欧州:欧州水素銀行による価格支援と普及の理

欧州連合(EU)は、気候変動対策とエネルギー安全保障の強化を目指し、グリーン水素の市場形成と普及を加速させるための重要な戦略として欧州水素銀行(EHB)を設立しました。高コストなグリーン水素の市場導入を促進し、EUの野心的な脱炭素目標達成に貢献するEHBの役割は、欧州のエネルギー転換において極めて重要です。本稿では、EHBの設立背景からこれまでの競争入札(オークション)の進捗、そして今後の普及戦略に至るまで、具体的な数値と最新の動向を交えながら、欧州の水素戦略全体像を客観的かつ詳細に分析します。

欧州水素銀行の設立背景と目的

欧州水素銀行(EHB)は、2022年に欧州委員会によって設立構想が発表され、2023年3月にはその具体的な活動内容が公表されました。この銀行の主要な目的は、欧州における再生可能水素の生産を支援し、高コストなグリーン水素の市場導入を促進することにあります。EUは、2030年までに域内で年間1,000万トンの再生可能水素を生産し、さらに1,000万トンを輸入するという野心的な目標を掲げており、EHBはこの目標達成に向けた中核的な金融メカニズムとして位置づけられています。EHBは、再生可能水素の生産コストと化石燃料由来の水素の価格差を埋めることで、市場の初期段階における投資リスクを低減し、大規模なプロジェクトの実現を後押ししています。

価格支援メカニズム:競争入札(オークション)の進捗

EHBの価格支援メカニズムは、主に競争入札(オークション)を通じて実施されています。第1回オークションは2023年11月に開始され、最終的に7件のプロジェクトに対して総額7億2,000万ユーロが割り当てられました。これらのプロジェクトは、合計で年間150万トン以上の再生可能水素を生産する能力を持つとされています。

続く第2回オークションでは、当初10億ユーロの予算が設定されていましたが、2026年1月20日時点では、6件のプロジェクトに2億7,000万ユーロが割り当てられる結果となりました。このオークションには61件の応募があり、総額6億ユーロを超える資金要求がありました。

そして、2025年末に開始された第3回オークションは、13億ユーロという過去最大の予算が組まれました。2026年4月20日時点での情報によると、このオークションには58件の応募があり、合計で84億ユーロもの資金要求があったことが明らかになっています。これは、欧州におけるグリーン水素プロジェクトへの強い関心と、依然として高い資金需要を示しています。また、スペインは「Auctions-as-a-Service」スキームを通じて、2026年4月21日時点で追加資金を拠出しており、EHBの取り組みを補完する形で各国が独自の支援策を講じている状況がうかがえます。

普及に向けた課題と戦略

欧州における水素エコシステムの構築には、価格支援だけでなく、法整備やインフラ整備も不可欠です。EUは2024年5月に水素・脱炭素ガス市場パッケージを採択しており、各国は2026年半ばまでにこれを国内法に転置する必要があります。このパッケージは、水素市場の透明性と競争力を高め、投資を促進するための規制枠組みを提供します。

インフラ面では、「European Hydrogen Backbone (EHB)」計画が進行しており、2040年までに約5万8,000kmに及ぶ水素パイプライン網の整備を目指しています。この広範なパイプライン網は、生産地と消費地を結び、欧州全域での水素供給を可能にするための基盤となります。

Reference / エビデンス