南方:アルゼンチンの政権交代とショック療法
2026年4月24日、アルゼンチンではハビエル・ミレイ政権が推進する経済ショック療法が、国内経済に大きな影響を与え続けています。その政策内容、実施状況、そして国民生活への影響は、国際社会からも注目されています。
ミレイ政権の誕生とショック療法の背景
2023年12月、アルゼンチンはハビエル・ミレイ氏を大統領に迎え、政治・経済の大きな転換点を迎えました。ミレイ氏は、長年にわたる財政赤字と高インフレに苦しむアルゼンチン経済を立て直すため、「ショック療法」と称される急進的な経済改革を公約に掲げ、大統領選挙で勝利しました。彼はリバタリアン(自由至上主義)を標榜する経済学者であり、国家による経済介入を徹底的に排除する姿勢を示しています。
政権発足直後の2023年12月には、実勢レートに合わせるためペソの公式レートを54%切り下げ、為替の大幅な調整を実施しました。 これにより、2023年12月の消費者物価上昇率(前年同月比)は211.4%に達し、2024年1月には254.2%と上昇を続けました。 ミレイ政権は、インフレの根本原因は財政赤字にあるとし、省庁の数を18から8に削減し、公務員を約11%削減するなど、徹底した財政収支の改善に取り組みました。 また、優先順位の低い公共事業の停止や各州への裁量的移転の縮小も行われ、就任翌月には月間の財政収支が黒字に転じました。
主要な経済政策と実施状況
ミレイ政権は、財政支出削減、通貨切り下げ、規制緩和を柱とする具体的な経済政策を推進しています。財政面では、2026年3月に9302億8400万ペソ(約6億8757万ドル)の基礎的財政黒字を計上し、第1四半期で対GDP比約0.5%の基礎的黒字を達成しました。 これは、2026年2月に記録した1兆4100億ペソ(約10億1000万ドル)の財政黒字に続くもので、2カ月連続の黒字となります。 2024年の通算では、歳出が前年比で実質27%減、歳入は5%減となり、2008年以来の財政黒字を達成しています。
規制緩和においては、2023年12月20日に366条からなる大型の必要緊急大統領令を発表し、不動産取引、観光、衛星インターネットサービスなどの規制緩和、国営企業の民営化に向けた株式会社化、オープンスカイ政策の導入などを定めました。 続く12月27日には、664条からなる「アルゼンチン人の自由のための基盤及び出発点に関する法律」(通称:オムニバス法または基盤法)を議会に提出し、2024年7月8日に公布されました。 この法律により、行政、経済、財政、エネルギーの各分野における非常事態が宣言され、行政府に1年間の立法権が付与されました。 これにより、行政府は65以上の政令を公布し、鉱業投資法の改正による行政手続きの簡素化、電力市場の自由化、多数の政府関係機関の官庁への編入などを実行しました。
経済指標への影響と国民の反応
ショック療法はアルゼンチンの主要な経済指標に大きな影響を与えています。インフレ率は、2023年12月の前年同月比211.4%から、2025年12月には31.5%と8年ぶりの低水準を記録しました。 2026年1月の物価上昇率は前月比2.9%(前年同月比32.4%)、2月は前月比2.9%(前年同月比33.1%)、そして2026年3月の消費者物価指数は前月比3.40%上昇し、前年同月比では32.60%に減少しました。 コアインフレ率は2026年3月に前年同月比33.60%上昇しています。
一方で、ショック療法は国民生活に大きな打撃を与え、貧困率は一時50%を超えましたが、2025年上半期には31.6%にまで改善しました。 ミレイ大統領の支持率は、厳しい財政緊縮策にもかかわらず、約48%を維持していると報じられています。
今後の展望と課題
ミレイ政権のショック療法は、アルゼンチン経済に一定の安定をもたらしつつありますが、今後の展望には依然として課題が残ります。2026年には約190億ドルの対外債務返済が控えており、財政の持続可能性が問われます。 また、2025年10月の中間選挙では、与党連合が予想外の惨敗を喫し、政権基盤の不安定化と経済混迷のリスクが高まっています。 議会内で少数派である与党は、改革を前進させるために議会との協議が不可欠であり、政治的な調整能力が試されることになります。
