これは、労働市場の二極化を招き、社会的な不安定要素となる可能性も指摘されています。

また、上海などの一線都市における製造業の工場労働者の月額賃金が東南アジア諸国の3~5倍に達していることから、一部の製造拠点が東南アジアへ移転する「チャイナプラスワン」の動きも加速しています。 この動きは、中国国内のサプライチェーンにおける労働集約型産業の空洞化を招く一方で、高付加価値産業への転換を促す側面も持ち合わせています。グローバルサプライチェーンにおいては、中国一極集中からの脱却と、より分散されたリスクヘッジ型のサプライチェーン構築が進む要因となっています。

東南アジアからの労働力供給とサプライチェーンの地域化

東南アジアは引き続き東アジアへの主要な労働力供給源であり、特にベトナムは2023年時点で東南アジア全体の7,500万件を超えるグローバルサプライチェーン関連雇用のうち25%以上を占めています。

しかし、東南アジア諸国自体も経済成長とデジタル化の加速により、2026年には熟練専門職の需要が急増しており、2030年までに労働者の62%がリスキリングまたはアップスキリングを必要とすると予測されています。 この変化は、単なる労働力供給地から、より高度な技術を持つ人材を育成し、高付加価値産業を誘致する地域へと変貌を遂げつつあることを示唆しています。

中国からの直接投資が10倍以上に膨張し、EV(電気自動車)、半導体、再生可能エネルギーといった高付加価値産業のサプライチェーンがASEAN(東南アジア諸国連合)に移植されている現状も、この地域化を後押ししています。 2026年4月29日現在、ASEAN-中国間の貿易量は±5%で推移し、インドのGDPは6.5%、日本からASEANへの輸出は4%で推移しており、サプライチェーンの多極化が鮮明になっています。 東南アジア域内での労働力需給の変化は、域内サプライチェーンの強化と、東アジア全体のサプライチェーンの再編を加速させ、よりレジリエントなグローバル経済の構築に寄与すると考えられます。

Reference / エビデンス