欧州:EU半導体法の投資規模と20%シェア目標の現状(2026年04月23日時点)

2026年4月23日、欧州連合(EU)が半導体産業の競争力強化を目指して推進する「EU半導体法」の進捗状況が注目されている。当初掲げた投資目標を大きく上回る資金が動員されつつある一方で、2030年までに世界市場シェア20%を達成するという野心的な目標には、依然として多くの課題が横たわっている。

EU半導体法の投資動員と実績

EU半導体法は、域内での半導体生産能力を強化するため、官民合わせて430億ユーロの投資動員を当初目標としていた。しかし、2026年4月8日時点では、この目標を大きく上回る約1,000億ユーロの投資が動員されていることが明らかになった。これは、EUが半導体産業の戦略的自律性を確保しようとする強い意志の表れと言える。

2030年までの総投資額は、さらに拡大し、1,000億ユーロから1,500億ユーロに達する見込みである。具体的なプロジェクト投資事例としては、イタリアにおける大規模な取り組みが挙げられる。STMicroelectronicsとGlobalFoundriesは共同で、約7億4,000万ユーロを投じてSiC(炭化ケイ素)ウェーハ製造施設の建設を進めている。また、Silicon Boxは、イタリアに約32億ユーロを投じて先進パッケージング施設を建設する計画を発表しており、これは欧州における半導体サプライチェーンの多様化に貢献すると期待されている。これらの投資は、欧州が半導体製造の主要拠点としての地位を確立しようとする具体的な動きを示している。

20%市場シェア目標の現状と課題

EU半導体法が掲げる最も野心的な目標の一つは、2030年までに世界の半導体市場シェアを現在の約10%から20%に倍増させることである。しかし、2026年4月8日時点でのEUの半導体市場シェアは、依然として約10%にとどまっており、目標達成には大きな隔たりがあるのが現状だ。

欧州会計検査院(ECA)は、この目標達成見込みの低さを指摘しており、その主な理由として、域内の生産能力の不足や、米国やアジア諸国と比較して投資規模が小さいことを挙げている。例えば、米国が半導体産業に投じる資金は、EUのそれを大きく上回るとされている。ECAは、EUが2026年までに次なる半導体戦略を策定すべきだと提言しており、現状のままでは目標達成が困難であるとの認識を示している。

欧州半導体エコシステム強化に向けた取り組みと今後の展望

EUは、半導体エコシステム全体への支出を強化しており、単なる製造能力の強化に留まらず、パイロット生産ライン、チップ設計、コンピテンスセンターといった支援エコシステムの構築にも積極的に投資している。これは、半導体産業の持続的な成長には、研究開発から製造、人材育成までを網羅する包括的なアプローチが必要であるとの認識に基づいている。

2026年3月には、「晶片法案2.0」が議論され、1,000億ユーロから1,500億ユーロの資金が注入される見込みであることが報じられた。この資金は、ESMCの月間4万枚のウェーハ生産能力の確立や、High-NA EUV装置の導入支援など、最先端技術への投資に重点的に配分される予定である。ドイツ、イタリア、フランスといった主要国では、IntelやTSMCなどの大手半導体メーカーによる製造拠点構築の進捗が見られるものの、熟練した人材の不足は依然として大きな課題として認識されている。EUは、これらの課題を克服し、2030年目標の達成に向けて、今後も戦略的な投資と政策策定を継続していく方針である。

Reference / エビデンス