専門家は、ミレイ政権の経済改革は着実に進展しているものの、国民の半数以上が貧困化するなど、社会的な影響は深刻であると指摘しています。 今後は、早期に経済回復が国民生活に恩恵をもたらす形に持っていくことが必要であり、時間との勝負となるでしょう。 国際社会からの評価は改善傾向にありますが、政策の持続可能性と社会的な安定が、アルゼンチン経済の真の再生に向けた鍵となります。
Reference / エビデンス
- リバタリアニズムは現代世界の病理に対する治療法!~「チェーンソー革命」:ハビエル・ミレイによる、アルゼンチン集産主義へのロスバード主義的攻勢 - note
- ミレイ大統領が就任、ショック療法による財政改革に理解求める(アルゼンチン) | ビジネス短信
- アルゼンチン・ミレイ政権が1年、経済改革はどれだけ進んでいるか ~着実な改革進展で「最悪期」を過ぎるも、「ショック療法」で国民の半数以上が貧困化、時間との勝負に~ | 西濵 徹 - 第一生命経済研究所
- アルゼンチン、ミレイ政権も「また」となるのか | 住友商事グローバルリサーチ(SCGR)
- アルゼンチンが3月に6億8800万ドルの財政黒字を計上 - Investing.com
- アルゼンチン政府は3月に再び財政黒字を達成。第1四半期の実質黒字はプライマリーバランスでGDPの0.5%、 | KuCoin
- アルゼンチンが2月に10億1000万ドルの財政黒字を計上 - Investing.com
- アルゼンチン、2月も財政黒字続く ミレイ氏の財政再建策で - ニューズウィーク
- リバタリアニズムは現代世界の病理に対する治療法!~「チェーンソー革命」:ハビエル・ミレイによる、アルゼンチン集産主義へのロスバード主義的攻勢 - note
- インフレが8年ぶりの低水準―アルゼンチン ミレイ大統領のショック療法が効果 - 世界日報
- アルゼンチン・ミレイ政権が1年、経済改革はどれだけ進んでいるか ~着実な改革進展で「最悪期」を過ぎるも、「ショック療法」で国民の半数以上が貧困化、時間との勝負に~ | 西濵 徹 - 第一生命経済研究所
- ミレイ新政権のアルゼンチン再生課題とその取り組み | 特集 - ビジネス短信 - ジェトロ
- アルゼンチン=昨年のインフレ率31・5%=8年ぶりの低水準で年末迎える - ブラジル日報
- アルゼンチンインフレ率MoM - 経済指標 | JA | TRADINGECONOMICS.COM
- アルゼンチンインフレ率 - 経済指標 | JA | TRADINGECONOMICS.COM
- 1月の物価上昇率は前月比2.9%、加速が続く可能性も(アルゼンチン) - ジェトロ
- インフレが8年ぶりの低水準―アルゼンチン ミレイ大統領のショック療法が効果 - 世界日報
- リバタリアニズムは現代世界の病理に対する治療法!~「チェーンソー革命」:ハビエル・ミレイによる、アルゼンチン集産主義へのロスバード主義的攻勢 - note
- アルゼンチン・ミレイ政権が1年、経済改革はどれだけ進んでいるか ~着実な改革進展で「最悪期」を過ぎるも、「ショック療法」で国民の半数以上が貧困化、時間との勝負に~ | 西濵 徹 - 第一生命経済研究所
- アルゼンチン人の皆さん、今のアルゼンチンでミレイに対する印象はどうですか? : r/asklatinamerica - Reddit
- トランプの経済的支援に対するアルゼンチンの国民の感情はどうなっていますか?ミレイへの支援についてどう思いますか? : r/asklatinamerica - Reddit
- アルゼンチン・ミレイ政権が1年、経済改革はどれだけ進んでいるか ~着実な改革進展で「最悪期」を過ぎるも、「ショック療法」で国民の半数以上が貧困化、時間との勝負に~ | 西濵 徹 - 第一生命経済研究所
- アルゼンチン・ミレイ改革による景気回復一服、中間選挙の行方は? ~米国は支援表明も
- インフレが8年ぶりの低水準―アルゼンチン ミレイ大統領のショック療法が効果 - 世界日報
- Argentina midterm elections seen as confidence vote for Milei's economic reforms • FRANCE 24 - YouTube
- アルゼンチン、ミレイ政権下で進む経済安定化 ―過去1年間の振り返りと今後の見通し - PwC