核融合商用化に向けた国際的な投資競争の現状と展望

次世代のクリーンエネルギーとして期待される核融合エネルギーは、その商用化に向けた国際的な投資競争が激化の一途を辿っている。特に2025年から2026年にかけては、産業化の決定的な転換点と認識されており、各国政府や民間企業による大規模な資金投入と技術開発が加速している。

世界の核融合投資動向と主要プレイヤー

2026年4月23日現在、核融合スタートアップへのグローバルな投資は目覚ましい勢いを見せている。2025年には新規で26億ドル(約4,000億円)の資金が投入され、累計投資額は71億ドル(約1兆1,000億円)に達した。また、2026年の世界市場は1億2,000万ドル(約180億円)規模に達すると予測されており、2031年には10億ドル(約1,500億円)規模へと急成長する見込みだ。

各国政府もこの競争に積極的に参画している。米国エネルギー省傘下のARPA-Eは、2026年4月11日に核融合研究開発プログラムに対し、新たに1億3,500万ドル(約200億円)の投資を決定した。英国では、First Light Fusionが2026年4月22日に2,500万ポンド(約54億円)の資金調達ラウンドを完了したと発表。さらに英国政府は、今後5年間で25億ポンド以上(約5,275億円)を核融合研究と商業化に投じる計画を掲げている。

主要国における政府支援と競争戦略は多岐にわたる。米国は民間主導のイノベーションを重視し、欧州はITER計画を軸としつつも、各国が独自の取り組みを強化。日本は後述の通り、官民連携による早期社会実装を目指している。中国も国家戦略として大規模な投資を行っており、技術的優位性の確立を狙う。直近12ヶ月で核融合スタートアップが調達した資金は約16億ドル(約2,400億円)に上り、TAE TechnologiesやGeneral Fusionといった大手スタートアップは上場計画を進めているものの、業界内では上場時期について慎重論も聞かれる。

商用化への課題と技術的進展

核融合の商用化には、「科学的損益分岐点」(投入エネルギーを上回るエネルギー出力の達成)への到達と、安全規制の確立という二つの大きな課題が立ちはだかる。しかし、これらの課題に対し、世界中で目覚ましい技術的進展が見られている。

日本では、Helical Fusionが2026年4月20日に核融合科学研究所との連携を更新し、2030年代の実用発電を目指す最終実証装置「Helix HARUKA」の製造・建設を推進している。同社は2025年10月には高温超伝導マグネットの開発にめどをつけ、製作・建設に着手したと発表しており、実用化に向けた具体的なロードマップを着実に実行している。

英国のUKAEAは2026年4月14日、2026年から2030年までの核融合ロードマップを発表し、STEP Fusionプロトタイプ発電所の詳細設計完了を支援する目標を掲げた。ドイツのWendelstein 7-X炉はプラズマ制御で歴史的なマイルストーンに達し、Helion社は1億5,000万度セルシウスという高温プラズマの生成に成功。英国の「人工太陽」プロジェクトも1億度に達するなど、世界各地で技術的ブレークスルーが相次いでいる。

国際協力と地政学的競争

国際熱核融合実験炉(ITER)計画は、当初の予定から遅れが生じており、ファーストプラズマの達成は2033年以降に延期される見通しだ。総事業費も250億ユーロ(約4.6兆円)近くに達すると予測されており、2026年4月時点でも建設サイトでは主要コンポーネントの据え付け作業が進行中である。

ITER計画の遅延と巨額な費用を背景に、各国は独自路線に転じ、民間主導の産業競争へと様相が変化している。日本政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定し、2030年代の発電実証を目指す目標を掲げた。経済産業省は200億円(3年間で合計600億円)の予算を計上し、官民合わせた投資で「兆円規模」を想定している。

日本の核融合スタートアップも国際競争に積極的に挑んでいる。京都フュージョニアリングは核融合炉の「周辺技術」に強みを持ち、世界市場での存在感を高めている。Helical Fusionはヘリカル型に特化し、レーザー核融合のEX-Fusionなど、多様なアプローチで技術開発を進め、世界の核融合商用化競争において重要な役割を担いつつある。

Reference / エビデンス